李世祥

藤永田161 〔李彦啓(甥)の証言、2007年2月23日付けの手紙〕

 ・私たちの伯父が日本に拉致されて以後、六十年余りの間、私たちのもとには何の連絡も届いてはいない。親の世代の人たちから聞いたところでは、私たちの地域で拉致されて日本に連れて行かれた王同標という人が郷里に戻ってから、伯父の李世祥は日本で亡くなったと言っていたということだ。伯父が拉致されたとき、祖父母にはなすすべがなかった。一介の農民は、苦汁を飲まされても腹に飲み込むほかはなかったのだ。祖母は息子を思うあまり、それからしばらくして亡くなった。その五年後、祖父もなくなった。そして伯父のことはそのままになってしまっていた。