資本逃避

みずほ銀行.UFJ銀行をはじめ最近の銀行の株価下落は目を覆いたくなるなるような惨状が続いている。 一時は50円額面換算で株価が100円割れまで下落した都銀まである。 この水準は巨額の不良債権を抱えて、金利減免,債権切捨て、返済猶予などを受けて経営再建中の大手スーパー、ダイエーの株価をも下回る。 しかもそのダイエーは事業再建の進捗状況が計画を下回り、予定通り順調に再建できるかどうか危ぶまれている状態にある。 その株価をも下回るということは、市場の信任がいかに銀行に厳しいかをよく表している。 銀行はいかにして信頼を回復するのか。 残念ながら現在のわが国銀行は、銀行業務を放棄しているとしか思えない。 預金は集めても新たな不良債権の発生を恐れて、新規の貸し出しは慎重を極める。 銀行業務の柱である金融仲介機能は、機能不全に陥ったままである。 そのためお金が必要な部署に回らない。 今銀行がやっていることは、既存取引先の金利引き上げ、それができなければ融資の回収、これまで問題のなかった取引先についても資金回収優先、特に中小企業についてこれが厳しい。 それに不良債権償却のためには、今までのような低収益ではこれが進められない。 収益改善のためには、なりふりかまわずなんでもする。 新規貸し出しで収益改善は見込めないから、既存取引先に対する金利の引き上げ、振り込み手数料をはじめ諸手数料の大幅引き上げ、小口預金者に対する口座管理料の徴収など、つい最近では自社以外の他企業の看板とか、広告宣伝に手を貸してその手数料を得ることまで認可される見通しとか。 銀行は預金を集めて、その集まった金を有利に運用して収益を上げるのが本来の姿。 不良債権化を恐れて集まった金を、低収益の国債などで運用するのは銀行業務の放棄としか思えない。

景気低迷に伴いわが国の公定歩合が0.5%にさげられたのは、1995年9月 それ以後現在まで預金の金利低下が続いている。 元本が保証される普通預金の金利は今わずか0.001%、1年未満の定期預金はすべて0.02%。 100万円を1年定期にしても利息はわずか年300円、他行への銀行振り込み手数料にも足りない。 こんな低金利で1000万円を超える部分については元本保証のないわが国銀行の定期預金は、冷静に考えればきわめて効率が悪く、リスクの高い預金である。 しかもその預金を取り扱う銀行の信用度が低いのであれば、誰もそんな銀行には自分の大切な財産を預けなくなる。 バブル崩壊前までわが国は銀行といえば絶対的な信用があり、銀行倒産などありえないと思われていた。 だから1400兆円におよぶ個人金融資産は、低金利にもかかわらず主として国内金融機関に預金されていた。 しかしこのままタダ同然の低金利が続き、銀行の信認低下が続けば、さすがに我慢強いわが国個人資産も、為替リスクはあるものの効率のよい海外資産を求めて、資産を大幅に海外へ移転する可能性が大である。 現に外貨預金、外国証券、投資信託などによる資産運用は近年倍増ペースで増えている。 状況にもよるが悪くすれば大幅な資本逃避の可能性が無きにしも非ずである。


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