特許収支の黒字

先日の新聞に”日本の特許収支が2001年に初めて黒字転換する見通しになったと報道されている。   海外から受け取る特許使用料と海外に支払う使用料の差額である特許収支は、これまで赤字が続いてきたが昨年は赤字幅が前年の半分に急減している。
近年は受取額が過去5年間に倍増したのに対し、支払額はほぼ横ばいで推移し赤字幅が年々縮小する傾向にあった。

先進国で特許収支が黒字となっているのは米国と英国だけで、中でも米国の黒字額は毎年200億ドル以上にのぼっている。
特許収支の黒字は日本の技術の国際競争力が高まっている事を示している。

しかし今後も特許収支の黒字がこのままずっと定着するかについては疑問がある。
研究、技術の国際競争力を培う教育の面で我国は、米国などの知力向上と逆の方向に向かいつつある。  「ゆとり」「個性化」をすすめる日本の教育は、来春から小、中学校の教育内容を三割削減する新しい学習指導要領が実施される事となる。  今でさえ大学生の学力低下が産業界で問題視されているのに、これ以上の学力低下を招く教育内容の三割削減は、将来我国の知的競争力の衰退をもたらしはしないか。

高コスト体質の進む我国は、モノ作りにおいてすでに競争力を失いつつある。  例えば最近付加価値の高いデジタル機器の生産を国内から海外に移す動きが急増している。  従来日本のメーカーは技術的に汎用化した製品を海外で生産し、国内では付加価値の高い先端的な製品を生産する分業体制をしいて来た。    しかしデフレによる長期不況と韓国、台湾を始めとするアジア企業の技術的進歩により国内外での競争が激化し、先端的製品でさえコストの安いアジアへの生産移管が進んでいる。   つい最近発売されたばかりのデジタルテレビでさへ海外生産の動きがある。 

こうした動きは国内産業の空洞化を益々推し進める。   我国の生き残る道は高いコストを吸収できる新製品の開発研究しかない。
知的競争力の強化こそ我国の進むべき道ではないか。
我国の教育制度はこの知的競争力の弱体化に向けて走りつつある。  十年を越える長期不況の中でまだ「ゆとり」とか「個性化」にこだわる我国教育政策指導者の現状認識は甘すぎるのではないか。

生活の安定あってこそ「ゆとり」も生まれるのである。

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