銀行9月中間決算

本年9月末の平均株価は9,774円で終わった。 わが国上場会社の多くが9月を中間決算期としているが、これらの会社は9月末の株価を基に保有株の評価を行わなければならない。 中でも持ち合い株の多いい銀行は、9月末の株価が損益に重大な影響を与える。
米国のテロ事件発生直後の株価からは多少回復しているが、平均株価が一万円を割る水準は銀行にとって大変厳しい決算を強いられる。

保有株の含み損が最も少ないといわれていた東京三菱銀行は、連結決算で最終損益が700億円の赤字になる見通しと発表した。
保有株の減損処理(強制評価減)として4100億円を計上したためである。  健全度が最も高いと評価されている東京三菱銀行ですらこの状態であれば、他行は推して知るべしであろう。

銀行はこの低金利、資金の運用難の時代に、営々として溜め込んだ業務純益を株価の下落によって一挙に失い、逆に赤字に転落することになる。  リストラによってコストを削減し、血のにじむ思いで溜め込んだ業務純益が、自己の努力だけではどうにもならない株価の下落によって一瞬のうちに消え去る。 なんだかむなしい思いに駆られる。  このような悲劇を繰り返さないためにも、銀行の株式保有は極力減らさなければいけない。

つい最近の新聞に都銀大手行が、配当原資に法定準備金の取り崩しを検討と報じられている。 不良債権の査定厳格化と株価下落により損失が膨らみ、このままでは配当原資が枯渇する恐れがあるという。  都銀大手行は東京三菱銀行を除いて軒並み公的資金の資本注入を受けている。 配当ができなくなると政府が購入した優先株への配当も不可能となり、政府の議決権が発生する事態となる。 いわゆる銀行の国有化である。 これを回避するため、法定準備金を取り崩して配当原資に当てることを検討中といわれている。
従来法定準備金は損失の処理以外は、取り崩しができなかったが今年10月から施行の商法改正により、この規制が撤廃された。
 ただ法定準備金の取り崩しによる配当は、内部留保を社外に流出することとなり、銀行の資本充実が叫ばれる中、それに逆行する最後の手段であることは間違いない。

銀行がここまで追い込まれる事態は尋常ではない。 銀行が保有するする株式は公的資金を使ってでも早急に肩代わりし、銀行経営を株価の呪縛から開放することが緊急の課題であろう。  公的資金による銀行保有株の肩代わりは、従来から検討はされていた。 
しかしいろいろ問題があってなかなか結論が出ない。 そうしている間にも事態はますます悪化しつつある。 このまま放置すれば金融システム不安となって経済的混乱はますます拡大するであろう。

バックナンバーに戻る

トップページに戻る