エンロンの経営危機

米エネルギー大手エンロンの経営危機が表面化したのはまだ最近のことである。  FRB(米連邦準備理事会)は11月6日今年10回目の金融緩和に踏み切った。 この利下げ決断の足元には「米金融システムの亀裂がのぞく」と11月11日付け日本経済新聞は報じている。

全米の電力、ガスの卸売り取引の四分の一のシェアを占めるエネルギー最大手エンロンが経営危機に陥り、株価は釣瓶おとしに暴落、コマーシャルペーパの発行もままならない流動性の危機に見舞われたのだ。
同社は簿外取引によって、投資会社との不明朗な取引により、低格付けを高株価で補って急成長を遂げたきた。 高株価の仕掛けが、簿外の投資会社を使った決算のかさ上げ。 不明朗な取引による巨額損失を機に、SEC(米証券取引委員会)が調査に乗り出した。 金のなる木の種が明かされたことにより、同社株は10月中旬の30ドル代半ばから11月初旬には7ドルまで下落した。
一旦は、同じエネルギー大手ダイナジーが救済買収することで合意したが、今日(11月29日)の夕刊を見るとこの買収が破棄されている。  ダイナジーがエンロン買収を決めたのは、合計25億ドルの資本注入でエンロンの信用不安に終止符が打たれ、同社買収がダイナジーの規模拡大と将来の発展につながるとみたため。 ところが買収合意後、新たな追加負担が生じることが発覚、これを嫌ってダイナジーが合意を破棄したもよう。   エネルギーなどのデリバティブ(金融派生商品)取引の想定元本は200億ドルに上ると報じられており、これを資金面で支えてきたのがJPモルガンなどの一流金融機関。  エンロンのケネス会長はブッシュ大統領とも近いといわれている。

もしエンロンに万一のことがあれば、エネルギー供給や金融システムに動揺が走るばかりでなく、米政権にも大きな打撃になりかねないと報じられている。  同社が破産するようなことになれば、米国だけでなく我が国でも円建て社債を発行しているためそのえいきょうは、日本の投資家にも及ぶこととなる。  エンロンの今後の成り行きは重大な関心を持って見つめる必要がある。

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