ルナー・プロスペクター・
ミッション

月探査機ルナ・プロスペクター
打ち上げ時期
  軌道上の重量
1998年17
158kg

1972年12月に打ち上げられたアポロ17号のミッションを最後に、NASAの月探査は休眠状態に入っていた。1994年1月25日、国防総省とNASAの共同で打ち上げられた月・小惑星探査機クレメンタインの探査で、月の両極地域に水の氷が存在することが示唆された。月は、再びミッションの舞台に登場した。


月探査クレメンタイン

アテナ2型ロケットで打ち上げられた後、105時間の飛行でルナ・プロスペクターは月の軌道に到着した。幾度か軌道変更を行った後、1998年1月16日、月の南極地域の100km上空に達し、ほぼ円形に近い軌道に乗って観測を始めた。

ルナー・プロスペクターの本体は、直径1.37m、幅1.28mのグラファイト・エポキシ合成樹脂製のドラム型である。 機体から3本の長さ2.5mのらせん状のブームが伸びている。1本のブームの先端からは更に長さ1.1mのブームが伸びていて、それには磁力計が取り付けられている。ルナー・プロスペクターにはこの他に、月全域の元素の存在比調べて、高地地域の地殻の進化や玄武岩の発生を伴う火山活動の期間や範囲を知るためのガンマ線分光計と中立分光計(中立分光計は、月の極地域の永久に日陰となっている領域に存在していると考えられている水の氷も探査する)、磁力計と共に月の地殻と両極の磁場を探査する電子反射計、現在の月の地殻活動のレベルを知るために使われるかもしれないラドンの除気現象を測定するアルファ粒子分光計および月の磁場の特性を探査するドップラー重力測定機が搭載されている。

探査機は、ハイドラジンを燃料とする6基の一薬推進機により制御される。電力は、本体に貼り付けられた平均出力186Wの太陽電池と再充電可能のニッケル・カドミウム電池が供給する。地球との交信は、S帯トランスポンダー(電波の中継増幅器)と中利得アンテナがダウンリンクを司り、全方位対応の低利得アンテナがダウンリンクとアップリンクに対応する。 自律制御コンピュータを持たず、 搭載指示・データ処理装置経由で地球の指示で制御される。 データは地球に直接ダウンリンクされ、半導体記録装置にも蓄えられ、53分後に再度ダウンリンクされる。これは交信中のブラックアウトの間に収集されたデータを全て確実にダウンリンクするためである。

1998年1月16日、高度100kmで円形に近い軌道に乗り、傾斜90度、約2分の周期でマッピングを開始した。1998年12月19日、高分解能でマッピングを行なうために軌道を月の上空40kmに下げた。1999年1月28日、軌道を15km x 45kmに修正して1年間の初期探査を終了した。7月31日まで続く次の探査を開始した。

1999年7月31日、ルナ・プロスペクターは、水の氷が埋蔵されていると考えられている南極近くのクレーターの永久に陰った地域(南緯87.7度、東経42度)に秒速18mで衝突した。氷が存在すれば、この衝突でクレーターから水の水蒸気が発生するだろうとの推測からである。そして地球からも水蒸気が観測されるはずであった。



ルナ・プロスペクターの衝突地表

残念ながら、水蒸気のプルームは見られなかった。また現在に至るまで、水の氷の存在は確認されていない。しかし、このミッションで得られたデータにより、詳細な月の地表組成の分布図が作成され、月の起源、 進化、現状および資源など、月にに関する理解は深まると期待されている。

ルナ・プロスペクター・ミッションは、NASAのディスカバリー計画(より速く、より安く、より良く)の第弾で、総経費は6280万ドルであった。