セーフガード(緊急輸入制限措置)

最近我国でもセーフガード(緊急輸入制限措置)発動を、要請する動きが急である。  デフレ不況が続く中、ただでさえ売上不振で困っているのに、安価な輸入品が大量に流入して価格競争を一段と激しくする。
業界が困却しているのはよく理解できる。

しかし高コスト体質が進む我国で、輸入制限によって一時的に輸入を抑制しても、限られた期間に業界のコスト競争力は回復するのか。
我国の人件費は世界最高水準にある。 電力、ガス等動力源も他国に比し決して安いとはいえない。 土地の価格も相当下落したとはいえ、先進国の中でもまだまだ高レベルにある。 これらを使用して生産される製品は、いくらコストを下げようとしても限界がある。

消費者の立場から言えば、品質が良くて安ければ国内産であろうと、外国産であろうと関係ない。  だから安価で品質の良い輸入品は歓迎される。  業界保護という名目で、輸入制限をする事が日本にとって得策なのかどうか。

我国は今10年を越える長期不況に苦しんでいる。 この不況を乗り越えるには、コスト競争力の無い非効率の分野から、成長力のある分野へ産業構造を改革していく構造調整は、避けて通れない道である。  残念ながら今セーフガード発動を要請している業界は、競争力の不足している分野が殆どである。
輸入制限をしている間に、品質を改善して消費者に受け入れられる製品が出来るか。  輸入制限が解除されても輸入品に太刀打ちできる、品質、価格を提示できるのか。  いつまでも国の保護に頼っているわけには行かない。

それともう一点忘れてならないことは、余りにセーフガードを多発すると、外国から保護貿易主義とみなされ報復を受ける可能性が大である、ということである。
我国は世界一の外貨準備を有する貿易黒字国である。  その我国が国内産業を保護する為、輸入制限を数多く設ける事は国際的に見て看過できない問題である。
自由貿易主義の恩恵を受けている我国が、他国の輸出を阻害する制限を数多く設ける事は、如何なる事情があるにしろ外国には手前勝手としか写らない。

自由貿易主義こそ我国の生きる道である。   その我国が保護貿易に走ることは自分で自分の首を絞める結果になりはしないか。


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