米国経済の暗転

テロ事件発生以後米国株式市場は、5日間連続で大幅安に見舞われた。 事件発生前9月10日の終値9,605ドルであったものが、9月21日には8,235ドルで引けており、この間の値下がり率は14%にも及ぶ。 もともと株価は軟調で8月30日10,000ドルの大台をわって以来9,000ドル代後半で推移し、度重なる利下げにもかかわらず一向に景気回復の気配が見えず、むしろ景気悪化が進む現状を映して、いつ大幅安に見舞われても、おかしくないタイミングではあった。

現在の株価はピークに比べて30%以上安い水準にあり、右肩上がりが続いてきた米国株価も完全に天井を打った感がある。 
今後の米国株式市場は景気回復の確かな兆しが見えるまで、戻っては売られ、戻っては売られる下げ相場の展開が続くであろう。 株価の値上がりによる資産効果で堅調を続けてきた個人消費も、これからは値下がり損による逆資産効果で相当な落ち込みが予想される。 GDPの6割を占める個人消費が減少し、もう一方のGDPの柱である設備投資も過剰設備から、多くを期待できない。 となると米国の景気回復は、ますます遅れる可能性大である。

それに今回のテロ事件の影響が輪をかける。  航空業界は旅客の減少に苦しみ、その上安全対策に予想以上の負担を強いられる。
保険業界もテロ事件による人的、物的被害が巨額で、その補償金額は予想をはるかに超える莫大なものとなろう。  またこの事件により消費者心理は確実に悪化しており、消費動向調査にそれが如実に現れている。

米政府はテロ行為首謀者に対する報復を明言しており、テロ行為支援国家に対する攻撃も公言している。  今後事態がどう展開するかわからないが、少なくとも政治的解決のみで武力は行使しない、とは考えられない。 武力の行使がどの程度拡大するのか。 テロ
支援国家に対する制裁ともなれば、戦争突入は必至であり、それが長期戦となると米国の経済的負担は一気に増大する。 かっての
景気拡大が続いていた時期であれば、戦費負担もある程度柔軟に対応できたであろうが、景気後退期に入った現在の米国では戦費の増大は財政負担を拡大し、長らく続いた好況により築いた財政均衡が、またまた赤字財政に転落しかねない。

経済環境の悪化を懸念して、これまで米国に集中していたマネーも米国から離れる気配がある。 最近のドル安ハこうしたマネーの動きを反映したものであろう。  株安はすでに大幅に進んでいる。 ドル安はじりじりと現在進行中である。 米国国債は現在株安と経済環境の悪化から、資金の質への逃避が始まっており価格は堅調である。

しかし戦争突入により経済的混乱が長引くと,この国債価格にも影響が現れることは必至でである。 もともと米国は経常収支は大幅な赤字である。 戦費増大から財政赤字が拡大すると、国債価格に反映されるのは当然である。  株安、ドル安、債券安が進んだときこそドルの信認が問われる。

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