夏の星座   




こと座(琴座)
学名:Lyra
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M57(ドーナツ状の惑星状星雲)/ベガ(アルファ星)/ダブル・ダブルスター(肉眼では単一の星だが双眼鏡で見ると二重星、望遠鏡で見るとそのそれぞれが2重星に見える)
  • 神話の主な登場人物:オルフェウス/エウリデュケ/アポロン/織り姫/牽牛/天帝
  • 日本で観測できる時期:4月〜11月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:夏 (20時正中は8月下旬)

      青白く輝く一等星ベガが目印の美しい星座です。ベガを中心にした三角形と、それに連なる平行四辺形からなり、明るいうえとても分かりやすい形をしています。ベガは中国や日本においては「織姫星」と呼ばれ、天の川の反対側にあるわし座の「彦星」アルタイルとともに七夕伝説の主役をになっています。

    見つけ方のポイント
     夏の天の川に横たわる白鳥座の十字形を見つけたら、鳥の尾にあたる1等星デネブから右翼の方へ視線を伸ばしてみましょう。青白い1等星ベガを簡単に見つけることができるはずです。ベガを三角形の頂点にし、平行四辺形をくっつけた小さな星座がこと座です。 また、白鳥座をはさんだ天の川の向こう側に赤い1等星アルタイル(わし座)が見えます。このアルタイルとベガ、デネブが作る2等辺3角形は「夏の大三角」と呼ばれています。

    神話の内容について
     ギリシャ神話によると、この竪琴は音楽の神アポロンが名手オルフェウスに贈ったものだと言われています。不慮の死で妻エウリディケを失ったオルフェウスは、冥界へ妻を取り戻しに行きますが、あと一歩のところで失敗し、嘆きのあまり死んでしまいました。哀れに思ったアポロンは、竪琴を天上に上げて星座にしました。
     中国古来の神話では、こと座の一等星ベガは天上の織り姫、わし座の一等星アルタイルは人間の牽牛で、道ならぬ恋に落ちたことから天帝の怒りに触れ、天の川で分かたれてしまいました。会えるのは7月7日の年に1度だけで、その日だけは天の川にかささぎの橋(白鳥座)がかかると言われています。

























てんびん座(天秤座)
学名Libra
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:ズベン・エル・ゲヌビ(キファ・アウストラリス、アルファ星)/ズベン・エス・カマリ(キファ・ボレアリス、ベータ星)/ズベネルハクラビ(シグマ星)
  • 神話の主な登場人物:アストレイア
  • 日本で観測できる時期:12月〜8月の約9カ月間
  • 見ごろの季節:夏

      てんびん座はさそり座の西にある3等星以下の星座で、黄道12宮の中で唯一生き物の姿ではなく道具を表しています。黄道12宮の多くは、その起源をバビロニアの古代文明に求めることができますが、てんびん座だけはエジプトからの輸入です。ギリシャ時代まではさそり座の一部でしたが、ローマ時代に分離しててんびんをもった皇帝ジュリアス・シーザーの姿となり、後にシーザーの姿が除かれててんびんだけの星座になりました。

    見つけ方のポイント
     てんびん座は、初夏の夕方、南の空に来る星座で、乙女座の1等星スピカとさそり座の1等星アンタレスのほぼ中間にあります。さそり座の西に、3つの3等星が「く」の字形に並んでいるのが特徴です。3つのうち、いちばん北に位置するベータ星は、明るい単独の星としてはめずらしく、緑色あるいはエメラルド色に見えます。

    神話の内容について
     てんびん座のてんびん秤は、正義の女神アストレイアの持ち物だそうです。彼女は死者の魂をこのてんびんではかりました。その結果によって、善き者は天国へ、悪しき者は地獄へと送られるのです。人間が大地から生まれた黄金時代にあっては、神々と人間はいっしょに平和に暮らしていて、アストレイアのてんびんは正義に傾きっぱなしでした。しかし銀の時代になると、人間は強い者が弱い者をしいたげるようになりました。そのため神々は人間に愛想を尽かし次々とオリンポスへ去っていきましたが、アストレイアだけは人間を見捨てず、人々に正義を説き続きました。ところが彼女の努力もむなしく人間は堕落していくばかりでした。肉親同士でさえも殺し合うほど人間が好戦的になる鉄の時代が来ると、さすがのアストレイアも人間を見放し、地上を離れ星座(おとめ座)となりました。そして空から悲しげに人間界を見守るようになったのだそうです。

























さそり座(蠍座)
学名Scorpius
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M4(NGC6121)/M6(NGC6405)/M7(NGC6475)/M80(NGC6093)/NGC6124/アンタレス(アルファ星)/グラフィアス(ベータ星)/ジュバ(デルタ星)/エプシロン星/エータ星/シータ星/イオタ1星/カッパ星/シャウラ(ラムダ星)/ミュー1星/ミュー2星/パイ星/アル・ニヤト(シグマ星)/レサート(ユプシロン星)/ジャバト・アラクラブ(オメガ星)
  • 神話の主な登場人物:パエトン/アポロン/オリオン/ヘラ
  • 日本で観測できる時期:2月〜9月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:夏

      さそり座は、もっとも古くから存在する星座です。七夕の頃、日が暮れると天の川が流れ落ちる南の地平線付近に大きなS字形を描いています。元来はハサミをもったさそりをあらわした星座でしたが、そのハサミにあたる部分がてんびん座として独立してしまったため、現在の形になりました。火星に似てまっ赤に輝く1等星アンタレスは、中国では「大火」、日本では「酒酔い星」などと呼ばれ注目されてきた親しみ深い星です。

    見つけ方のポイント
     夏の間、南の宵の空を見ると、天の川の西、南の地平線付近に大きなS字形に並ぶ一群の星が見えます。これがさそり座です。この大きなS字形とさそりの心臓にあたる1等星アンタレスが極めて印象的ですので、だれでも簡単に見つけることができます。アンタレスが語源的に「火星に対抗するもの」を意味するだけあって、まっ赤に輝くアンタレスは地球からの距離が遠いときの火星の色や明るさに実によく似ています。

    神話の内容について
     さそり座のさそりは、ギリシャ神話のふたつの物語で重要な役を担っています。そのひとつが「オリオンの刺客」の役です。オリオンは海の神ポセイドンの息子で、腕のいい猟師でした。あるときオリオンは酔っ払って「熊だって、ライオンだって、この世に俺様にかなうものはない」と自慢しました。それを聞いた大地の神は「何という思い上がりだ」と怒り、さそりにオリオン暗殺を命じました。それに成功したさそりは、ほうびで星座となったそうです。さそり座が空から姿を消さないと、オリオン座が昇ってこないのは、この話が原因と言われています。もうひとつは、パエトンの物語に登場します。太陽神アポロンの息子パエトンが日の馬車を走らせていると、その途中で馬が暴れ出し天地を焼き焦がす騒ぎになりました。アポロンはやむなく雷を送って馬車をうったので、パエトンは川に落ちて死んでしまいました。このとき、馬が暴れた原因のひとつになったのが、黄道付近にたむろするさそりの脅しでした。

























いて座(射手座)
学名Sagittarius
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M8(NGC6523、干潟星雲)/M17(NGC6618、オメガ星雲)/M18(NGC6613)/M20(NGC6514、三裂星雲)/M22(NGC6656)/M23(NGC6494)/M24(NGC6603)/M25(I.4725)/M55(NGC6809)/ルクバト(アルファ星)/アルカブ(ベータ星)/アル・ナスル(ガンマ星)/カウス・メディア(デルタ星)/カウス・アウストラリス(エプシロン星)/アスケラ(ゼータ星)/カウス・ボレアリス(ラムダ星)/ヌンキ(シグマ星)
  • 神話の主な登場人物:ケイローン/ヘラクレス
  • 日本で観測できる時期:3月〜10月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:夏

      いて座は、バビロニア時代から存在する古い星座ですが、当時は現在のようなギリシャ神話でおなじみの馬人の姿ではなく、弓を持った普通の人間の星座でした。晩夏から初秋の宵に南中し、天の川のいちばん明るく幅広くなっているところに見ることができます。12月から1月中旬にかけて、太陽はこの星座に滞在し、冬至点も西端にあります。いて座付近には、夏の夜空を代表する散光星雲、干潟星雲(M8)や三裂星雲(M20)があります。

    見つけ方のポイント
     射手座は、さそり座の東方、天の川の最も濃い部分に位置しますが、星を結んで馬人の射手を描きだすのはむずかしく、6つの星が北斗七星とよく似たひしゃくの形に並んだ、南斗六星を探すと簡単に見つかります。南斗六星は、馬人の胸から肩、そして弓の弦の上部にあたります。古くから中国では、北斗は死を、南斗は生をつかさどるとされ、西洋でもこの南斗六星は、ミルク・ディパー(ミルクさじ)と呼ばれ親しまれています。

    神話の内容について
     弓を引き絞っているのは、ケイローンという名前のケンタウロス族のひとりです。ケンタウロス族は、上半身が人間で下半身が馬という怪人で、粗野で好色な種族として知られていました。けれどもケイローンだけは心やさしく賢かったので、アポロン、アルテミスの両神に愛され、音楽、医学、予言、狩りなどの力を授けられました。ケイローンは、ペーリオンの洞穴に住んで、怪力ヘラクレスに戦いの技を教え、アポロンの息子アスクレーピオスを名医に育てるなど、多くの若い英雄たちの力になりました。しかしその後、他種族に追われケンタウロス一族とともにマレア半島に移り住んだとき、その地でヘラクレスの過ちのために命を落としてしまいました。ケイローンの死を惜しんだ大神ゼウスは、彼の姿を星座にしてやりました。このケイローンの星座がいて座です。

























へびつかい座(蛇使い座)
学名:Ophiuchus
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M9(NGC6333)=球状星団/M10(NGC6254)=球状星団/M12(NGC6218)=球状星団/ラス・アルハグェ(アルファ星)/ケバルライ(ベータ星)/イェド・プリオル(デルタ星)/バーナード星
  • 神話の主な登場人物:サンガリウス/アスクレピウス/ゲーテ
  • 日本で観測できる時期:-
  • 見ごろの季節:夏(8月上旬の午後8時に南中)

      大きな5角形の星座で、黄道の近くに位置し、蛇を退治する巨人の姿になぞらえられます。星座の一部は、へび座として分かれています。日本では昔、穀物を選り分ける「箕(み)」と見られました。頭部付近にあるバーナード星は、5.9光年と地球に2番目に近い星座で、固有運動の非常に大きい星として知られます。

    見つけ方のポイント
     ヘラクレス座の南、さそり座の北に位置し、2〜4等星で構成される巨大な5角形が目印です。

    神話の内容について
     神話には諸説あり、蛇を退治した巨人サンガリウスであるという説や、蛇の毒の治療に優れた神医アスクレピウスとも、トリプトレムスの竜退治をした王ゲーテであるともいわれます。

























はくちょう座(白鳥座)
学名:Cygnus
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M39(NGC7092)=散開星団/NGC7000北アメリカ星雲=散光星雲/デネブ(アルファ星)/アルビレオ(ベータ星)/サドル(デルタ星)/ギエナー(エプシロン星)/X-1(X線星)
  • 神話の主な登場人物:レダ/ゼウス/ヘラ/ポルックス/ヘレン
  • 日本で観測できる時期:-
  • 見ごろの季節:夏(9月下旬の午後8時頃正中)

      夏の天の川に横たわる大きな十字型の星座です。尾の部分にある主星デネブは、アルタイル、ベガとともに「夏の大三角」と呼ばれます。変光星、重星、新星が多いことも特徴で、新星の残骸と思われる網状星雲が多くあります。1962年に発見されたX-1(X線星)は、ブラックホールの証拠とも言われています。

    見つけ方のポイント
     こと座から、東の方角に目を移すと、天の川上に大きな十字が見つけられます。

    神話の内容について
     ゼウスは、妻ヘラの目を盗んでスパルタ王妃レダのもとに通い逢瀬を重ねました。その時ゼウスが変身した白鳥の姿だといわれます。レダはやがて、2つの卵を産み落としますが、一方はふたご座のポルックス、もう一方はトロヤ戦争のきっかけを作ったヘレンとなりました。

























ヘルクレス座

学名:Hercules
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M13(NGC6205)/ラス・アルゲディ(アルファ星)
  • 神話の主な登場人物:ゼウス/アトラス/ヘルクレス
  • 日本で観測できる時期:4月〜12月の約9カ月間
  • 見ごろの季節:秋(20時正中は8月上旬)

      ギリシャ神話随一の英雄、ヘルクレスをかたどる星座で、台形を2つ重ねて胴に見立てさらに三角形を乗せて頭とし、それに手足を付けたような形をしています。3、4等星が多いため、見つけにくい星座ですが、意外にも全天で5番目の大きさがあります。望遠鏡で見るときには、ヘルクレスの左の腰あたりにある球状星団M13に注目しましょう。北半球で最も明るく華やかな球状星団であるため、望遠鏡観測の入門には最適です。

    見つけ方のポイント
     3等星と4等星が主体ですので見つけにくいかもしれませんが、うしかい座やかんむり座と、こと座に挟まれた真ん中あたりに、ヘルクレス座が見つかります。4〜7月の夜中には天頂付近に人形をした姿を見ることができます。アルファ星のラス・アルゲティは頭のてっぺんにある3等星で、北半球で最も明るい球状星団M13は、ヘルクレスの腰のあたりにあります。

    神話の内容について
     ギリシャ神話によれば、ヘルクレスは大神ゼウスを父にもつギリシャ1の英雄で、ネメアの森の人食いライオン(しし座)を3日3晩かかって絞め殺した他、アミモーネの沼に住む9つの頭を持つ大蛇(うみへび座)を倒すなど、12の冒険を成し遂げ、死後星座の列に加えられました。ヘルクレスによって倒された怪物には、他にもアミモーネの大蛇を助けようとしてヘルクレスに踏み潰された化け蟹(かに座)や、兄アトラスの代わりに黄金のりんごの番をしていたときに襲ってきた100の目を持つ竜(りゅう座)などがあり、その数多くが星座となって夜空を飾っています

























わし座(鷲座)

学名:Aquilla
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:アルタイル(アルファ星)
  • 神話の主な登場人物:パーン/テュフォン/ゼウス
  • 日本で観測できる時期:3月中旬〜10月下旬の約8カ月間
  • 見ごろの季節:秋 (20時正中は9月中旬)

      古代バビロニア時代から知られていた星座で、赤い1等星アルタイルを真ん中に明るい星が3つ並んだ形がよく目立ちます。実際はエイのような形の大きな星座です。アルタイルとは、アラビア語で「飛ぶ鷲(ハゲタカ)」ともいい、太古から鷲になぞらえたさまざまな伝説を持ちます。中国の伝説では、七夕の「彦星」がこのアルタイルです。

    見つけ方のポイント
     白鳥座のデネブとこと座のベガを結び、その線の中心からほぼ垂直に、東へ向かって目線を移していくと、赤い1等星アルタイルが見つかります。これらの3つの1等星は「夏の大三角」と呼ばれ有名です。わし座全体はもっと大きく、ひし形に尾を付けたような形をしています。アルタイルはちょうど鷲の目にあたります。

    神話の内容について
     ギリシャ神話によると、わし座はゼウスが敵を倒す雷の矢を運ぶ使者だといわれています。また、ゼウスの化身としてトロイの美少年ガニメデをさらってオリンポスへ連れてくるなど、いくつかの逸話も残しています。
     中国の神話では、アルタイルは「牽牛(彦星)」と呼ばれ牛飼いでしたが、天上の織り姫(こと座の1等星ベガ)と道ならぬ恋に落ちたことから天帝の怒りに触れ、天の川で分かたれてしまいました。会えるのは7月7日の年に1度だけで、その日は天の川にかささぎの橋(白鳥座)がかかると言われています。

























たて座(楯座)

学名:Scutu
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M11(散開星団)/M26(散開星団)
  • 神話の主な登場人物:−
  • 日本で観測できる時期:6月〜11月の約6カ月間
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は8月下旬)

      いて座の北側にある小さな星座で、17世紀の学者ヘヴェリウスによって命名されました。5つの星が、十字架をあしらった楯の形をとるとされますが、星座自体は暗くて形を見つけることは難しいでしょう。ただ、たて座付近は、天の川が明るく流れている場所です。いて座付近の明るく幅のある銀河より少し狭くなっているので、この近辺は「スモールスタークラウド(小さい星の雲)」と呼ばれています。

    見つけ方のポイント
     いて座から北方向へ天の川をたどっていくと、4等星と5等星で作られた、細長い十字架のような形をした星の集まりがあります。それがたて座です。暗く小さい星座なので、見つけるのは難しいでしょう。また、わし座の1等星アルタイルから、天の川に沿って南へ目を下ろして行ってもたて座にたどりつきます。

    神話の内容について
     たて座は、17世紀のポーランドの学者、ヨハンネス・ヘヴェリウスによって命名された星座で、剣から身を守る楯をかたどっています。もとは「ソビエスキーのたて座」という名前で、1683年にウィーンへ攻め込んできたトルコ軍と戦い、これを打ち破ったポーランドの英雄、ヤン3世ソビエスキーを記念したものです。現在では単に、たて座と呼ばれています。ギリシャ神話などとは関係ありません。
























いるか座(海豚座)

学名:Delphinus
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:スアロキン(アルファ星)/ロタネブ(ベータ星)/ガンマ星(2重星)
  • 神話の主な登場人物:アリオン
  • 日本で観測できる時期:7月〜12月の約6カ月間
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は9月下旬)

      紀元前1200年ごろにはすでにあった古い星座です。4つの星がトランプのダイヤ形に並び、その先にもうひとつ4等星が付いた形をしています。あまり明るくない星座ですが、小さくまとまっているので見つけやすいでしょう。本物のイルカは海の人気者ですが、古い星座図などを見ると、このイルカは背びれなどがとがった、どう猛な感じのする生き物として描かれています。

    見つけ方のポイント
     わし座のアルファ星アルタイルから、北東の方向(はくちょう座より少し左寄りの方向)に目を移すと、小さなダイヤ形をした星の集まりが見えます。そのダイヤ形から南にもう1個4等星をくっつけたのが、いるか座です。4等星ばかりで暗いものの、小さくまとまっているので見つけやすい星座です。

    神話の内容について
     ギリシャ神話では、楽人アリオンを助けたイルカの一匹だとされています。音楽の名人アリオンは、船旅の途中で船乗りたちから命を狙われます。絶体絶命のアリオンは、「最後に一回だけリュート(古い楽器)を弾かせてください」と頼みます。やがてアリオンがリュートを弾き始めると、その美しさに聞きほれて、海のイルカたちが集まってきました。アリオンはすきを見て海に身を投げますが、イルカたちが彼を助け、無事に岬まで送り届けたのでした。

























や座(矢座)

学名:Sagitta
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M71(球状星団)
  • 神話の主な登場人物:プロメテウス/ヘラクレス/エロス(キューピッド)
  • 日本で観測できる時期:6月〜12月の約7カ月間
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は9月中旬)

      わし座の隣にある小さな星座で、弓矢の矢をかたどっています。全天88星座の中で2番目に小さい上に、一番明るい星でも4等星なので、姿をはっきり確認するのは難しいかも知れません。ただし歴史は古い星座で、紀元前1200年頃にはすでに知られていました。望遠鏡を向けてみると、矢の中ほどにばらばらっとした球状星団M71を観測することができます。

    見つけ方のポイント
     わし座のすぐそばにある星座です。夏の夜、わし座のアルタイルから、はくちょう座の十字の交差する点に向かってちょっと目をずらすと、矢の形をした星の並びを見つけることができます。とても小さい星座で、暗い星ばかりなので、姿を確認するのは難しいかもしれません。 戻る
    神話の内容について
     や座は、弓矢の矢をかたどっており、紀元前1200年頃にはすでに知られていた古い星座です。や座に関する神話はいろいろあります。プロメテウスは、人間に火を与えたために神々から罰を与えられ、カウカソス山の山頂に縛り付けられます。その山にはどう猛なワシがいて、プロメテウスの肝臓をついばみにくるのでした。やがてプロメテウスは、冒険の途中に立ち寄ったヘラクレスに救われます。そのときヘラクレスがワシを射落とすために使った矢が、や座になったといわれます。また、この矢は、愛の神エロス(キューピッド)の矢だともいわれています。

























こぎつね座(小狐座)
学名:Vulpecula
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M27(NGC6853、あれい星雲=惑星状星雲)
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:6月〜12月の約7カ月間
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は9月中旬)

      はくちょう座のすぐ南にある星座で、がちょうをくわえた狐を表しているとされます。17世紀に作られた星座で、ポーランドの天文学者ヘヴェリウスによって命名されました。しかし、星座をつくる星々が暗く、分かりにくい形をしているので、見分けるのは難しいでしょう。しかし、望遠鏡で見ると、鉄あれいの形をしたきれいな惑星状星雲「あれい星雲」を見ることができます。すばらしい見物なので、一度は見てみたい星雲です。

    見つけ方のポイント
     夏の夜の天頂に輝く、はくちょう座のすぐ南にある星座です。はくちょう座のくちばしの先端にある、アルビレオ(ベータ星)のすぐ南から、はくちょうの右の翼のそばまで、3つの星が間隔をおいて並んでいるのが、こぎつね座です。暗く目立つ星もないので、見つけるのは難しいでしょう。

    神話の内容について
     がちょうをくわえた狐とされていますが、神話や伝説には関係ありません。17世紀のポーランドの学者、ヨハンネス・ヘヴェリウスによって命名されたものです。


























みなみのかんむり座(南冠座)
学名:Corona Austrina
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:―
  • 神話の主な登場人物:ケイローン/ヘラクレス/アスクレピオス
  • 日本で観測できる時期:7月〜10月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は8月下旬)

      いて座の南にある、お椀のような形をした星座です。かんむり座と似ていますが、かんむり座より星が暗いので、少々地味だといえるでしょう。星座自体は古く、ギリシャ時代からあったものです。神話では、いて座になったといわれる半人半馬のケンタウロスの一人、ケイローンの頭に輝いていた冠を表すといわれます。南の地平線低くに現われるので、南に開けた場所で見た方がよいでしょう。

    見つけ方のポイント
     夏頃に南の空を見てみましょう。いて座の南斗六星(いて座の中で星の並びがちょうど北斗七星のようになった部分)から、少し南(下)へ目を移せば、お椀のような形に4等星が並んでいるのが見えます。それがみなみのかんむり座です。

    神話の内容について
     みなみのかんむり座は、上半身が人で下半身が馬のケンタウロス族の1人、ケイローンの冠だといわれます。ケイローンは賢明で、特に医術に詳しく、へびつかい座になった名医アスクレピオスを育てて医術を教えました。ケイローンはある日、ヘラクレスが射た矢に偶然当たり、その毒に非常に苦しみます。ケイローンは不老不死のため、このままでは永遠に苦しみ続けなければなりません。そこでついに不老不死を解かれて死に、天に昇っていて座になったということです。みなみのかんむり座は、紀元前3世紀ごろの古代ギリシャの詩人、アラトスがうたった星座詩の中にもある、古い星座です。

























りゅう座(竜座)
学名:Draco
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC6543(キャッツアイ星雲=惑星状星雲)/ツバン(アルファ星)/ラスタバン(ベータ星)/エルタニン(ガンマ星)/ノドゥス・セクンドゥス(デルタ星)/ノドゥス・プリムス(ゼータ星)/ エド・アシク(イオタ星)/ギアンザル(ラムダ星)/グルミウム(クシー星)
  • 神話の主な登場人物:ヘラクレス/プロメテウス/アトラス
  • 日本で観測できる時期:1年中観測できる
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は8月下旬)

      北極星のまわりを、体をくねらせながら、ほぼ半円形に回る長い星座です。長い星座ですが、見つけるのはわりと簡単です。ギリシャ神話ではりゅう座は、黄金のりんごを守る火を吐く竜だとされてきました。1月には、この星座を中心とした流れ星の群れ「りゅう座流星群」が観測できます。また望遠鏡で見てみると、竜の首が折れ曲がるあたりに、猫の目のような形をした「キャッツアイ星雲」を見ることができます。

    見つけ方のポイント
     北斗七星のひしゃくの一番端の星と、北極星を結び、それを北斗七星の反対側まで伸ばすと、2等星を含む4つの星がひし形に集まっているのが見つかります。それがりゅう座の頭です。そこからケフェウス座の方へ伸びる星の列が竜の首、そこから折り返して北極星の周りを半円形を描くように伸びるのが竜の胴体です。また、こと座のべガから北へ目を移しても、頭の部分を見つけることができるでしょう。

    神話の内容について
     りゅう座は、古代ギリシャ神話では、世界の西の果てにあるヘスペリスの園を守っていた竜で、勇者ヘラクレスによって退治されたとされています。ヘラクレスの第11番目の冒険は、ヘスペリスの園にある黄金のリンゴを取ってくることでした。勇んで出かけたヘラクレスは、旅の途中、カウカソス山に鎖で繋がれたプロメテウスを助けます。喜んだプロメテウスは、「黄金のりんごを取るには、自分で行かず、天を担いでいる巨人アトラスに行かせろ」と助言を与えます。ヘラクレスはアトラスの元に行きますが、彼は「竜を退治すればリンゴを取ってきてやろう」と言います。そこでヘラクレスは、ヒュドラの毒を塗った矢で竜を射殺し、黄金のリンゴをアトラスに取りに行かせることに成功したのでした。このとき殺された竜が、後にヘスペリスの園を守った功績を認められ、天に昇らされてりゅう座になった、ということです。

























ぼうえんきょう座(望遠鏡座)

学名:Telescopium
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:―
  • 神話の主な登場人物:―
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えない
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は9月下旬)

      18世紀の大航海時代に名づけられた星座で、天文観測に使う望遠鏡の名をとっています。南半球の星座で、さそり座の南にありますので、日本からは石垣島や宮古島など相当南へ行かないと、全体を見ることはできません。星座は望遠鏡らしい形をしており、細長い5角形にしっぽが付いたような姿です。しかし4等星ばかりで構成されているので、見つけにくいでしょう。

    見つけ方のポイント
     さそり座の南にあり、さいだん座とみなみのかんむり座にはさまれた星座です。さそり座の南に目を移せば、縦に細長い下向きの5角形を見つけることができます。それがぼうえんきょう座です。しかし、4等星ばかりなので見つけにくいと思います。

    神話の内容について
     天体観測に使う望遠鏡を星座にしたもので、神話とは関係ありません。18世紀のフランスの天文学者ラカーユによって、1750年頃に作られました。ラカーユは、17〜18世紀に発明された機器などを星座名にしました。ぼうえんきょう座もそのひとつです。ラカーユの星座の中には、その形から星座名を想像するのが難しいものがいくつもあります。

























さいだん座(祭壇座)
学名:Ara
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC6397(球状星団)
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えない
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は8月上旬)

      古代ギリシャ時代にすでにあった星座で、いけにえを捧げる神殿の祭壇を表しています。南半球の天の川の上にあり、4角形を折り曲げたような複雑な形をしています。おまけに星と星の間がやや離れているので、形を見つけるのは難しいかもしれません。本州では、夏に地平線ぎりぎりにその一部が見えるだけですので、よく見るためには奄美大島や沖縄へ行く必要があるでしょう。

    見つけ方のポイント
     よく見るためには南半球に行く必要があります。南半球の冬(日本の夏)の南の空で、さそり座のしっぽの南、みなみのさんかく座との間に、4角形を2つに折り曲げたような複雑な形の星の並びが見つかります。それがさいだん座ですが、天の川の上にあり、付近の星が多いこともあり、星座の形を見つけるのは難しいでしょう。

    神話の内容について
     さいだん座は、いけにえを捧げる祭壇をかたどったものだといわれます。神話とは関係ありません。古い星座で、紀元前3世紀頃の、古代ギリシャの詩人アラトスの星座詩の中にも出てきます。また、ギリシャの船乗りたちには、航海中の暴風雨を予知する星としても知られていました。

























へび座(蛇座)
学名:Serpens
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M5(球状星団)/M16(散開星団)/ウヌハルカイ(アルファ星)/アリア(シータ星)
  • 神話の主な登場人物:アポロン/アスクレピオス/ケイローン/ゴルゴン/ハーデス/ゼウス
  • 日本で観測できる時期:4月〜10月の約7カ月間
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は頭部が7月中旬、尾部が8月下旬)

      へび座は、へびつかい座に挟まれているため、頭と尾の2つの部分に分かれる珍しい星座です。古代バビロニア時代には、この2つの星座はひとつでしたが、いつの間にかへび座が独立しました。夏になると、南の空高く、さそり座の上に輝いています。3等星と4等星ばかりなので、明るく見やすいとはいえませんが、割と見つけやすい星座です。

    見つけ方のポイント
     へび座はへびつかい座の左右に連なる星座ですので、まずへびつかい座を見つけるのが良いでしょう。へびつかい座は、さそり座の上(北)にある星座で、ちょうど野球のホームベースのような5角形をしています。へび座は、その5角形の右上から北に向かって、頭の部分を伸ばしています。また、5角形の左下から南へ向かって、長い尾っぽを伸ばしています。

    神話の内容について
     へび座の蛇は、へびつかい座になった名医アスクレピオスがつかんでいる蛇を表しています。昔は、蛇は健康のシンボルとされていました。 アポロンの子アスクレピオスは、幼い頃、半人半馬のケンタウロス族の1人で、医術を良く知るケイローンに預けられます。ケイローンから医術を教わったアスクレピオスは、やがて名医となり、ついには怪物ゴルゴンの血を使って死者を生き返らせるまでになりました。しかし、そのため死の国の王ハーデスの怒りをかい、ついにはゼウスの雷を受けて死んでしまいました。アスクレピオスは、死後、へびとともに天にのぼって星座になったということです。

























てーぶるさん座
学名:Mensa
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:大マゼラン雲
  • 日本で観測できる時期:日本からは見ることができません
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は12月)

      かじき座の南にある3角形をした星座で、5等星以下の星からなります。「てーぶるさん(山)」はアフリカの南端、南アフリカ共和国のケープタウン市郊外にそびえる実在の山です。フランス人の天文学者ラカーユは、当時住んでいたこの山の頂きに雲がかかるのを見て、大マゼラン星雲に近いこの星座に、名前を付けたと言われています。天の南極近くにあるので、日本からはまったく見えず、また5等星ばかりの暗い星座なので、見えたとしても見つけるのは難しいでしょう。

    見つけ方のポイント
      てーぶるさん座は、大マゼラン雲と天の南極の間にある星座ですので、大マゼラン雲を目印にすれば良いでしょう。大マゼラン雲から南の方角へ少し目を移すと、3角形をしたてーぶるさん座が見つかるはずです。ただし、5等星以下の星々の集まりですので形を見分けることは難しいでしょう。

    神話の内容について
      18世紀のフランスの天文学者、ラカーユによって創設された星座です。神話とは関係ありません。彼はアフリカの南の端、ケープタウン(南アフリカ共和国)に住んで星座の研究を続けました。テーブル山は、ケープタウンの南にある山で山頂が平たくテーブルのようなので、この名がついています。ラカーユは、テーブル山の上によく白い雲がかかるのを見て、大マゼラン雲の下にあるこの星座に山の名前を与えたといわれています。

























じょうぎ座
学名:Norma
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません。
  • 見ごろの季節:夏(20時正中は7月)

      さそり座の心臓、アンタレスのずっと南に位置する星座で、2個の4等星といくつかの5等星が、小さな三角形を作っています。18世紀のフランスの天文学者ラカーユが作った星座ですが、南半球の多くの星座と同じく、暗くて形がはっきりせず、見栄えのするものではありません。ただし、南半球でじょうぎ座のあたりを眺めると、南天の天の川が非常に明るく流れていて美しい見物になっています。星座名の由来は、昔の船乗りが測量に使った直角定規と棒をかたどったものだとされています

    見つけ方のポイント
       さそり座の心臓、1等星アンタレスのずっと南にある星座で、天の川の中にあります。暗い星が多い星座なので、非常に分かりにくいといえるでしょう。見つけるときは、真夏の夜に、さそり座のアンタレスから南に目を下ろしていき、地平線低く、椅子を逆さにしたような形の、四角と棒を組み合わせた星座を見つけてみましょう。

    神話の内容について
       じょうぎ座は18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1750年代に作った星座です。彼の発表した南天星図の中に書かれたもので、両隣にあるさいだん座とおおかみ座の一部を削って追加されました。航海中の測量技師が使う直角定規と棒をかたどったものだとか、直角定規と直定規だとか、水準器だとも言われています。神話とはまったく関係ありません。ラカーユは、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星の研究を行いました。ラカーユの創設した星座は、当時発明された道具などを模したものがほとんどです。




















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