カッシーニ・ホイヘンス・
ミッション

探査機カッシーニ
打ち上げ時期 1997年10月15日
軌道上の重量 2157.00kg
プローブ・ホイヘンス軌道上の重量 192.00kg


 カッシーニ・ミッションは、NASA(米航空宇宙局)の土星探査機カッシーニと衛星タイタンを探査するESA(ヨーロッパ宇宙機関)のホイヘンス・プローブからなるミッションである。

このミッションの主な目的は、
 1)土星のリング形の立体構造とその力学的振る舞いの確定
 2)土星の衛星の地表の組成と地質過程の探査
 3)衛星イヤペトスの暗い半球の暗黒物質の性質と形成起源の探査
 4)土星の磁気圏の立体構造と力学的振る舞いの探査
 5)土星大気の雲の高度毎の力学的振る舞いの探査
 6)衛星タイタンの雲と靄の時間毎の変化の観測
 7)衛星タイタンの地表の精査
である。

 探査機カッシーニは、2004年7月に土星に到着する予定である。土星に到着するために、木星探査機ガリレオと同じような惑星のスウィングバイを利用する。つまり、金星―金星―地球―木星の順にスウィングバイ(VVEJGA)を行なって土星に到着する。探査機カッシーニが土星の周回軌道に乗ると直ぐ、搭載された衛星タイタンの探査機ホイヘンスが切り離される。カッシーニは、オービター(軌道周回機)となって楕円軌道を描きながら、少なくとも30回土星を周回し土星系の観測を行なう予定である。

 探査機カッシーニ搭載される科学機器は、レーダー・マッパー、CCD撮像カメラ、可視光線・赤外線マッピング分光計、宇宙塵分析器、電波・プラズマ波測定器、プラズマ分光計、紫外線撮像カメラ、磁力計、イオン・中立質量分光計などである。また、搭載された通信アンテナ及び特殊送信機による遠隔測定により、土星やタイタンの大気を調査する。

 カッシーニ・ミッションは、NASAが15年の歳月と総予算4000億ドルを費やす金喰い虫のために、幾度となく中止の危機に晒された挙げ句の打ち上げであった。また電源がプルトニウムであったため、環境保護団体の激しい抗議運動最中の打ち上げでもあった。

左と中央の画像:タイタンの大気中を降下するホイヘンス。
右の画像:タイタンに着陸したホイヘンス。彼方に土星とリングが見える。

 ホイヘンス・プローブの目的はタイタンの大気の調査であるが、その内訳は以下の通りである。
 1)密度、気圧、気温などのような大気の物理特性の調査
 2)大気を構成する成分の存在比の調査
 3)大気の化学組成と光化学作用の調査
 4)雲の物理特性、雷光の放電及び気流の循環を中心とする
   タイタンの気象観測
 5)タイタンの表面の物理状態、形状及び組成の調査

 ホイヘンスは、球形の頭部と円錐形の尾部を持つ直径1.3mの下降機である。ホイヘンスには、耐熱防護シールドが取り付けられている。この防護シールドは、降下速度を当初の秒速6kmから約2秒後に秒速400mに減速して、タイタンの大気との摩擦で生ずる激しい熱からホイヘンスを守る。降下を続けパラシュートが展開されると、防護シールドは捨てられる。ホイヘンスは大気の中を浮遊しながら観測を行なう。ホイヘンスには搭載される科学機器は、熱分解器、カメラ、スペクトル放射計、ドップラー風計測器、ガスクロマトグラフ・質量分光計、大気構造測定器及び地表の科学測定装置である。

 タイタンは直径5150kmの土星系最大、太陽系で木星の衛星ガニメデに次ぐ大きさである。惑星の水星より大きい。大気は厚さが200kmと濃密で、成分は窒素が最も多く、メタンとアルゴンがこれに次いでいる。この地球の原始大気に含まれた気体を含んでいるので、タイタンの大気は、ほぼ40億年前の原始地球の大気が封じ込められていると考えられている。こうしたことから、ホイヘンスの探査で、原始地球の大気の実態が明らかにされるであろうとの期待がされている。21世紀初頭の重要なミッションである。