スターダスト・
ミッション
投下時期
軌道上の重量
1999年2月7日
350.0kg

 1986年、日本(「すいせい」及び「さきがけ」)、旧ソ連(ベガ1号、2号)及びヨーロッパ(ジオット)が太陽系に戻るハレー彗星のフライバイに挑戦して以来、久しぶりの本格的な彗星ミッションである。

 このミッションの目的は、地球生命の素となった重元素を宿している星間塵の採取(2000年と2004年)と、2004年に内部太陽系を通過するヴィルト2彗星を接近通過しながら、この彗星の核の撮像、コマに含まれる塵と揮発性物質のサンプル及び星間塵のサンプルを採取することである。彗星には今もなお太陽系形成時の構成物質が含有されていると考えられており、このミッションは太陽系形成の謎をひもとく重要な鍵を握っていると考えられている。収集されたサンプルは含有重元素、同位元素及び鉱物、更に化学組成や有機物質の観点から詳細に分析される。

 このミッションの第1段階は、星間塵のサンプルの収集である。探査機スターダストは、2000年2月22日に最初のサンプル採取に成功した。サンプル収集は5月1日まで続けられた。採取されたサンプルは、次の採取が行なわれる2004年半ばまで回収カプセルに蓄えられる。


ヴィルト2彗星

 星間塵の採取を終えた探査機スターダストは、その後太陽を周回し続けながら2003年12月末にサンプル収集器を展開し、2004年のヴィルト2彗星との遭遇に備える。2004年1月2日、内部太陽系を通過するヴィルト2彗星に150kmまで接近してサンプルの採取を行い、同時に太陽に面したヴィルト2彗星の核を撮像する。

 2006年1月15日、密封容器に納められたサンプルは地球軌道で探査機から切り離され、容器に取り付けられたパラシュートが展開されて地球に到着する予定である。サンプルは直ちにジョンソン宇宙センター(米テキサス州ヒューストン)に運ばれて分析される。

 このミッションで使用されるサンプル採取器は、その前頭部にエーロゲルが塗布されている。エーロゲルは低密度、不活性、ミクロ単位の細孔を持つゼリー状の固形シリコンで、物理的かつ化学的にも変化の度合いが非常に低い特性を持っていて、秒速20〜25kmの速度でぶつかる星間塵の粒子の捕獲に適している。

 探査機スターダストの本体は、さしわたし1.7mの箱型のメイン・バスで、ダストシールドで覆われて塵粒子との衝突から保護される仕組みになっている。本体の前面に高利得アンテナがそして本体の両側には太陽電池パネルが取り付けられている。小型のサンプル回収カプセルは、バスの先端の狭まった場所に取り付けられている。カプセルの中に収納されている採取器はパドル(テニスのラケットのような形)型の円盤で、サンプルを採取する時に外に引き出される。推進機は、バスの背面に取り付けられている。そして科学機器は全てバスの中に収納されている。




 探査機スターダストの軌道



 ヴィルト2彗星は内部太陽系では新しく、過度に太陽光に熱しられていないため、コマを形成するガスが豊富である。本来は木星・天王星間の軌道にある彗星であるが、1974年9月10日、木星に接近し過ぎたためにその軌道に摂動が生じた。現在は火星と木星との間を周回している。核の大きさは約4km。太陽を通過した回数は5回に過ぎないので、ほぼ生まれた時の状態に近い。ちなみに、有名なハレー彗星は100回以上太陽通過している。一方、星間塵はさそり座方面から太陽系に飛来する新しい物質である。粒子は彗星のよりも小さく飛来速度は速い。星間塵のサイズごとの分布、速度、組成などの分析により、 太陽系の外側で起こっている進化の過程が把握できる。