将来人口推計
厚生労働省の研究機関である国立社会保障.人口問題研究所が5年ごとに実施する「将来人口推計」の内容が明らかになった。
前回の推計では出生率が低下するのは晩婚化に伴う一時的現象で、長期的には出生率は1.61まで回復すると予想されていた。 しかし今回の推計では女性一人が生涯に生む子供の数(出生率は)1.39どまりと予想している。 これは結婚しても子供を作らない夫婦が増えていることや、一生結婚しない女性が増えていることにも起因している。 前回の推計前後10年間、わが国はずっと不況にあえいできた。 そして現在もまだ不況の真っ只中にある。 今後この苦境がいつまで続くのかまったく見通しさえつかない。 こんな状況の中で子供をつくって将来はたして幸福に育てられるか。 将来の明るい展望のまったく見えない今、親は誰でも一抹の不安がある。
「人口推計」が低めに予想されるのもうなづける。
厚生労働省はこの「将来人口推計」をもとに公的年金制度、医療保険制度の見直しを行う。 今回の「人口推計」では生まれる子供の数は、現在の年間120万人から2050年にはほぼ半分の67万人になる。 一方2000年に2204万人だった65歳以上の人口は2025年には3473万人、2050年には3586万人に増える。 日本の総人口は少子化を背景に2007年から減少に転じ、現在の1億2685万人が2025年には1億2113万人、2050年には1億59万人にまで減少する。 総人口に占める65歳以上の人口の割合は現在の17.4%が2025年には28.7%、2050年には35.7%に高まる。 生産に従事可能な15歳〜64歳の人口は現在の8600万人が50年後には5380万人に減少する。
少子高齢化が進むと大きな影響を受けるのは公的年金や、医療保険制度。 現役世代の減少、高齢者の増加は、高齢者への給付を削減しない限り現役世代の保険料負担は増え続ける。 しかし給付内容の大幅な削減は保険制度の崩壊につながりかねない。
これまでにも制度の見直し、改革の名の下に給付の削減、保険料の値上げがたびたび行われてきた。 負担だけが重くなり、給付内容がそのつど削減されるのであれば、保険制度の意味が薄れてくる。
本格的な少子高齢化時代を迎えるにあたって、わが国は今後これにどう対処するか。 人件費が高い、地価が高い、エネルギー価格が高い、高コスト体質が進むわが国が外国との競争に勝ち残るためには、どこにでもある製品、誰にでも作れる商品を作っていたのでは勝ち目はない。 わが国でしか作れない独自な製品、わが国しか持ち得ない特殊な技術、それを活用した付加価値の高い製品、要するに他国が真似のできないような、そして誰もがほしがるような商品を開発することこそ、将来のわが国の進むべき道である。
そのためには国民一人一人が創意工夫を常に心がけ、国も民間も研究開発に最大の努力を傾けるべきである。 現在わが国は不況のどん底にあえいでいる。 国際競争力を失ったわが国企業は、何とかそれを挽回しようとして国内の製造拠点を、人件費の格段に安い海外に大幅にシフトしている。 国内でモノを生産していたのでは太刀打ちできない。 その結果わが国産業の空洞化が進み、雇用環境の悪化から失業者が大幅に増加しつつある。 最近ではかっては聖域と呼ばれていた賃金の引き下げまで実施されだした。
現在の生活のレベルを維持しつつ、外国との経済競争を勝ち抜いていくには、知的競争力の強化以外に道はない。 少子高齢化が目前に迫った今こそ、国を挙げて国民の知力向上に努めるべきであろう。 国民が創意工夫に努力を傾けるよう、国はその方策を考えなければならない。 たとえば 創意工夫を奨励するため定期的にコンクールを催し、優れた発明、優れたアイデアには国を挙げて表彰し、それに相応しい報奨を与えるとか、優れた能力のある子供は国が援助して英才教育を施す。 その結果生まれた発明発見は、やがてわが国の知的競争力の強化につながる。 特定の子供にだけ国が援助することについては反対論も多いいであろう。 しかしこれが将来わが国のためになるならば、それでもよいではないか。