ヘッジファンドのカラ売り

た銀行株が年初来の安値を更新しつつある。 ヘッジファンドによるカラ売りの格好の標的になっているようだ。
米国テロ事件発生以後景気の一段の悪化が懸念される世界経済の中で、わが国の経済は長期にわたる景気低迷に加え、更なる景気下落が予想される。  銀行は不良債権の際限なき拡大、保有株式の大幅下落による巨額の評価損、ペイオフ解禁を5ヵ月後に控えて、懸念される信用不安をいかにして解消するか等難題が山積している。 このため株式市場ではカラ売りの絶好の目標になる。

先日の新聞によると東京市場で貸し株取引が急拡大している模様である。 海外のヘッジファンドによる借株の需要が増加し、これに対する貸し手として国内の信託銀行、生保、損保等の機関投資家が保有する株式を、証券会社などの仲介により用立てているようである。 ヘッジファンドはこの借りた株で大量のカラ売りを出し、値段が大幅に下がったところで買い戻す。 この売値と買値の差額が彼らの利益となる仕組みである。 このカラ売りにより株式市場が実態以上に売り込まれ、株安の原因になっているとしてこれまでにも貸し株規制論が幾度となく浮上している。  現在のわが国は資金の運用難から、金融機関が日銀に開設した当座預金口座には、利息を生まない資金が大量に滞留している。 金融機関はこの資金を少しでも有利に運用しようとして、海外のヘッジファンドに資金の運用を委託するようになった。

資金の出し手がわが国の金融機関で、運用により巨額の利益をあげるのが海外のヘッジファンド、カラ売りするための株を提供するのもわが国金融機関、そして保有株の値下がりにより巨額の損失を被り苦しむのもまたわが国金融機関。 なんとも納得のいかない話である。
わが国金融機関は結果的に自分が苦しむために、わざわざ海外の投資家に資金と株を提供していることになる。 一つ一つの行為は自己の利益を追求するための商行為として、適正な行為であるが、全体としてみるとなんとも奇妙な結果となる。

また巨額の不良債権に苦しむわが国金融機関は不良債権の増加を恐れながら、ある意味で実態の知れないヘッジファンドに資金の運用を委託するというリスクの大きな取引をしている。
数年前米国で経営陣にノーベル経済学賞を受賞した経済学者2名を擁し、金融工学を駆使して効率的な資金運用で、世界の金融機関の信頼を得ていたロングターム.キャピタル.マネージメント( L T C M )というヘッジファンドが倒産した。 この事件で世界の名だたる金融機関が大きな損害を被ったのはまだ記憶に新しい。 ヘッジファンドで資金を運用することが、自分で資金を貸し付けて利息収入を得ることより、リスクが少ないかどうか異論のあるところである。

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