マーズ・エクスプレス・ミッション
オービター
 


ランダー(ビーグル2)
打ち上げ機関 ヨーロッパ宇宙機関 (ESA)
打ち上げ時期 2003年6月3日
軌道上の重量 オービター       :555kg
ランダー(ビーグル2)  :60kg

目的
 
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のオービター(軌道周回機)とイギリスのランダー(着陸機)ビーグル2で構成された火星ミッションである。ビーグル2は、イギリスが打上げる最初の火星探査機である。

オービター・ミッションの目的は、
10メートル単位の高分解能地形測定(マッピング)による火星の地形図を作成
100メートル単位の分解能測定(マッピング)による鉱物の分布図の作成
大気の組成の調査
地表下の構造調査
大気の循環と惑星間物質の調査
大気と地表下層の相互関係の解明

ランダー・ミッションの目的は、
着陸地点の地質、地質の化学特性及び鉱物の分布を測定するためのサンプルの収集
大気の物理特性や地表の調査
気象や気候に関するデータ収集
生命の痕跡の探査

である。

 火星の生探査は、1970年代におけるNASAの探査機バイキング1号と2号による生命探査が行われて以来、約40年ぶりの試みである。



ミッション

オービター
 マーズ・エキスプレス・オービターはの本体は、アルミニウムの膜で蓋われた1.5×1.8×1.4mのメインバスである。火星軌道の到着は、2003年12月6日の予定である。軌道に到着すると、オービターは250km×15万kmの超楕円軌道に移行し、火星の軌道面に対して25度の傾斜角を保って周回する。その後、新たに四基の推進機を噴射させ、250km×1万1583kmの周回軌道に移り火星を7.3時間で一周する。 この時点で、オービターは、軌道の近火点においてはそのデッキの上部を火星に向け、遠火点においては高利得アンテナを地球に向けてアップリンク及びダウンリンクを行い、この軌道を440日間周回した後、遠火点の高度を1万243kmまで下げて本格的な探査活動を開始する。オービター・ミッションは、1火星年(687地球日)続けられる。

ランダー(ビーグル2)
 ビーグル(Beagle)の名前は、「種の起源」を著したイギリスが誇る生物学者チャールス・ダーウイン(1809〜1882)の調査船にちなんだものである。ランダーは、オービターが火星軌道に到着する5日前に大気の中に直接投入される。投入の5日後、パラシュートが開いてランダーは降下を始める。火星の約1km上空に達すると、1997年のマーズ・パスファインダーと同じように、膨張した巨大な袋に保護されてランダーは地表に硬着陸する。膨張した袋は静止すると収縮し、中からランダーが現れる。

 静止後、浅底のおわん型をしたビーグル2の機体の蓋の留め金が外れて、太陽電池パネルの役目をする四枚の円盤が現れる仕組みになっている。ビーグル2にはロボット・アームが取り付けられており、その先端には「もぐら」と呼ばれる超小型の掘削機が装着されている。「もぐら」は地表下の物質のサンプルを採取することができる。また、ガスマトグラフ、質量分光計、X線分光計、顕微鏡、パノラマ・広角視野のカメラおよび環境センサーが搭載されている。ビーグル2の着陸地点は、火星の南半球と北半球の境目に位置する広大な平坦地に位置するイシダス平原が予定されている。

 ところで、日本の宇宙科学研究所(ISAS)が1998年に打上げた火星探査機「のぞみ」が、2004年1月に火星の軌道の到着する。「のぞみ」は、火星の周回軌道を周回しながら、磁場、大気の組成、電離圏の調査を始める。「のぞみ」は、かつては共に似通った時期を持った二つの惑星の環境が、何時、どのような経緯で現在のような全く異なってしまったのか、大気の変動を調査・解明することにより、その時期と原因を探る重要なミッションである。双方のミッションの時期が近いこともあって、日英が共同の多角的火星探査が行われる予定である。