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バイキング・ランダー |
バイキング・ランダー
バイキング・ランダーは、アルミニュウム製の1.09mの長辺と56cmの短辺が組み合わせた6角形の構造をしている。科学機器類はランダー本体の基部の上に据え付けられている。電力は主に、出力60Wのプルトニウム238を原料とする2基のRTGにより供給される。電力使用のピーク時には、4基のニッケル・カリウムの再充電が可能なバッテリーが使われる。
ランダーの推進、降下および軟着陸には、モノメチル・ヒドラジンの一薬推進剤が使われた。ランダーの制御は、慣性指示装置、4基のジャイロ、空気抵抗減速機および最終降下・着陸レーダーにより行われた。また、地球と直接交信できる高利得アンテナと全方位性の低利得アンテナが装着されている。データは40メガバイトのテープレコーダに蓄えられる。ランダー搭載のコンピュータは、指令に対応する6000語の記憶容量を持っている。
打上げの10ヵ月後の1976年6月19日、バイキング1号は火星の軌道に到着した。6月21日、オービターは火星の周回軌道に入った。最初の1ヵ月は、軌道上から火星の表面を撮影してランダーの着陸に適した候補地の探索に充てられた。1976年7月20日、オービターから切り離されたランダーはクリュセ平原に着陸した。

クリュセ平原の日没 |
バイキング2号は打上げの11ヵ月後の、1976年8月7日に火星軌道に到着した。着陸地点は、バイキング2号のオービターと1号のオービターが撮影した画像をもとに決定された。9月3日、ランダー2号はユートピア平原に着陸した。
オービターにはそれぞれ2基のカメラが装着され、火星全域を150〜300mの分解能、更に8つの地域を8mの分解能で撮影した。オービターには水蒸気の分布を調べる赤外線分光器、温度分布を調べる放射計も装着されていた。オービターは、1号が1977年2月に火星の衛星のフォボスを、2号は1977年10月にデイモスを撮影した。
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衛星フォボス |
衛星デイモス |
ランダーは降下中に大気を観測し、降下後は表面の撮影、地表の物理特性、気象観測、土壌の化学組成の分析、磁性特性や火震の調査、さらに生命の痕跡を探す生物実験を行った。
バイキング1号のオービターは、火星を1485回周回した後の1980年8月17日に、バイキング2号のオービターは1978年7月25日、706回の周回後パワーダウンしてそれぞれ活動を停止した。オービターは合計1万6000枚の画像を送ってきた。
バイキング1号のランダーは地球の誤った指示のため、1982年11月3日に活動を終えた。ランダー1号は、不慮の死を遂げたバイキング・ミッションの画像チームリーダー、トーマス・マッチを偲んで、1982年1月にトーマス・マッチ記念基地と命名された。バイキング2号のランダーは1281火星日活動した後、1980年4月11日に活動を停止した。
バイキング・ミッションの探査により、火星は低い平原から成る北部とクレーターの多い高地から成る南部の地域に大別されることが明らかにな
また、火山、溶岩の平原、大峡谷、クレーターに覆われた地域、風により作られた地形(砂丘)など火星の特徴的な風景も明らかにされた。さらに、砂嵐、気圧の変化、両極の極冠の間を移動する大気の流れが認められた。
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南極の砂嵐
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火星の地表 |
バイキングの着陸地点の地表物質は鉄分(酸化鉄)に富む粘土で、赤く見えるのはこの成分のためである。生命の痕跡の発見できなかった。バイキング・ミッションの総経費は、ほぼ10億ドルであった。
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