ユーロ安

通貨統合後のユーローは、一貫して下げ基調を続け一時的に反発してもすぐそれ以上に、下落するという状況にある。
我国の金融機関等機関投資家の中にも将来のユーローに期待して、大口の投資をしたところは、その為替差損に泣いて
いる筈である。

それ以上に被害の大きいのは、欧州向け輸出の多いい企業である。 輸出企業の多くは、欧州向け輸出の赤字を他地域への
輸出の黒字でカバーしている状態であろう。

米国に比べて経常赤字も少なく、景気も比較的順調で、ファンダメンタルズでは劣らないのに、為替がこれだけ下落するのは
なぜだろうか。
一つは通貨に対する姿勢が明確でない事。
米国は「ドル高は国益である」として、終始一貫強いドルを守ろうとする姿勢を明確にしている。
これに対しユーローは、主権の在る国家の集合体であるから、或る国では強いユーローが国益に適うものであっても、他の国
ではユーロー安の方が国益につながる場合がある、ということで明確な態度を打ち出せない。
またユーローでは、原材料でも、製品でも殆ど域内で調達できるのでユーロー安は気にしなくてよかった。
むしろ域外へ輸出する場合は、ユーロー安が強い武器になるということで、ユーロー安を歓迎する風潮がみえた。
しかし域内で原材料が調達できない場合は、その逆である。  例えば最近の原油価格の高騰は欧州経済に大きな打撃を
与えた。       価格の高騰と、通貨安のダブルパンチを受ける事となったからである。

二つめは最近になって欧州企業による、大規模な米国企業の買収が相次いでおり、これは資金の流れが欧州から米国に
向かっている事となりドル高、ユーロー安の要因となる。

ユーローは原油価格の高騰により、インフレ懸念も見えてきたことから、ようやく通貨安の弊害を自覚し、最近はその是正を
目指しているが、なかなか其れが困難である。
「ドル高は国益」を標榜している米国は、ドル急落につながりかねないユーローの大幅な価格回復を望まない。
一方日本は欧州向け輸出の採算を回復させる為には、ピークから30%以上下落しているユーローを是非とも大幅に回復
させたい。
三者三様に利害が異なるからその調整は非常に難しい。

私見ではあるが”為替に対するその国の認識がどの程度のものであるか、平時から市場にアピールしておく必要がある”
と思われる。
ふだんは成り行きに任せていて、いざ事が起こるとその対策に右往左往しても遅いのではないか。


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