長期金利の上昇
2月7日の朝刊に日本興業銀行は長期プライムレートを引き上げる方向で検討に入った、と報じている。 長プラの引き上げは三ヶ月連続。 金融市場で期間の長い金利が上昇しているのを受けた動きとされている。 上げ幅は7日の市場動向を見て最終判断するが、0.15%前後となり、改定後の水準は年2.15%程度になる公算が大きい。 これは日銀が金融の量的緩和に踏み切る前の2000年11月以来の高水準。 昨年7月には1.55%まで下がっており、長期金利の上昇傾向が鮮明になってきた。
一方同じ日の新聞に、財務省が6日実施したFB(政府短期証券)三ヶ月物の入札は、約3兆8000億円の募集予定額に対して、198倍の応札が集まり、平均落札利回りはわずか年0.002%。 5日のTB(短期国債)にも300兆円近くの応札があったと報じている。
わが国金融機関は、景気悪化が一段と鮮明になる中で、償却しても償却しても一向に減らない多額の不良債権を抱えて、自らの体力も一段と消耗している。 このような状況の中では資金は有り余っていても、その運用は一段と慎重になる。 その結果資金はリスクを伴う貸し出しにはまわさず、より安全な国債で運用する金融機関が増えてくる。 つい3,4ヶ月前まで国債相場は空前の高値を呼んでおり,債券バブルが囁かれていたほどである。
しかし不況の深刻化につれて、小泉首相の主張する国債の新規発行30兆円ワクの堅持も、不況対策のため追加的財政負担を強いられるとして、その実現性が危ぶまれだした。 加えて、遅々として進まぬ構造改革、巨額の財政赤字、金融機関の脆弱性も指摘されて、わが国国債の格付けが引き下げられた。 また米国のエネルギー関連大手エンロンの円建て債券が組み込まれたMMFがエンロン破綻により、額面割れの事態が生じた。 もともとMMFは金利は安いものの安全性の高い商品として、認識されていたため、これの額面割れは信用リスクの存在を,にわかに認識させるものとなった。 そのほかダイエー救済によるメインバンクの負担増、朝日生命の経営危機、田中真紀子外相更迭による現政権の支持率低下。 それによる構造改革達成への懸念。 これらが織り込まれて株価がバブル崩壊後の安値を更新している。
これから3月決算期末、ペイオフ解禁となる4月にかけていかなる事態が発生するかわからない。 市場は信用リスクに敏感になり、資金運用はできる限り期間の短い安全な金融商品が選好されだした。 同じ国債でも期間の長いものは需要が減りつつある。
国債価格は下落に転じ(金利は上昇)、長期国債で資金を運用していた金融機関の中には含み損を抱えるところもあるようだ。 国債より格付けの低い利付金融債等は当然需要が減少し、信用リスクも加味されて、長期金利は上昇圧力のかかり易い環境となってきた。
それが今回の長期プライムレートの引き上げにつながっている。