エンロン事件の余震

米総合エネルギー会社大手のエンロンの破綻は,世界の経済に大きな影響を与えた。  わが国の金融機関、特に証券会社はエンロンの発行した債券を組み込んだMMF(マネー.マネージメント.ファンド)を発行していたため元本割れ、大量解約が発生し会社トップが引責辞任に追い込まれたところもある。  不況の深刻さが一段と厳しくなる中で、金融機関の不良債権も減少の兆しがまったく見られない。  そんな中で金融商品としてはまず安全と認識されていたMMFが元本割れしたことにより、資金を運用している法人および個人に信用リスクの存在を一段と意識させる結果となった。  そのほかエンロンは電力自由化にともない、子会社を通じてわが国電力事業に参入するため火力発電所の建設を計画していたといわれる。  エンロンの狙いはわが国に新たな電力売買市場の形成を促すためと見られ、火力発電所の建設はそのひとつの手段とも報じられている。  しかしこの計画も親会社エンロンの破綻により画餅に帰した。  

エンロン事件はまた多額の簿外負債を見逃し、その結果巨額の損失を計上することとなる会社の会計処理、関与した会計事務所への不信、ひいては現在の米国会計制度の不信へと発展しつつある。  これまで米国の会計制度はデスクロージャーを徹底した、投資家の判断を誤らせない透明な会計制度として信頼されてきた。  しかし今回の事件は経営トップの判断と法解釈によっては、事実を隠蔽もしくは恣意的に増減操作できるのではないかと疑わせるものとなった。  これには米会計制度の不備、盲点を突いた会社側の会計処理も原因している。  いくら法律が整備されてもそれを運用する側が、その抜け道を探すのであれば、何時までたってもいたちごっこに終わってしまう。  最終的には経営トップのモラルが問題となる。  最近では欧米の通信会社、米国のIBMの会計処理が適切であるかどうかが問題として浮上しており、今後もその会計処理をめぐって議論の余地のある会社は続発しそうである。 米国経済は個人消費が健闘し、ようやく景気回復の兆しも見えてきたと一部では報道されている。  しかし企業会計制度の不信から株式市場は、いまだ不振から脱しきれない。

エンロン事件のもうひとつの懸念は、ブッシュ政権とのかかわりである。  今のところエンロン幹部の議会証言は、多くの幹部が証言を拒否しているおりその真相はよくわからない。

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