信用リスクの拡大

年末をまじかに控えて景気はますます悪化する気配が濃厚である。 相次ぐ上場企業の倒産、米国エネルギー大手エンロンの破産による円建て社債のデフォルト(債務不履行)。 それを組み込んだM M F投信の額面割れ。 この影響で投信不信が広がり8兆円に上るといわれる大量の投信解約等が発生した。 このところ信用リスクを意識させられるニュースが多いい。

日銀がいくら資金を潤沢に供給しても、不良債権と、信用リスク拡大におびえる金融機関は新たに貸し出しを増やさない。  今後構造改革が進展すると競争力のない企業、生産性の低い企業等足腰の弱い企業は市場からの退出を要求される。  これに伴って企業整理、倒産も著増するであろう。  倒産の増加は一段と金融機関を萎縮させ、融資態度を慎重にさせる。 資金がダブついていてもこれを貸し出しにまわさない。  つまり金融仲介機能の低下、不全となる。  こうなると健全な企業でも必要な資金を調達できなくなる。
特に間接金融に頼るしかない中小企業にとって、今後の資金繰りは一段と厳しくなることが予想される。
一方直接金融で資本市場から資金調達することができる大企業でも、このところの信用リスク拡大で、市場がリスクに敏感になり格付けによっては希望する条件での起債ができず、起債を断念する企業も増加しつつある。 信用リスクは企業のみとは限らない。 最近
日本国債が海外の格付け機関から格下げされた。  一時財政危機にあえいでいたイタリアにも劣る先進国で最低のレベルである。  経常収支黒字国、世界でもトップレベルの1400兆円にも及ぶ個人金融資産を有し、外貨準備高も長年世界一の座を守り続けているわが国にとっては、信じられないような低格付けである。
しかしこの低格付けは、現在わが国のおかれている経済状況についてなされたもの。  10年を超える長期にわたる景気低迷、しかも最近はそれがますます悪化しつつある。  金融機関は多額の不良債権に苦しみ、いつこれが解消できるか見通しさえつかない。
日銀がいくら金利を下げても、資金をいくら供給しても景気は一向に回復しない。  財政もこれまでの景気対策のため、赤字国債を発行し続けてこれ以上赤字を増やせない危機的状況である。  産業の国際競争力も低下している。 国内でモノを生産していては外国に太刀打ちできないとして、生産拠点をどんどん海外に移している。  国内産業の空洞化が起こりつつある。  事実産業の国際競争力を示す貿易収支は黒字額が最近は月をおって減少しており、このままでは貿易赤字になるのも遠いい将来ではない、と予想する人もある。
このような状況では日本国債の低格付けもやむをえないように思われる。 わが国は過去の栄光におぼれて、これまでの蓄積を食い潰すだけの老大国になるのであろうか。

バックナンバーに戻る

トップページに戻る