『歌姫』
いつもと同じようにバスに乗る。
いつものように満席だ。
でも一つだけ違う。
後ろの方から聞こえてくる歌声。
あまりにも綺麗な歌声だった。
体の中に染み込んできて全てを癒してくれるような歌声だ。
声の主はバスの一番後ろの席に座っていた。
女子高生だった。
いつもなら聞こえるざわめきも聞こえない。
彼女の歌がバス全体を包み込んでいるようだ。
いつもなら聞こえる車外の喧騒も今日は聞こえない。
降りて行く乗客は皆いつもより元気そうに見えた。
僕もなんだか元気付けられたような気がする。
僕が降りる駅に着いた。
降りる前に僕は振り返り、一言。
「ありがとう」
すると、歌姫は笑顔で、一言。
「どういたしまして」
そして、僕は駆け出した。