経常赤字と財政赤字

経常赤字大国米国は、長期にわたり好景気を維持し、その間に巨額の財政赤字を償却、いまや財政黒字国に変貌した。
片や経常黒字国筆頭の日本は、バブル崩壊後多額の不良債権に苦しみ、いまだ不況を脱しきれない。   この間景気刺激の為国債を
多発し財政赤字は、いまや危機的状況にある。


一般的常識からすると借金大国が、繁栄を謳歌し債権国が不況に苦しむ、ということ自体が理解しがたいのに、世界一の債権国の国債の格付けが、経常赤字国の国債より劣るということも納得し難い。

格付けの視点を何処に置くかによって、評価は変わってくるのだろうが、恐らく日本の格付けは、巨額の財政赤字に対する将来の不安
を、反映させたものであろう。
それでは米国はどうか。
このまま好況はずっと続くのか、最近唱えられているニューエコノミー論なるものは、「IT革命の進歩により生産性が向上し、これまでの
ような景気の変動はなくなる」 と頗る楽観的である。


果たしてそうであろうか
げんに原油価格が高騰し、それがコストに跳ね返って企業の収益が圧迫されつつある。
またユーロー安による、欧州向け輸出の競争力が減退している等の懸念材料もいろいろある。
其れにも増して重要なのは、今後経常赤字が減少する可能性があるかどうかということである。


この件に関してはいささか悲観的である。
もともと米国は過剰消費の国であり、GDP(国内総生産)に占める消費の割合は非常に高い。  旺盛な消費が、好景気を維持する原因の一つである。   消費が止まれば景気は悪化する。
景気が悪化すれば、これまで米国に向かっていたマネー逃げてゆく。
急激なマネーの逃避はドル不安をひきおこす。  だから逆説的にいうと、これまでのように世界中からマネーを引きよせるためには、
景気を悪化させられない。
消費を抑制できなければ、経常赤字も減少しない、ということになる。


日本も米国も決して楽観できる状況にない、ということでは立場は同じである。
今後この状況をどう改善していくのか、政策担当者の責任は重大であるとともに、その力量が問われる。


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