単愛金さんからの手紙

 兄と一緒に仕事をしていた人に,隣村の高家坡村に住む高福冬(すでに病没しています)という人がいました。
 あのとき高福冬が兄に言いました。『日本兵が捕まえにやってくるぞ。早くここを離れよう』。兄は言いました。『君は先に行け。僕は明日にする』。高福冬はその日のうちに井ケイの生家に逃げ帰りました。そして兄はその翌日,駅を離れるのが間に合わずに,日本兵に捕まって連れて行かれたのです。
 高福冬は家に駆け戻ってすぐに,そのとき起こったことを私たちに知らせてくれました。私たち家族は知恵を絞り尽くしました。あちこちに聞き回った末,ようやく兄が石家庄の南兵営に入れられたことを知りました。私たちはそのとき,親戚を頼ったり友人に頼み込んだりしましたが,結局兄と一目会うこともできませんでした。
 あとになって人から聞いた話では,捕まった人たちは全員日本に連行されてしまったということでした。そののち,何の音さたもないまま月日が流れていきました・・・。
                (04年4月2日の手紙)