湖北町を意識し始めたのは芝木好子さんの
【群青の青】を読んだ印象が、あまりにも
美しい表現だったからと記憶する。
私にはあのように感じたままの表現が出来ないので、
作品からお借りしてここに記させていただきました。
北の湖にしんしんと雪が降るとあたりは白い紗幕に蔽われてゆき、群青の湖のみは白いあられをのみこみながら、昏い湖底へ沈めてゆく。雪が止み陽が射すと、雪でふちどられた湖は蘇って、
いよいよあおく冴えかえる。
長浜を過ぎるとあたりは鄙びてきて湖面は広がり、竹生島が見える。 眺望が深山へ入るように変わってゆくのを知った。
湖に魞(えり)とよぶ魚を追いこむ竹簀が見えて、絵のようであった。
奥琵琶湖の秘した湖は、一枚の鏡のように冷たく澄んでいる。紺青というには青く、瑠璃色というには濃く冴えて、群青とよぶのだろうか。太陽の反射が
湖面を走る一瞬に、青が彩りを変える。
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