不良債権処理

バブル崩壊後の日本の経済は、いくら低金利を継続しても、いくら財政政策で景気を刺激しても一向に持続的な景気回復軌道乗らない。  これは何故なのか。  この原因はいろいろ考えられるが、最も大きな原因は抜本的な不良債権の処理が、進まないからであろう。

我国の金融機関はバブル期に不動産、建設関連、流通関連企業等に莫大な融資を行ってきた。   当時は財テクとかリーデイングとか言われ、企業も個人も株に、土地に、本業をほったらかしにしたマネーゲームに狂奔した。上場企業は時価発行増資とか、転換社債、ワラント債等を発行して、争って資本市場からコストの安い資金を取り入れ、その上銀行からも多額の借金をして不動産や株に投資した。
そのころは財テクをしない財務担当者は無能呼ばわりされた時代であった。

しかし極端に上げた相場は、谷もまた深い。 バブル崩壊後10数年経過した今も、土地も株価も最安値圏で低迷している。  高値デ買った企業や個人は、少し株価が戻すとすぐ大量に売ってくる。   このため株価は上に伸びきれず天井を打つ。  又下値を模索しながらようやく戻してくると、又売りが出てくる。  この繰り返しで最近では天井がだんだん切り下がってきている。

しかもバブルの後遺症はなお根が深く、最高値で買った株をいまだ処分できず保有したままの投資家が沢山ある。  この株とか、土地が不良資産である。    取得の為要した資金は借入金としてそのまま残り、利息の支払いを続けなければならない。  一方取得したした資産は取得時の半値以下に下落している。   しかもこの資産は資金が固定化してしまって、企業活動に何ら有効利用できない。

この利息の支払いとか、借金の返済が出来ない企業が持つ資産が、不良資産であり、この企業に融資した金融機関が持つ債権が所謂不良債権に該当する。

こういう状況の中で金融機関は、バブル崩壊後金融監督庁が設置された1998年頃まで、不良債権の顕在化を恐れて利払いの為の資金の追い貸しを続けてきた。  この追い貸しが更に不良債権の増加につながるのである。  貸せば貸すほど回収の見込みの無い不良債権が増え、金融機関の体力が消耗する。  まさにこういう企業への融資は、資金をブラックホールへ注ぎ込むようなものである。  いくらでも吸い込む。 そしてこのお金は二度と戻ってこない。

一定限度までの融資は、銀行が企業を支配するが融資が巨額になってくると、企業が銀行を支配する、と言われているが、これはまさにその典型である。

我国の金融機関がもっと早く断固たる姿勢で、不良債権処理の方針を決断していたら、一時的な痛みは伴うものの、ここまで体力を消耗せず済んだであろう。  そして金融システムの不安が懸念されるような状態も起こらなかったであろう。

時機は多少遅きに失するかもしれないが、今後は痛みをを伴っても不良債権は断固として処理するべきである。  それを逡巡すると又次の10年も成長なき10年と化する。

バックナンバーに戻る

トップページに戻る