経済不調

中国が金融健全化を急ぐという。 金融システム安定化のため、これまで中国人民銀行(中央銀行)が行っていた銀行の管理監督部門の業務を、新たに設立する銀行監督管理委員会(仮称)に移管し、商業銀行の不良債権処理の加速や、自己資本比率の改善をめざすという。  中国が銀行監督部門の強化を目指すのは、銀行の不良債権問題があまりにも大きく、銀行自身の処理には任せておくには荷が重くなったからである。 新聞記事によると商業銀行の不良債権比率は40%にもおよび国内総生産(GDP)の44%を占めるという。 これまでにも1999年に不良債権処理会社を設立,四大商業銀行の不良債権約一兆四千億元を売却し、政府支援で処理を始めた。 しかし国有商業銀行を含む全金融機関では少なくともその2倍の不良債権を、なを抱えているといわれている。 中国が市場主義経済を取り入れる以前、国営企業は計画経済の下で財政、金融、市場参入規制等で手厚く保護され、融資を受ける際でも事実上無審査であることがほとんどであった。 それどころか融資を申し込まれた銀行はよほどのことがない限り融資を拒否できなかったといわれている。 改革開放の市場経済が導入されると、コスト意識のない国営企業は競争力を失って倒産するものが激増しており、
この倒産した企業に対する不良債権が主である。 今後も国営企業の倒産は高水準が予想され、不良債権の発生も後を絶たないものと思われる。 中国政府はWTO(世界貿易機関)加盟に際し、2006年までに銀行業務をほぼ全面的に外資に開放することを約束しており、このままでは金融サービスや経営体力に勝る外資にたちうちできなくなる。 そこで経済が好調な今のうちに不良債権の処理を徹底し、金融機関の自己資本比率も改善して、外資と対等に競争できる体力を保持させることを目指す。  新聞等マスコミは中国経済の好調な面は毎日のように積極的に報道するが、その裏にある過大な不良債権問題とか、国営企業の倒産問題とか、失業問題とかはほとんど報道しない。 好調といわれる中国経済は、低賃金と厳重な為替管理に支えられている部分が大きい。 WTO加盟に伴い外資に対する市場開放はますます進むであろうし、貿易黒字に対する為替面の圧力も強まってくると思われる。 低賃金についても生活水準の向上につれて、賃上げ要求が強まるものと予想される。 中国の競争力が現在の好調をどこまで維持できるのか注目しておこう。

次に、低迷が続くドイツ経済。 独連邦統計庁が発表した2002年の国内総生産(GDP速報値)は前年比0.2%増にとどまり、2001年に続き0%に近い低成長率が続く。 独経済は構造改革の遅れや、デフレ懸念など日本に似た点が多い。 2002年の独経済は設備投資が前年比8.4%減、建設投資が5.9%減、個人消費が0.5%減と内需が軒並みマイナス成長に陥っている。 昨年7月の株価急落で企業は設備投資の抑制や、人員削減にはしった。 これを見た消費者は将来に対する不安感から消費を抑制し始めた。 不振な内需を拡大するためには財政による支援が望まれるが、ドイツの財政赤字額はGDPの3.7%に達し財政拡大の余地はない。 ドイツもわが国と同じく経済は間接金融に頼っている。 国民の直接金融への参加を促すべく、近年株式投資に対するキャピタルゲイン課税を廃止した。 その影響で家計の保有する株式は著増している。 しかしドイツ政府は財政難から、今年からキャピタルゲイン課税を復活する方針という。 家計は株式急落による損失と、景気低迷によるリストラに怯えていっそう財布の紐を硬く締める。 個人消費の回復は当分困難であろう。 今回のキャピタルゲイン課税はそれに追い討ちをかけるものとなっている。

つづいて、米国経済。 2000年初頭まで10年にわたって好景気を持続してきた米国も、リセッションからなかなか立ち直れない。 これまで金融政策、財政政策を総動員して景気回復に努めてきたが現在までのところはかばかしい成果が得られていない。  この間12年を超えて現在もまだ進行中のわが国日本の景気低迷を反面教師に、金融政策では公定歩合を過去2年間の間に13回にわたって引き下げ、ピーク6%だった金利が現在では0.75%。 財政政策でも大幅減税のほか種々の景気対策が試みられている。 その影響で財政は単年度黒字から大幅な赤字に転落してしまった。 現在では景気対策のための金融、財政とも採りうる政策の幅が限られてきている。 そのうえイラク攻撃がますます現実味を帯びてきた現在では、米国景気の行方を細心の注意を払って見つめる必要がある。

このように主要国の経済はどこも懸念材料が山積している。 今比較的元気なのは原油高騰の恩恵を受けるロシアぐらいであろうか。

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