円安は国益

予想した通り米国は新年早々利下げに踏み切った。   新年2日の株価急落を見てFRB(連邦準備理事会)は臨時のFOMC(公開市場委員会)を開いて翌3日緊急利下げを実施した。 これを好感して米国株価は急騰し、他の欧州、アジア諸国の株価も大幅高となった。
しかし日本の株価はこれに全く反応を示さず、続落して終わっている。   これをみて市場では改めて日本の景気の先行き、不良債権問題に懸念を抱き為替が大幅な円安に振れた。

昨年12月初旬より円安傾向が目立ち始めたが、平均株価が一万4000円割れになってから余計それが顕著になってきている。
海外の投資家が日本の景気回復に疑念を持ち始めた為だろう。

しかし米国の景気減速も急である。   FRB裳緊急利下げに踏み切ったが、これだけでは治まらない様相を呈してきた。 第二、第三の
利下げ、場合によっては景気刺激の為の財政政策が必要になってくるかもしれない。
かって日本が経験し、今もその後遺症に苦しんでいるバブルの崩壊、それに似た現象が米国にも起こりつつあるのではないか。
新興のIT関連産業には倒産企業が目立っている。  これを反映してナスダックの株価もピークの数分の一になってしまった。  企業倒産が増えるにしたがって銀行の融資姿勢も慎重になり、一部にはクレジットクランチ(貸し渋り)が起きているといわれる。

昨秋からカリフォルニアの有力電力会社二社の経営悪化が深刻化し、FRBまで乗り出してその対策を協議しているが、これも政策の失敗とともに銀行の貸し渋りがあったといわれている。

このような状態からして、ドルも決して安閑としておられる状況にはないが、まだ米国には打つ手が沢山ある。  金利は現在フェデラルファンドが6%、公定歩合が5.5%であり、臨機応変に引き下げる余地が充分にある。 財政も黒字化していて財政出動にも余裕がある。
これに対し日本は財政は大赤字、金融政策は最低金利だから、あとはゼロ金利に戻すぐらいしか方法が無い。
このような状況から円はドルに対して強くなれない。  ドルは景気失速懸念からユーロより強くなれない。 又欧州から米国への直接投資も一段落しているので、この面からもドル高は期待できない。

結局現在の通貨は景気が比較的堅調なユーロが一番強く、円は最弱ということになり、この状態はしばらく続くであろう。

では現在の円安は日本にとって悪いことなのか。  答えはノーである。  前述の通り日本は今、景気対策としてとりうる手段が極めて少ない。  この円安こそは日本にとって願っても無い景気対策になりうる。  今まで日本はユーロ安に泣かされてきた。
欧州への輸出の採算悪化に苦しんできた企業にはカミカゼである。 また今後のユーロに期待して、投資してきた機関投資家にとっても
大きな福音となっているはずである。

宮澤財務大臣も円安対策を問われて「放っておけばよい」と答えている。  経常黒字国日本の財務大臣として、立場上「円安は国益」
とは言えないであろうが、これは日本にとって何よりのプレゼントなのである。 間違っても為替介入等によって人為的に円安を阻止すべきではない。  為替は市場に任せておけばよい。

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