マーズ・グローバル・
サーベイヤー・ミッション




打ち上げ時期 1996年11月7日
軌道上の重量 1030.50kg


マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)ミッションは、1992年9月25日に打ち上げられ失敗に終わったマーズ・オブザーバー・ミッションの、いわば低コスト版である。このミッションの目的は、高分解能の撮影による詳細な地形図の作成、地表の組成と内部の物質成分の調査、地表の地質過程の調査、地形と重力の測定、地表と大気中の水と塵の役割の観測、磁場の進化の調査である。搭載された科学機器は、MOC(カメラ)、 TES(放射熱分光計)、MOLA(レーザー高度計)、MFI(磁場探査器)、MR(中継送信機)などである。

 MGSの機体は、縦横1.17m、高さが1.7mの長方形をしている。機体は、科学機器と推進機の二つのモジュールに分かれている。磁力計以外の科学機器を収容するモジュールは、高さが73.5cmで、この部分が機体の底部に当たる。この上に推進機と推進剤を収納した高さが約1mのモジュールが取り付けられている。機体の両脇には、3.5x1.9mの太陽電池パネルが取り付けられている。マッピングを司る直径1.5mの高利得パラボラアンテナが、底部から伸びた長さ2mのブームに装着されている。

MOC
TES
MOLA
MFI
MR

 打ち上げから10ヵ月後の米東部標準時間1997年9月12日午後9時17分、MGSは火星の周回軌道に乗った。火星から無線信号が地球に届くまでには約14分かかる。午後9時57分、MGSは近火点約5万4000km、遠火点258kmの楕円軌道を描き、火星を一周45時間で回り始めた。

 1年3ヵ月の軌道周回後、MGSは大気の抵抗を利用したエアローブレーキング(大気制動操縦)推進機の点火により、平均高度378kmに保ち、一周2時間の極周回の略円軌道に移った。1998年2月、エアローブレーキングを終えた。 そして3月にはマッピングを開始する予定であったが、太陽電池パネルの片一方が機能不全に陥っため1年間延期された。火星の北半球が夏を迎えた1999年3月中旬、無事太陽電池パネルの修理を終え、7日間を一区切りとする地形図作成のために火星をくまなく撮影し始めた。

 第1次マッピング・ミッションは、2001年1月まで続けられる予定である。MGSは太陽と同期軌道であるため、画像の撮影は太陽が常に午後2時の方位角で行われる。 第1次ミッションの後、MGSは今後打上げられるアメリカ及び国際ミッションのデータ中継としても使用される。1998年、2001年、2003年、2005年と2年毎に打ち上げられる火星ミッションが予定されている。

1999年12月3日(米太平洋標準時)に火星の南極周辺に着陸予定であった、探査機マーズ・ポーラー・ランダーとディープ・スペース2は、MGSの観測による捜査にも拘わらず結局失敗に終わった。火星の気象の歴史と水を探査する予定であったこのミッションの挫折は、未来の火星有人探査に向けたデータ収集する野心的なミッションであった。

 MGSは、現在も順調にマッピングを続けて数々の地形画像を送って来ている。火星軌道に到着以降に、搭載カメラ(MOC)が捉えた火星の地形画像を紹介する。


1997年10月20日(米太平洋標準時間)、MGSが24回目の周回に入った直後の5分間で撮影した太陽系最高峰のオリンポス山の画像である。高度176kmから約1kmの低分解能で撮影された。この画像には、火星の北緯26度、西経126〜138度の地域が収められている。画面の上が火星の北に当たる。オリンポス山は、高さ25km、すそ野の幅は東西約550kmである。頂上には広さ66x83kmのカルデラがあり、中には7ヵ所の崩落孔が存在する。頂上の周囲には、水の氷の雲が見られる。時間は火星の夏時間で午後5時であった。

1997年10月3日、MGSが13回目の火星周回直前に撮影したマリナー渓谷の画像である。画像は、600〜1000km上空から太陽光の当たるマリナー渓谷に対して25度角のアングルで撮影された。撮影時間は火星の午後に当たり、マリナー渓谷系に雲と靄が垂れ込めていた。

1997年9月19日、MGSが5回目の火星周回で撮った画像である。入り込んだ迷路のような峡谷系の光景からこの名前が付けられた。この峡谷系はマリナー渓谷の西端にあり、長さ4000kmと北アメリカ大陸を横断するほどの距離がある。

1998年4月5日、MGSが火星の北緯40.8度、西経9.6度のシドニア地域の上空445kmからマッピング中に撮影した画像である。朝の太陽が火星の地平線に対して25度角で射し込んでいた。左側はバイキング1号が火星の深い午後の時間に撮影した画像である。