『引越し』



「マーくん、あのね」
「なに? みゆちゃん」
「あたし、あしたひっこしするの」
それは突然の別れの言葉だった。
「な、なんで?」
「ママがね、たんしゅうにだから仕方ないんだって」
幼い少女の目には涙が溜まっていた。
「たんしゅうにって?」
「わからないよぉ、あ、あたし、マーくんと一緒にいたいよぉ」
少女は少年の胸に顔をうずめて泣いた。
少年も泣きそうだったが、泣かなかった。
泣かないと心に決めた。

あしたもう一度あう約束をして帰った。
笑って送ろうと決めた。
「ねぇ、ママ、たんしゅうにってなに?」
「たんしゅうに?」
「うん、みゆちゃんが言ってた」
「たぶん、単身赴任ね」
「たんしんふにん?」
「そう、パパが一人で遠くにお仕事に行く事よ」