金融仲介機能の低下

現在我国の銀行は、不良債権問題から金融仲介機能が著しく低下し、いくら日銀が資金供給を増やしても、必要なところに資金が供給されない状態に陥っている。  銀行はいくら手元資金が潤沢であっても、それをリスクをとって貸し出しに回さない。 構造的にリスクのとれない状態に陥っている。 つまり新規融資した資金が又不良債権化することを恐れているのである。  それほど不良債権問題は銀行の重石になっている。  不良債権問題が抜本的に解決されない限り、この状態から抜け出せないであろう。

健全な企業が資金調達の必要があるのに、銀行側の事情で調達が出来ない。 つまり銀行機能が麻痺しているということである。
現在我国の銀行は、株と土地という価格下落リスクの大きな資産を大量に抱えている。   株は主に持ち合い株として、自己資本を優に上回る金額を、土地は融資の担保として、融資に見合う(融資実行当時の)膨大な土地を抱えている。

今年3月末の平均株価は13,000円を僅かに下回る水準で終わった。  この株価水準では殆どすべての銀行が、含み損を抱えた状態に陥っていると思われる。  3月期決算ではまだこの株価が決算書上に反映されないが、本年9月の中間決算から、いよいよ所有株式の時価評価が始まる。  そうすると含み損は一挙に決算書上に、評価損として計上しなければならなくなる。  現在含み損の大きな銀行は、大赤字となり無配どころか自己資本を食いつぶす結果になるだろう。

銀行が株を所有するということは、毎期末、株価水準によって決算の数字が大きく変動する事となり、業務上の利益より株価水準が銀行の利益を左右することとなる。  こういう状態は大変不安定であり、銀行にとっても望ましい状態とはいえない。  米国でも銀行の持ち株は原則禁止されている。  我国でも銀行の持ち株は制限されるのが確実である。

現状では銀行は、不良債権に加えて株価水準によっては、有価証券の評価損が大きく膨らむので、ますますリスクをとって新規融資することに慎重になる。  更に、現在は正常債権であっても景気低迷が続く現状では、いつ返済が滞り、利払いが出来なくなって、破綻懸念先債権に変るかわからないという不安もある。

破綻懸念先債権になると、これまで融資の担保として提供された土地の評価の見直しが必要となってくる。
融資の担保として提供された土地は、融資を実行した時点では評価が適正であったかもしれないが、毎年毎年地価が下落する現状では大幅な担保不足になる可能性が強い。

このように株と土地で、評価損が拡大する傾向が顕著な現況で、銀行はとても新しくリスクを取って貸し出しを増やすわけには行かない。
だからいくら資金がだぶついていても、新規融資に回さないで利幅は薄いが、リスクの無い国債等運用する事となる。

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