ドル安

ブッシュ大統領は6月2日エビアン(フランス)で開かれている主要国首脳会議(エビアン.サミット)で「米国の強いドル政策は変わらない」
と明言した。 しかしドル安修正の市場介入には「為替相場は市場が決めること」として消極的である。 昨年後半よりドルはユーロに対して一貫して値を下げており5月に入って一時一ユーロ=1.1935ドルをつけ1999年のユーロ導入後の最安値をつけた。  ドル安については、米の景気回復の見通しが不透明である、景気テコ入れのための減税等財政政策拡大に伴い財政赤字が膨張する、経常収支の赤字に歯止めがかからない、米景気の悪化を嫌ってユーロから米国に向かっていたマネーがユーロに回帰している、度重なる利下げにより米の金利が低下している、米の為替政策が変わった等いろいろの理由が囁かれている。 またユーロ当局もユーロ高をユーロが信任された証として容認、むしろ歓迎していた節がある。 さすがに当局も一向にとまらないドル安を見て、最近ではこのままでは輸出競争力に悪影響が出るとしてユーロ高修正に重い腰を上げ始めた。 欧州中央銀行が6月5日に開く理事会で利下げに踏み切るとの観測が出ている。  一方円はどうか。 ユーロに対しては一時140円近くまで下げたが、ドルについては円高が止まらない。 5月に入って我が国は一時115円台に円高が進んだため、ドル売りの為替介入を繰り返しその額は5月単月で約4兆円近くに上ると伝えられる。 この為替介入により買ったドルを我が国は米国債で運用している。他国が外貨準備に占めるドルの割合を調整しようと、米国債をユーロ債などに乗り換える動きがある中我が国だけはせっせと米国債を買い続けるという皮肉な結果をまねいている。 実質的にドルは他通貨に対して全面安にもかかわらず米国は自国通貨安を放置し、我が国だけがドルを買い支えるという奇妙な構図である。 その結果米国は国債の売却を通じて資金が流入し、市中金利の低下を招き株式市場は活況を取り戻すこととなる。 つまり米国はこのまま何もしなくても、ドル安不安さへ起きなければ為替のドル安で輸出競争力は回復し、日本の為替介入を通じて資金は流入し景気回復を助けることとなる。 ブッシュ大統領ののぞむドル高とはドル不安を起こさず、景気回復の妨げとならない程度のドル相場、つまりドルの安定を望んでいるのではないかと推察される。          
                                              

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