春の星座   




かに座(蟹座)
学名Cancer
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC2672=楕円銀河/NGC2775=Sa型渦状銀河/NGC2632、M44(プレセペ)=散開星団/NGC2682、M67=散開星団/アクベンス(アルファ星)/アルタルフ(ベータ星)/アセルス・ボレアリス(ガンマ星)/アセルス・アウストラリス(デルタ星)/テグミネ(ゼータ星)
  • 神話の主な登場人物:ヘラクレス/ハイドラ(ヒドラ)/ジュノー/ヘパイストス(ヴァルカン、ウルカヌス)/デュオニソス(バッカス、バッコス)
  • 日本で観測できる時期:11月〜翌年7月
  • 見ごろの季節:春(東京では3月中旬の午後9時ごろに南中)

      かに座は、ふたご座としし座の間にあり、黄道上の星座として古くから重要視される星座です。バビロニア王国時代の記録ではすでにかにの姿で描かれています。古代ギリシャの詩にもかに座の名があり、5000年前から人々に親しまれてきたのが分かります。この星座のラテン名はカンケル(Cancer)といいますが、この名前はガン(癌)の学名と同じです。これは乳ガンの形がかにの甲に似ているためにつけられたもので、かに座の学名と同じ名前となっています。英語ではキャンサー、ドイツ語ではクレプス(krebs)といいます。

    見つけ方のポイント
     しし座のレグルスと、ふたご座に挟まれています。明るい星はなく、4等星が4個でそのほかは暗い星であるため見つけにくいのですが、レグルスとふたご座のポルックスを結んで、そのほぼ中心付近を注意して見ると、かに座の中心にあるプレセペ星団を発見することができます。

    神話の内容について
     ギリシャ神話によると、勇士ヘラクレス(ヘラクレス座)が巨大な多頭の蛇ハイドラ(うみへび座)を退治したとき、ヘラクレスを快く思わないオリンポスの女王ジュノーがつかわしたのが、このかにであるといわれています。かにはヘラクレスに踏みつぶされてしまいましたが、「よく戦ったのでジュノーが哀れんで天に上げ、星座になった」といわれています。
     かに座の中の恒星であるガンマ星のアセルス・ボレアリスは“北の小さいロバ”、アセルス・アウストラリスは“南の小さいロバ”の意味です。この2匹のロバは、ギリシャ神話の火の神ヘパイストスと酒の神デュオニソスの乗馬でした。神々がタイタン族と戦ったとき、大きくいなないて敵を驚かせた功で天に上げられました。そのとき、2匹のロバの間に飼い葉おけが置かれ、飼い葉を食べる姿となっています。M44のプレセペが、その飼い葉おけにあたります。


























しし座(獅子座)
学名Leo
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC3193=EO型銀河/NGC3226=E2型銀河/NGC3227=Sb型銀河/NGC3338=Sb型銀河/NGC3593=Sb型銀河/NGC3886=Sc型銀河/NGC3900=Sb型銀河/レグルス(アルファ星)/デネボラ(ベータ星)/アルギエバ(ガンマ星)/ゾズマ(デルタ星)/南のアサド(イプシロン星)/アダフェラ(ゼータ星)/シェルタン(シータ星)/アルテルフ(ラムダ星)/ラサラス(ミュー星)/サプラ(オミクロン星)
  • 神話の主な登場人物:エウリュステウス王/ヘラクレス/ネメアのライオン
  • 日本で観測できる時期:12月〜翌年8月
  • 見ごろの季節:春(東京では4月中旬の午後9時ごろに南中)

      しし座は、かに座とおとめ座の間にあり、春の宵に見ることのできる代表的な黄道上の星座です。1等星レグルスをはじめ、2等星1個、3等星4個以下、多数の星を持ち、古来より非常に重要視されてきました。古代バビロニアの初期の頃には大きな犬の姿に見られウル・グルラ(おおいぬ)といわれ、また、後期バビロニアではウル・ア(しし)と呼ばれました。フェニキア、エジプトなどでもライオンの姿の星座とされ、ギリシャでは紀元前3〜4世紀の天文詩にもそのように言及されています。

    見つけ方のポイント
     南中したしし座は、南から70度ほど仰ぐと、クエスチョンマークを裏返したような星列として見つけることができます。この形はししの頭と胸を表します。さらに東に直角三角形が見つかれば、その三角はししのお尻の部分です。レグルス星はししの胸に輝き、胸を張る西向きの大じしとなります。お尻の先にある2等星が、しっぽにあたるデネボラです。

    神話の内容について
     ギリシャのネメアの森では、不死身のライオンが住み、周辺を荒らし回っていました。エウリュステウス王は、強くて立派な勇士ヘラクレスがなにかと邪魔になってしまい、困難な仕事をさせて死なせてしまおうと、このライオンの退治を命じました。ヘラクレスはまず大弓で射てみましたが、ライオンは平気なので、棒をふるって洞穴に追い込み、腕でライオンを絞め殺しました。そして、その皮を持ち帰ったので、王も心からヘラクレスを恐れました。
     ヘラクレスは、そのライオンの皮を常に肩にかけていました。このライオンが天に上げられて星座になったといわれています

























おとめ座(乙女座)

学名Virgo
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M49(NGC4472)/M58(NGC4579)/M59(NGC4621)/M60(NGC4649)/M61(NGC4303)/M84(NGC4374)/M86(NGC4406)/M87(NGC4486)/M89(NGC4552)/M9(NGC4569)/M104(NGC4594、ソンブレロ星雲)/スピカ(アルファ星)/ザヴィヤヴァ(ベータ星)/ポリマ(ガンマ星)/ヴィンデミアトリックス(エプシロン星)/ザニア(エータ星)/シュルマ(イオタ星)
  • 神話の主な登場人物:デーメーテール/ペルセフォネー/ゼウス/ハデス/アストレイア
  • 日本で観測できる時期:11月〜7月の約9カ月間
  • 見ごろの季節:春

      おとめ座が作られたのは紀元前3200年ごろで、最初は麦の穂の星座でした。それが後にギリシャに入り、その地の神話・伝説と結びついて女神が麦の穂をもつ姿に変わりました。全天88星座の中では2番めに大きな星座です。青白く輝く1等星スピカがおとめ座の目印で、この星は牛飼い座のアークトゥルスと一対で「夫婦星」とも呼ばれます。星より銀河の方が多く、約2500個のメンバーからなる「乙女座銀河団」が横たわっています。

    見つけ方のポイント
     春の1等星の中で最も南に位置するスピカがおとめ座を見つけるときの目印になります。北斗七星の曲がった柄に沿って線をのばしていくと、春の星でいちばん明るいオレンジ色の星アークトゥルスがあります。そこを通ってさらに進んでいくと、青白く輝く星にぶつかります。この星がスピカです。ここから星がゆがんだY字形に並んでいて乙女座をかたちづくっています。しかし、星の数が少なく並びが散漫なので、その姿は少々たどりにくいかもしれません。

    神話の内容について
     農業の女神デーメーテールには、大神ゼウスを父とする一人娘ペルセフォネーがいました。この娘にゼウスの弟ハデスが恋をし、自分が王となっている冥界へ連れ去りました。デーメーテールは娘を失った悲しみで心を閉ざし、そのため地上の草木は枯れ果ててしまいました。地上の生命が死に絶えることを恐れたゼウスは、母親にペルセフォネーを返すように弟を説得し、承知させました。しかし、ハデスは一計を案じ、ペルセフォネーに4粒のざくろの実を食べさせました(冥界の食物を食べた者は冥界から出られない掟がある)。しかたなくゼウスは1年のうち4カ月間だけ娘を冥界で暮らさせることにしました。その4カ月間は、デーメーテールが悲しみに沈むため、地上は冬を迎えるようになりました。このデーメーテールの姿がおとめ座と言われています。また、正義の女神アストレイアがおとめ座となったとする説もあります。

























おおぐま座(大熊座)

学名:Ursa Major
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M97(NGC3587)「ふくろう星雲」=惑星型星雲/M81(NGC3031)/M82(NGC3034)/ドゥベー(アルファ星)/メラク(ベータ星)/ファド(ガンマ星)/メグレス(デルタ星)/アルコル、ミザール(見かけ上の2重星)
  • 神話の主な登場人物:ゼウス(ジュピター、ユピテル)/カリスト/アルテミス/ヘラ(ゼウスの妻)/アルカス
  • 日本で観測できる時期:一年中
  • 見ごろの季節:一年中

      おおぐま座は、一年中沈まずに北の空を回る「周極星」です。明るい7つの星が柄杓(ひしゃく)の形に並ぶので、西洋では「大柄杓(Big Dipper)」、中国・日本でも「北斗七星」として最も古くから親しまれてきました。北極星を見つける「指極星」としても役立ちます.。

    見つけ方のポイント
     北極星をはさんで、カシオペア座のほぼ反対側にある星座で、一年中北の空に見えます。7つの2〜3等星が、柄杓の形に並んでいます。

    神話の内容について
     アルカディア王の娘カリストは、狩りの途中ゼウスに見初められ、アルカスという男の子を産みます。しかしゼウスの妻ヘラの嫉妬にあい、醜い大熊に姿を変えられてしまいました。10数年後、成長したアルカスは、森でカリストに再会しますが、母親とは気付かず、矢で射殺そうとします。哀れに思ったゼウスは、この母子を大熊・小熊の姿に変えて天に上げ、星座の列に加えました。

























うみへび座(海蛇座)

学名:Hydra
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:コル・ヒュドラエ(アルファ星)/うみへび座R(赤色長周期変光星)
  • 神話の主な登場人物:ヘラクレス/ヘラ/エウリュステウス/イオラオス/アルクメネ
  • 日本で観測できる時期:ほぼ一年中
  • 見ごろの季節:春(東京では4月下旬の午後8時頃南中)

      全天星座の中でも最も長い星座で、東西の全長が100度にわたります。5角形をした頭部などを除き、大部分は天の南半球に位置しています。うみへび座の起源は古く、古代バビロニアの星図にすでに蛇の形で描かれていました。

    見つけ方のポイント
     かに座からてんびん座の南まで長々と伸びる星座です。かに座の南に、3等星が5つ集まった頭部が見えます。

    神話の内容について
     怪力無双の勇者ヘラクレスは、叔父のエウリュステウスから、レルネの沼に棲む巨大な海蛇退治を命ぜられます。海蛇は9つの頭を持ち、1つを切り落とせば2つの頭が新たに増える恐ろしい生き物でした。しかし、ヘラクレスは甥のイオラネスに命じて、首の切り口を松明で焼かせ、見事に海蛇を退治したのです。

























うしかい座(牛飼い座)
学名:Bootes
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:アルクトゥールス(アルファ星)/ナッカル(ベータ星)/セギヌス(ガンマ星)/ミラク(エプシロン星)/ムフリッド(エータ星)
  • 神話の主な登場人物:カリスト/アルカス/アトラス/エリクトニウス
  • 日本で観測できる時期:-
  • 見ごろの季節:春(6月中旬の午後8時頃正中)

      黄色い1等星アルクトゥールスと、やや北の3〜4等星で作る6角形よりなる星座です。アルクトゥールスは実視等級0等と、天の北半球で最も明るい星です。昼間に望遠鏡で観測された初めての星で、日本では「麦星」とも呼ばれます。

    見つけ方のポイント
     おとめ座の北で、かんむり座とりょうけん座に挟まれています。おとめ座の主星スピカと北斗七星の柄の端を結ぶ「春の大曲線」の中間に、黄色く輝く主星アルクトゥールスが見えます。

    神話の内容について
     うしかい座の神話には諸説あり、カリストの子で「熊を追う猟師」アルカスの姿だといわれます。アルカスは別の神話ではこぐま座とされています。また、馬車の発明者エリクトニウスだという説や、天を担ぐ巨人アトラスの姿だという説などもあります。

























みなみじゅうじ座(南十字座)

学名:Crux
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:アクルウス(アルファ星)/石炭袋(コールサック)=暗黒星雲
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:沖縄で5〜6月
  • 見ごろの季節:5〜6月(沖縄で5月中旬の午後8時頃に南中)

      南半球で最も有名な星座で、2個の1等星と2個の2等星が十字形を作っています。「南十字星(the Southern Cross)」と呼ばれ、古くから航海の目印とされました。

    見つけ方のポイント
     ケンタウルス座の南に位置し、十字の形が目印です。

    神話の内容について
     古代ローマ時代から知られ、「カエサルの玉座」などの名が付けれれていました。かつてはケンタウルス座の一部でしたが、17世紀末、独立して「みなみじゅうじ座」となりました。近世の大航海時代には、16世紀にバスコ・ダ・ガマが記録に残しています。

























こぐま座(小熊座)

学名:Ursa Minor
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:ポラリス(=北極星・アルファ星)
  • 神話の主な登場人物:カリスト/アルカス/ゼウス/ヘレン
  • 日本で観測できる時期:一年中(正中は7月上旬21時頃、5月下旬深夜、4月上旬3時頃)
  • 見ごろの季節:一年中(20時正中は7月中旬)

      こぐま座は天のほぼ北極にあり、一年中北の空に静止している2等星「北極星」をいただく星座として有名です。紀元前1200年頃から知られており、北半球を航海・旅行する人々の役に立っていました。柄杓(ひしゃく)に似た形で、北斗七星と向かい合うように位置しているので、「小柄杓」とも呼ばれます。

    見つけ方のポイント
     こぐま座は、北極星を柄の先端においたひしゃくの形の星座で、北斗七星と向かい合っています。こぐま座を見つける一番やさしい方法は、北斗七星が形作るひしゃくの先の2つの星を結んで、長さ分だけ5倍伸ばして北極星を見つけることです。また、カシオペア座のWの両端の線を内側に伸ばし、交差した場所とWの真ん中の星を結んで6倍の長さに伸ばしてみても、北極星が見つかります。

    神話の内容について
     森の妖精(ニンフ)カリストは、大神ゼウスと愛を交わしアルカスという子どもをもうけますが、ゼウスの妻ヘレンの嫉妬によって、大熊の姿に変えられてしまいます。成長した息子アルカスは、森でカリストに再会しますが、母と知らず矢で射殺そうとします。悲しんだゼウスは、親子とも熊の姿に変え、天に昇らせました。こぐま座は、そのときの子どもアルカスの姿といわれます。

























かみのけ座(髪座)

学名:Coma Berenices
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:かみのけ座銀河団(約800個の銀河を含む銀河の集まり)/Mel.111(散開星団)/M53(球状星団)/M64(黒眼銀河=渦巻き銀河)/M85(楕円銀河)/NGC4565(渦巻き銀河)
  • 神話の主な登場人物:ベレニケ/プトレマイオス3世/アフロディーテ
  • 日本で観測できる時期:2月〜9月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は5月下旬)

      おとめ座の北、しし座とうしかい座の間に4等星と5等星がごちゃごちゃとかたまっているところがあります。それがかみのけ座で、決まった形を見つけるのがとても難しい星座です。しかし望遠鏡を向けてみると、距離約数千万光年の銀河が800個以上も集まる「かみのけ座銀河団」があり、専門家から非常に注目されている星座でもあります。他にも、眼のように見えるM64黒眼星雲などがあり、観測には面白い星座です。

    見つけ方のポイント
     おとめ座のスピカ、うしかい座のアークトゥールス、しし座のデネボラの3星で作る「春の大三角」から、北斗七星の方角へ少し目をずらすと、小さな星が妙にかたまっている場所があります。そこがかみのけ座です。かみのけ座からさらに北の方向へ目を移していくと、りょうけん座を見つけることができます。

    神話の内容について
     星の学名は「ベレニケの髪の毛」といい、紀元前2世紀に実在したエジプト王妃ベレニケ2世にちなんでいます。ベレニケは、夫のプトレマイオス3世がシリアとの戦いに出陣したとき、夫の勝利を祈願してアフロディーテの神殿に自分の髪の毛を捧げました。プトレマイオスは、やがてシリアとの戦争に大勝利しますが、帰ってくると不思議なことに神殿の髪の毛が消え、代わりに空に髪の毛の形をした星座が輝いていました。それがかみのけ座の由来です。かみのけ座は、1602年にティコ・ブラーエによって正式に星座に加えられました。

























こじし座(小獅子座)
学名:Leo Minor
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC3395(渦巻き星雲)/NGC3396(渦巻き星雲)
  • 神話の主な登場人物:
  • 日本で観測できる時期:1月〜7月の約7カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は4月下旬)

      しし座の北側にある、平べったい三角形の形をした星座がこじし座です。ちょうどししの背中の上に乗っているような位置にあります。こじし座は比較的新しい星座で、17世紀の学者ヘヴェリウスによって作られました。一番明るい星でも4等星ですので、暗くて見つけにくく、天文学的にもそれほど面白い見物はありません。

    見つけ方のポイント
     しし座の首にあたる部分、「ししの大鎌」の上へ目を移していくと、北斗七星とのちょうど中間あたりに、3個の4等星で作られた、平べったい三角形があります。それがこじし座ですが、明るい星がなく見つけにくい星座です。

    神話の内容について
     こじし座は、17世紀のポーランドの学者、ヨハンネス・ヘヴェリウスによって命名された星座です。しし座などと比べると歴史が新しく、ギリシャ神話などには関係ありません。

























りょうけん座(猟犬座)
学名:Canis Venatici
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:M51(子持ち銀河=渦巻き星雲)/NGC5195(渦巻き星雲)/M63(ひまわり銀河=渦巻き星雲)/M3(球状星団)/M94(渦巻き星雲)/M106(渦巻き星雲)/コル・カロリ(アルファ星)
  • 神話の主な登場人物:アステリオン/カラ/アルカディア王/カリスト/ゼウス/アルカス
  • 日本で観測できる時期:2月〜9月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は6月上旬)

      うしかい座の西にある、エの字の形をした星座で、うしかいの連れる2匹の猟犬になぞらえて作られました。アルファ星のコル・カロリも3等星ですので、全体に暗く見つけにくい星座ですが、望遠鏡を向けてみると、小さな星雲(NGC5195)を連れた渦巻き星雲「子持ち星雲」や、ひまわりの形をした「ひまわり銀河」などが見られる面白い一角でもあります。

    見つけ方のポイント
     北斗七星の柄の端から、南の方向(北極星とは反対側)を見ていくと見つかります。カタカナの「エ」の字に見える3等星と4等星の集まりですが、全体に暗いので明るい都会では見つけにくいでしょう。また、うしかい座の腕にあたる部分の西を見ても見つけることができます。

    神話の内容について
     うしかい座の連れる2匹の番犬になぞらえて、17世紀のポーランドの学者、ヨハンネス・ヘヴェリウスによって命名されました。北側の犬をアステリオン、南側の犬をカラといいます。うしかい座は一説には、「熊の番人」とも呼ばれ、アルカディア王の娘カリストと大神ゼウスの間に生まれた、アルカスの姿だとも言われています。りょうけん座がおおぐま座を追うような姿なのはそのせいかもしれません。別の説ではアルカスは、こぐま座に変えられて空に昇ったと言われています。また、りょうけん座の3等星コル・カロリの名は、17世紀のイギリス王チャールズ2世の即位を記念して名づけられたもので、「チャールズの心臓」という意味があります。

























かんむり座(冠座)
学名:Corona Borealis
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:ゲンマ、またはアルフェッカ(アルファ星)/ヌサカン(ベータ星)/RCrB(不規則変光星)/TCrB(反復新星)
  • 神話の主な登場人物:ミノス/アリアドネ/テセウス/ミノタウロス/ディオニュソス
  • 日本で観測できる時期:3月〜10月の約8カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は7月中旬)

      うしかい座の東にある、きれいな星座です。7個の星が半円形に並び、小さいけれど王冠のように美しい形をしています。アルファ星ゲンマは「宝石」の意味で、文字どおり王冠の中央に位置し、宝石のようにかがやいています。かんむり座は形が独特で、日本でも古くから「土俵星」や「きんちゃく星」などの名前で親しまれてきました。星座内には80年に一度明るくなるTCrBという新星や、突然暗くなるRCrBという変光星があります。

    見つけ方のポイント
     うしかい座の上半身、体にあたる部分の東を見ると、7つの星が半円形を描いているのが見つかります。小さい星座で、一番明るい星が2等星ですが、形がまとまっているため、見つけるのは簡単です。またへびつかい座のへび(へび座)の頭の部分から、上方向へ目を移していっても見つけることができます。

    神話の内容について
     クレタ王のミノスは、毎年迷宮に住む怪物ミノタウロスにいけにえを捧げていました。ミノスにはアリアドネという娘がいましたが、ある年、いけにえとして連れてこられたアテナイの王子テセウスを一目見て恋に落ちてしまいます。アリアドネは、テセウスが怪物に殺されないよう、道案内のための糸玉を与えます。おかげでテセウスはミノタウロスを殺して迷宮から生還しますが、彼を助けたアリアドネももうクレタにはいられません。テセウスはアリアドネを連れて船で逃げ出しますが、途中で一泊したナクソスの島で、眠りについた彼女を置き去りにして、自分だけアテナイに帰ってしまいました。目覚めたアリアドネは嘆き悲しみ、海に身を投げますが、そこに現われたディオニュソスが彼女を助けて妻とし、彼女の冠を天に放り投げました。すると冠は天の星座となりました。それが現在のかんむり座だということです。

























コップ座
学名:Crater
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:−
  • 神話の主な登場人物:−
  • 日本で観測できる時期:2月〜7月の約6カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は5月上旬)

      コップ座は、からす座のすぐ西にある小さな星座です。形はギリシャの昔の杯のようで、コップというより取っ手のついた優勝カップを想像させます。しかし、なにぶん4等星と5等星でできた暗い星座なので、見つけるのはなかなか難しいでしょう。

    見つけ方のポイント
     からす座のすぐ西を見ると、長々と延びるうみへび座に乗っかるようにして、杯のような形をした星の群れが見つかります。ただし、4等星と5等星ばかりなので、はっきりとした形を見出すのは難しいでしょう。本来は、小さな台形の上に、六角形を乗せたような形をしており、大きな杯(さかずき)のように見えるはずです。

    神話の内容について
     星座図を見ると、取っ手のついた豪華なカップの形をしています。古い星座でギリシャ時代に作られた星座です。

























からす座(烏座)
学名:Corvus
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:デルタ星(2重星)
  • 神話の主な登場人物:−
  • 日本で観測できる時期:3月〜7月の約5カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は5月下旬)

      うみへび座の北に、3等星が4個かたまって、小さな台形を作っているのがからす座です。比較的見つけやすい星座で、西洋では紀元前1900年くらいからあり、日本でもその形から「帆かけ星」などと呼ばれていました。また、北斗七星からうしかい座、おとめ座に延びる「春の大曲線」の終点にあたる星座で、小さいながら春の夜空でもポピュラーな存在だといえるでしょう。

    見つけ方のポイント
     見つけるには「春の大曲線」をたどっていくと良いでしょう。「春の大曲線」は北斗七星の柄のカーブをそのまま延ばした曲線で、うしかい座のアルクトゥールス、おとめ座のスピカを通っていきます。さらにスピカから曲線を延ばしていくと、からす座に行き当たります。からす座は4個の3等星が小さな台形に配置された星座で、簡単にそれと分かります。

    神話の内容について
     日本では、帆かけ船の形に見立てて「ほかけ星」などと呼ばれていました。西洋でも、からす座の上の2個の星を伸ばすと、おとめ座のスピカにつながるので、「スピカのスパンカー」と呼ばれていました。「スパンカー」とは帆船の帆のことをいいます。

























ろくぶんぎ座(六分儀座)
学名:Sextans
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:―
  • 神話の主な登場人物:―
  • 日本で観測できる時期:2月〜6月の約5カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は4月下旬)

      昔、天体観測に用いたり、星の位置を調べて船の位置を知るのに使われた「六分儀」という器具を星座に見立てたものです。星の並びは扇を開いたような形をしており、六分儀に似ています。しかし星座が小さい上、構成する星が4等星ばかりと暗いので、実際には見つけにくいでしょう。17世紀にポーランドの天文学者ヘヴェリウスが作りました。

    見つけ方のポイント
     春の南の空に昇る星座です。うみへび座の前半分のあたり、アルファ星コル・ヒドレからちょっと東へ目を向けてみると、4等星と5等星が作る扇のような形をした星の集まりが見つかります。それがろくぶんぎ座ですが、なにぶん暗いため見つけにくいでしょう。

    神話の内容について
     ろくぶんぎ(六分儀)というのは、昔、星の高さや星と星との間の角度を測るのに使われた器具のことです。天文観測に使う他に、船乗りたちが航海中に星の位置を調べて、自分たちの船の位置を調べるのに使いました。ですから、神話とは関係ありません。この星座は、17世紀のポーランドの天文学者ヨハンネス・ヘヴェリウスが、1690年に作ったものです。「ろくぶんぎ」の名は、彼が愛用していて火事で失った六分儀を記念したものだといわれます。

























はえ座(蝿座)
学名:Musca
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC4833(球状星団)
  • 神話の主な登場人物:-
  • 日本で観測できる時期:日本からは見ることができません
  • 見ごろの季節:春(20時正中は5月下旬)

      南十字星の南にある、小さな台形をした星座です。昆虫の蝿を星座に見立てたもので、最初は「みつばち座」などと呼ばれていました。明るい星はありませんが、小さくまとまっているので見つけやすいでしょう。しかし天の南極あたりにある星座なので、日本では石垣島や宮古島へ行ってもほとんど見ることはできません。

    見つけ方のポイント
     南十字星のちょうど南にある星座で、十字の長い方の線を南に向かって伸ばしていくと、2個の3等星と2個の4等星が作る小さな台形が見つかります。それがはえ座です。 戻る

    神話の内容について
     飛ぶ蝿を星座にみたてたもので、神話とは関係ありません。1603年にドイツの天文学者ヨハン・バイエルによって発表された星図「ウラノメトリア」では、「蜜蜂座(Apis)」とされていた星座です。その後、18世紀のフランスの天文学者ラカーユによって「はえ座」とされました。ラカーユは、現在の南アフリカ共和国の南端ケープタウンに住んで、星の研究を続けた学者です。 また、はえ座ができたのは17世紀前半で、ケプラーの養子となったバルチウスが作ったのだともいわれています。

























やまねこ座(山猫座)

学名:Lynx
北半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:NGC2419(球状星団)
  • 神話の主な登場人物:−
  • 日本で観測できる時期:11月〜7月の約9カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は3月中旬)

      春の北の空、おおぐま座とふたご座にはさまれている、細長い星座です。17世紀にそれまで星座のなかった領域に作られたもので、見つけやすいとはいえません。望遠鏡を向けてみると、星座の中ほどあたりに、球状星団が見つかります。この星団は地球から約20万光年離れていて、球状星団の中では最も遠いもののひとつです。

    見つけ方のポイント
     春の北の空を見ると、北斗七星のひしゃくの端と、ふたご座の2つ星ポルックスとカストルのちょうど中間あたりに、ジグザグの星の並びがあります。これがやまねこ座です。3等星と4等星ばかりである上、並び方にも特徴がないので、見つけにくい星座です。

    神話の内容について
     17世紀のポーランドの天文学者、ヨハンネス・ヘヴェリウスによって作られたもので、神話とは関係ありません。命名された当初は「山猫、または虎」という名前で、あいまいでした。さらにヘヴェリウスは「ここに山猫の姿を見出すのは山猫のような鋭い目の持ち主でないと不可能であろう」などという言葉も残しています。

























ケンタウルス座
学名:Centaurus
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:オメガ星団(球状星団)/NGC5128(電波銀河)/リゲル・ケンタウルス、またはアルファ・ケンタウリ(アルファ星、3重星)/ハダル(ベータ星)
  • 神話の主な登場人物:ケンタウルス
  • 日本で観測できる時期:5月〜8月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は6月上旬)

      半人半馬のケンタウルスをかたどった星座です。南に位置するので、沖縄を除く日本では上半身の部分が地平線上に見えるだけですが、全体には、明るい星が多く華やかな星座です。足のつけねにあるオメガ星団は、球状星団としては全天で一番明るいものです。また、オメガ星団の北にあるNGC5128は強い電波を出す電波銀河で、2つの銀河が衝突しているところだといわれます。さらにアルファ星リゲル・ケンタウリは距離4.3光年と、太陽系に一番近い星として知られています。

    見つけ方のポイント
     おとめ座から南へ目を下げていくと、南の地平線上に、台形を逆さにしたような星の集まりが見えます。これがケンタウルス座の頭から肩の部分です。さらに目を下ろすと台形に連なる×字が見えてきます。これがケンタウルスの胴体です。本州ではここまでしか見えませんが、南へ行けば南十字星の北側に大きなケンタウルス座の全体像を見つけることができます。

    神話の内容について
     ケンタウルスは、上半身が人、下半身が馬の一族で、ギリシャ神話などにたびたび登場します。神話ではギリシャのテッサリア地方の山地に住むとされており、狩猟が上手く誇りの高い種族だといわれています。

























おおかみ座(狼座)

学名:Lupus
南半球
  • 構成する主な星雲、星団、恒星:―
  • 神話の主な登場人物:ケンタウロス
  • 日本で観測できる時期:5月〜8月の約4カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は7月下旬)

      ケンタウルス座の東にある星座で、ケンタウルスの槍に貫かれた狼の姿を表しています。星座はちゃんと狼に見える形をしており、なかなか見ごたえがあります。しかし南の地平線低くにしか昇らないので、沖縄など南の土地へ行って見た方が良いでしょう。ギリシャでは古くから知られていた星座で、紀元前4世紀頃には「野獣座」と名付けられていました。

    見つけ方のポイント
     ケンタウルス座の東にある星座です。見つけるときは、ケンタウルス座の東の端、ちょうどケンタウルスの腕と槍の部分の東を見ると、5個ほどの4等星が3角形を作っているのが見つかるでしょう。それがおおかみ座の頭で、そこから南(下方向)へたどっていくと、おおかみ座の胴体と前足、後ろ足を見つけることができます。ただ、本州では地平線すれすれに現われるので、見つけにくいかもしれません。

    神話の内容について
     星座図を見ると、隣の星座であるケンタウロスの槍に貫かれる狼の姿を表しています。ギリシャ神話に出てくるケンタウロスは、上半身が人間で下半身が馬という半人半馬の種族で、ギリシャのテッサリア地方に住むといわれていました。ケンタウロスは勇壮で誇り高く、荒っぽい種族です。この狼もそうした勇壮なケンタウロスによって狩られ、神に捧げられたものだとされています。おおかみ座は紀元前4世紀頃、ギリシャで「野獣座」と呼ばれていたと記録にあり、「おおかみ座」とされたのは、13世紀のスペインの星図からだといわれています。

























ポンプ座
学名:Antlia
南半球
  • 日本で観測できる時期:2〜6月の4カ月間
  • 見ごろの季節:春(20時正中は4月)

      ポンプ座は、しし座の1等星レグルスのずっと南、うみへび座の腹の中ほどのやや南にある星座で、近世の化学実験に使われた真空ポンプを表したものとされています。1763年、ラカーユによって星座に加えられたものですが、折れ線のようにあいまいな形で、明るい星もないため、見つけにくい星座です。アルファ星(一番明るい星)を見つける場合は、うみへび座の頭と、うみへび座のアルファ星「コル・ヒュドレ」を結んだ線を南に1.5倍伸ばしてみると良いでしょう。ただし3等星なので、あまり見栄えはしません。

    見つけ方のポイント
       うみへび座の南にある星座で、春に南の空低く昇ります。見つける場合は春の南の空で、しし座の1等星レグルスからずーっと南へ目を移していくのがいいでしょう。地平線すれすれに、ポンプ座の3角形が見つかります。しかし、暗い星ばかりですので、はっきりとした形を見分けるのは難しいでしょう。
    .神話の内容について
       18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1763年に作った星座です。星図の絵を見ると、「ポンプ」といっても水を汲み上げるものではなく、化学実験に使われる、空気を抜く真空ポンプをかたどったものであるようです。神話とはまったく関係ありません。ラカーユは、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星の研究を行いました。

























ふうちょう座
学名:Apus
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からは見ることができません
  • 見ごろの季節:春(20時正中は7月)

      ふうちょう座は、ニューギニアなどの熱帯に住む極楽鳥の1種「ふうちょう(風鳥)」をかたどった星座です。日本からはまったく見えませんが、オーストラリアなどの南半球へ行くと、南の空にジグザグに折れ曲がった星座の形を見ることができるでしょう。ただし、4等星以下の暗い星座なので、形を見つけるのは大変です。「ふうちょう」とは変わった名前の鳥ですが、原住民が足を全部切って輸出したため、ヨーロッパでは「足がなく、いつも風に吹かれて飛んでいる鳥」として、こう名付けられました。

    見つけ方のポイント
       春の夕方、南十字星の長辺を少し下(南)に伸ばすと、台形をしたはえ座が見つかります。そのはえ座の左(東)の辺を下(南)に2倍伸ばすと、ジグザグに折れ曲がるふうちょう座が見つかります。ただし他の南天の星座と同じく、4等星ばかりで暗い上に形がはっきりしないので、とらえにくいでしょう。

    神話の内容について
       17世紀のドイツの天文学者バイエルによって名付けられた星座で、1603年に刊行した彼の星図「ウラノメトリア」に掲載したのが最初です。16世紀のオランダの航海者テオドルスの観測を元に設定したものだと言われます。「ふうちょう」とは、ニューギニアに住む極楽鳥という羽の色が鮮やかな鳥の一種です。Apusとは「足無し」を意味するギリシャ語ですが、それはこの鳥が原住民によって足を切られて輸出されたため、ヨーロッパでは足のない鳥だと信じられていたからです。足がないため木に止まれず、いつも風にまかせて飛ぶから「ふうちょう(風鳥)」といわれていました。神話とは関係ありません。

























コンパス座

学名:Circinus
南半球
  • 日本で観測できる時期:日本からはほとんど見えません
  • 見ごろの季節:春(20時正中は6月)

      コンパス座は、全天88星座中4番目に小さな星座です。円を描くコンパスを かたどった星座で、頂点にある3等星から5度ほどに開いた細長い三角形をしていま す。ケンタウルス座のアルファ星の先にあるため、小さいながら比較的見つけやすい といえるでしょう。1750年代にラカーユによって作られました。この星座が作られた 当時は、船乗りたちが世界を股にかけて渡り、新しい土地を発見する大航海時代でし た。それで、海図を調べるコンパス座をはじめ、ぼうえんきょう座やはちぶんぎ座、 じょうぎ座など航海に関係する道具をかたどった星座がたくさん作られました。

    見つけ方のポイント
       コンパス座は3等星から5等星が細長い三角形を作る小さな星座ですが、見つけ方 は比較的簡単です。ケンタウルス座の前足にあたる明るい1等星アルファ星のすぐ 先、みなみのさんかく座との間に挟まれた空間を見ると見つかります。

    神話の内容について
       コンパス座は18世紀のフランスの天文学者N・L・ラカーユ(1713〜62年)が、1750 年代に作った星座です。彼の発表した南天星図の中に書かれたもので、航海の測量が 使うコンパスをかたどったものです。神話とはまったく関係ありません。ラカーユ は、アフリカ大陸の南端、現在の南アフリカ共和国のケープタウンに住み、南天の星 の研究を行いました。




















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