米、為替政策を変更か

クリントン政権時代「強いドルは国益」を標榜して世界中から投資資金を呼び込み、長期にわたって繁栄を続けてきた米国経済も、昨年後半からの景気減速は急で最近では、実質的な景気後退(リセッション)の様相を呈している。
なかでもIT革命を旗印に過剰投資を続けてきた情報通信分野は、その影響が深刻で在庫過剰からその立ち直りは来年下期になる、と予想され始めている。

前政権時代、金融界出身のルービン財務長官の下、一貫してドル高政策を維持し、時にはドル高のため競争力の減退した産業界との摩擦もあったが、強いドルが世界の資金を吸収して株高を演出し、高い経済成長を遂げてきた。

しかし景気減速が急な米国がこのままドル高政策を維持出来るのか。   好景気が続いたからこそ米国に世界の資金が集まってきたもので、景気後退(リセッション)ともなるとこのままドル投資が続くとは思われない。
それと金利面でも年初からの度重なる利下げにより、物価上昇率を除いた実質金利で、もはや高金利通貨の魅力は色あせつつある。
事実表面金利ではユーロの逆転を許している。   景気悪化の続く米国に、金利面でも魅力がなくなると資金はドルから逃げていく。

これまで10年を超える好景気にひかれて集まってきた投資資金も、景気後退が確実になると今まで目をつぶってきた膨大な経常収支の赤字に目が移り、過剰債務国としての米国に焦点が当たる。
現ブッシュ政権はどちらかというと、産業界よりの政策を支持し、前政権の金融界よりの政策と一線を画している。
ドル高は産業界の輸出競争力を奪う。  景気減速で輸出に活路を見出したい産業界はこれまでドル高政策を批判し続けた。 現在のところブッシュ大統領は、ドル高政策の転換を明確にはしていないが、これまでの「ドル高は国益」から「ドルの価値は市場が決める」との表現に変えている。  かってはドル高支持者が圧倒的だった経済界もいまやドル高支持者は少数派といわれる。

このような内外の情勢からして米国の為替政策転換は、その可能性が高いと思われるが、その際最も注意を要するのはドル安即ドル暴落に至らない慎重な政策転換である。   現在の米国は景気減速が急で、リセッションの恐れさえある。 それを映して株価も低迷している。  累積した経常収支の赤字は巨額であり、世界一の累積債務国であることは紛れもない事実である。   これらの諸条件を勘案するときっかけしだいでは、ドル暴落の危険性もないとはいえない。  世界経済安定の上からも為替政策の転換は慎重を期してもらいたい。

バックナンバーに戻る

トップページに戻る