武双全さんの証言

 私の家は全部農民でした。実は私の兄は当時の共産党の抗日根拠地の村の幹部だったんです。兄はある日突然日本軍に捕まえられました。捕まえられて定州の南門のところにある中学校に連れて行かれてたんです。すると漢好のような奴がやって来て『1千元出せばおまえの兄さんを帰せるぞ』と言ったんです。1千元と言えば当時は相当な金額です。父は家の物を全部売り払ったのですが、1千元には到底及びません。そこで親戚やら友達やら、いろんなところから金を借りて、ようやく紹介人のところに持って行くことができたんです。金を渡すと『明日おまえの兄さんを帰せるから安心して帰れ』と言われました。ところが翌日行ってみると、兄はもうどこかに連れて行かれてしまっていたんです。要するに金も取られ、兄も取られてしまったということなんです。