日銀の量的金融緩和

8月14日、日銀が量的金融緩和の拡大に踏み切った。  12,000円の大台を大きく割り込んだ平均株価も、この措置を歓迎して一応14日には上昇したが15日以降再び連続して下落している。 日銀がいくら資金供給を増やしても、翌日物の金利を事実上0%に下げても一向に資金需要がない。

金融機関は多額の不良債権を抱え、新たな不良債権の発生を警戒して新規の貸し出しにはきわめて慎重である。 過剰債務を抱える企業側も、債務の圧縮に懸命でとても新たな融資に応じるほどの余裕がない。 また景気の落ち込みでたとえ新たに借り入れして設備投資をしたとしても、商品の需要が見込めない。

日銀の量的金融緩和の目的が、当座預金口座の残高を従来の5兆円から6兆円に拡大することにより、一段と潤沢な資金供給を実施し、金利のつかない当座預金口座の残高を膨らませることによって金融機関に、これを金利のつく企業への貸し出しに振り向けさせ、景気のテコ入れ効果を計るということにある。 しかし金融機関は前述したとおり、新たな不良債権の発生を恐れて新規貸し出しにはきわめて慎重だ。 わずかな利息収入のために多額の不良債権の発生することを恐れている。 9月中間決算を控えて金融機関のこの姿勢はおそらく変わらないであろう。  さらに今中間決算からいよいよ有価証券の時価評価が実施される。
平均株価は12,000円を大きく割り込みバブル崩壊後の最安値を更新中であり、景気後退が続く中株価が反発する材料は何も見当たらない。(下落する材料には事欠かないが)

金融機関の保有する有価証券は、一段と評価損拡大のリスクが高まっている。 ほとんどの銀行は今中間期の配当を見送ることとなるだろう。 このような状況の中で金融機関が、新しくリスクをとって貸し出しを増加させるとは考えられない。 いくら資金に余裕があっても、リスクの少ない国債等で運用し極力貸出残高の増加を圧縮するというのが、金融機関の基本姿勢であろう。

現在の我が国は景気の下支え効果を金融政策のみにしか頼れない状況にある。 財政政策は現在の危機的な財政状態からして期待できない。  というより構造改革なくして景気(経済)回復なしの旗印の下、財政政策は極力排除される方向に向かっている。

また、国債の新規発行を30兆円以内にするとの公約もある。  そうなると頼みの綱は金融政策となるのだが、その金融政策も採りうる政策はほとんどない。  金利は限りなく零に近い水準であり、現況では引き下げうる幅はごくわずかしかない。  この程度では景気回復に役立つとは到底思えない。  後残されているのは金融の量的緩和しか考えられない。
しかし、これ以上量的に金融を緩和して資金供給を増やしても需要がついてくるのか。  今でさえ余裕資金はリスクの少ない国債投資に大半が回っており、景気回復のために必要な箇所に回らない。  また国債投資がこれ以上増えると、金利が上昇に転じた場合金融機関は莫大な国債の評価損を抱えることになる。  すでに国債の価格は歴史的な高値に上昇している。  それでは経済政策はどうすればよいのか、最近ではインフレ目標論が取りざたされだした。

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