タイタン
直径5150kmの太陽系で二番目に大きい衛星で、惑星の水星よりも大きい。土星からの平均距離は122万7000kmである。1655年オランダの天文学者、クリスチャン・ホイヘンス(1629〜1695)により発見された。
タイタンは、濃い大気を持つ太陽系で唯一の衛星である。大気は窒素を主成分とし、その他エタンやメタンを含んでいる。非常に濃く、地球の大気の約4倍もある。また、タイタンの大気は数十億年前の生命が誕生する以前の原始地球の大気に似ていると考えられている。大気の上層は、メタンが太陽光に反応して出来る炭化水素でできたオレンジ色の厚いもや(地球上のスモッグ以上)で覆われているため、中を覗き見ることはできない。メタンでできた雲の下には、液体のエタンの海洋があるかもしれない。
タイタンの密度は水の約2倍。内部は氷と金属でできているようである。表面は氷で覆われた−180℃の荒涼とした世界であろう。
2004年に土星に遭遇する探査機カッシーニからタイタンの大気に投入されるホイヘンス・プローブの探査で、明らかになるかもしれない。
レア
タイタンに次ぐ大きい衛星で、直径は1530kmである。1672年にイタリア生まれの天文学者ジョバンニ・カッシーニ(1677〜1756)により発見された。ボイジャー1号の画像によると、レアの明るい色をした氷の表面がクレーターですっかり覆われていることがわかった。
レアには前方の明るい半球と、暗い地表に明るい筋目の入った後側の隠れた半球とがある。太陽から遠く離れた低い温度のもとで、地表は岩のように固い氷で覆われている。暗い半球の明るい筋目は、形成直後の内部活動で生じたもののようである。前方の半球の筋目は、繰り返された隕石の衝突によりならされてしまった。土星からの平均距離は52万9000kmである。
ミマス
直径400kmの衛星で、E環の中をまわっている。1789年にウイリアム・ハーシェル(1738〜1822)により発見された。表面はクレーターだらけである。中でも、幅130km、深さ10kmのひときわ巨大なクレーター「ハーシェル」は、ミマスの1/3を占めている。このクレーターはおそらく巨大な小惑星の衝突でできたもので、中央丘は表面から6kmの高さに聳えている。科学者の計算によればほぼ間違いなく、ハーシェルを作った衝突でミマスが形成されたようである。土星からの平均距離は18万6000kmである。
エンケラドス
直径500kmで、1789年、ミマスと同じくウィリアム・ハーシェルにより発見された。様々な表情を持つ、太陽系の中でもかなり奇妙な衛星の一つである。時間の経過により古くなったクレーター、粗削りな新しいクレーター、広々とした平原、そしておそらく氷を噴きだす火山など、この衛星の表面は内部から噴き出す物質で何度も塗りかえられてきたようである。
エンケラドスが土星とディオーネとの間で一直線上に並ぶと、二つの天体の潮汐力により押しつぶされたり、引き伸ばされたりする。このために、エンケラドスに活発な地質活動が起こり、表面にさまざまな地形が現れるようである。また、この活動により「氷の火山」が生じ、凍った物質を噴き出してE環に氷の粒子を供給しているようである。これにより、エンケラドス周辺のE環は明るさと密度をいくぶん増している。土星からの平均距離は23万9000kmである。
テティス
直径1060km、地球の月の1/3の大きさを持つクレーターだらけの氷の球である。密度が水の1.1倍しかないことから、少なくとも内部の半分は氷であると考えられている。1684年に、ジョバンニ・カッシーニにより発見された。
テティスには二つの特徴的な地形がある。直径400kmのクレーター「オデッセウス」と、幅100km、長さ2000km以上、深さ5kmの峡谷「イサカ・カズマ」である。この峡谷は長さがテティスの周囲の3/4にも達しており、地球のグランド・キャニオンよりもはるかに大規模である。
この巨大な割れ目は、おそらく昔テティスが表面から中心部へと凍っていくにつれて膨張し、もろい地殻に亀裂が生じたためであろうと考えられている。
テティスにはクレーターがそれほど多くない地域があるが、これは過去に地質活動があり、そのために地表が再成されたためであろうと考えられている。テティスの軌道には、直径20〜30kmの豆衛星テレストとカリプソのいわゆるラグランジュ衛星があり、テティスと軌道を共有している。土星からの平均距離は29万6000kmである。
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