deepsky observation 2023 04 20

は見えたもの、は良かったもの、黄色は見えなかったもの。 見たもの  個

 


2023年4月19日 Exmouth

 昼間は快晴ではなく高層の雲があったが、それが夕日で最高に美しい色を見せていた。キャンピングカーの上に金星が見えてきたので、40pを少し移動させてとらえた。それからカノープスでしっかりと光軸を合わせた。40pのために持ってきた接眼レンズは、Ethos21mmとEthos13mm、それにnikonのNAV7mmだ。日食は13oで見るが、21oは一般観望に使う。この接眼レンズは1kgもあるので、金属製のしっかりした接眼部を作ってきたけど、昨夕組み立てようとしたらフレームにあたって付けられなかった。それで元の紙筒のままだ。
 たくさん星が見え始めた頃、南東の方から明るいライトに照らされた。聞きに行くと、しばらくしたら消すよということだったが、テレビの中継だった。我々の区域には望遠鏡がたくさん並べて絵になるので、昼間から新聞などメディアの取材が何度もあったようだ。テレビは生中継のようで、4灯の照明の中に女性キャスターが直立してリハーサルなどやっていた。
 その照明が消え、40pを覗きに来た人らとわいわいやっている頃にレストラン組は戻ってきた。行くときは明るかったけどもうすっかり暗い。懐中電灯を持っていないのにと心配してやったけどね。副島さんと合流できたNoorらはそこで夕食をとったらしい。彼らは今夜のホテルがないのでここで寝るそうだ。
 私と山口さんの夕食は、テイクアウトしてくれていた。エビ、生カキ、ステーキなどなど、、2人でそれを開き、白ワインと赤ワイン。ちょうどマイケルが赤ワインのボトルを持って現れ、飲み始めたのでそれももらう。
 ちょっと遅くなったけど、おいしい夕食を食べられた。その後は観望会続行。NGC3293,宝石箱、NGC3532,NGC3766、ケンタウルスアルファ星、イータカリーナ、ω星団など華やかな天体をやってきたオージーや海外からの人らと次々と見て楽しい時間を過ごせた。
 その間ずっと、後ろでは皆さん極軸を合わせていた。ここは南緯22度で、台形は低いうえにそちらにはちょっとうす雲があったようだ。めいめいかなり苦労していたようで、川野さんはそのフォローに回っていた。10時半ごろに観望に一息ついたので、EM10の極軸を合わせた。ナノトラッカーのために作ってきた小さな望遠鏡で台形を確かめ、その方に極望を向けた。4個のうち一つはちょっと暗いのは薄雲がかかっているのだろう。すぐに極軸を合わすことができた。
 11時ぐらいになると、あちこちの照明が落ちているのかずいぶん星が見えていた。副島さんにω星団を見てもらっていると、隣のルーシーが仲間と来たので宝石箱など見た。明日の準備は完璧にできて、24時にやはり地面で寝た。すぐ横のテントから何種類ものいびきが聞こえていた。

 

[#23]4月20日、Exmouth滞在 日食当日

 4時半ぐらいに起きた。日食の日という気分の高まりがあるかもしれないが、それより土星。昨夜の観望に来てくれた人らに朝5時に来たら土星が見えるよと伝えておいた。
 夜明け前の東の空には明るい星が2つ左右に見える。左が土星。右はフォーマルハウトでその右にはつる座がひっくり返っている。さっそく40pを向けると、とても細いリングの土星が見えた。7oで見ると、シーイングがよく、カッシーニまでしっかりと見える。それを確かめていると、マレーシアのウイリアムやアレデードからきたタラらがやってきて楽しく観望。
 南のずっと下に雲があるけどほぼ快晴。薄明が始まり、ひとみさんらとコーヒー片手に昨日のように明るくなる空を見た。
 昨日と同じようにパンとハムと果物などで朝食。そして40pをEM10の近くに持って行って、日食の用意を始めた。心配していた南に低い雲は広がってくることはなく、まったくの快晴になっていた。
 赤道儀の極軸はしっかりとセットしているので、構図がずれることはない。FC100のメインカメラの画像をパソコンの中央に合わせてから6pサブカメラの向きを調整。9時ぐらいに昨日のようにもう一度アナログ時計を11時に合わせて練習した。
 設定したとおりに時間が来ると810Aも6200MCも正しく動くことが確認できたので、6200MCの撮影シーケンスを途中で止めると、パソコンがハングしてしまった。トラブルはこれだけだったので、パソコンを再起動してカメラとの接続を確認。朝食後に美しくなっていたトイレに行ってあったが、日食のタイムスケジュールに書いているようにもう一度トイレに行っておく。

 朝から風があったが少しはゆるくなってきたようだ。10時ちょうどに部分食を撮影するカメラのタイマーをスタートした。これで810Aは5分ごとに自動的に撮影していく。10時4分に副島さんが部分食の始まりを告げた。じきにあちこちから欠けていると声が上がる。810Aのファインダーをのぞきこむと、上の方が少し欠けていた。Noorやマイケルもやってきて、このあとの日食にわくわくしているようだ。

 1時間あまり後に訪れる皆既は1分しかない。そのときは40pで見るだけであるが、その前に4台のカメラをセットしなければならない。皆既の時間が数分あるならその間にカメラを操作したりできるが、今回は1分しかないので、カメラにはさわりたくない。
 用意した4つのカメラは、望遠鏡に付けてコロナを写すカメラが2台、そして15oで1秒ごとに撮影するカメラ(5Dmk2)、それにiPhoneだ。それらを何時にどのように設定するかは、ノートに時系列にまとめておいた。手元にはiPhoneで時刻を合わせたアナログ時計とキッチンタイマーを用意して、それぞれ設定を終えたらノートにチェックを入れていった。
 10:28:47、5Dmk2の自作タイマーをスタートさせた。1時間後に1秒ごとに自動的に撮影が始まる。このカメラの露出は、露出が始まる7分ほど前に試し撮りして1/500秒とし、レンズの絞りはF2.8に開いた。10時半ぐらいにビールを冷やした。でかい方のクーラーにビールが少なかったことを思い出したのだ。
 その後11時ごろまではメインカメラ6200MCのピント合わせなど行った。6200MCは天体専用の冷却CMOSカメラだ。一般的なカメラという名前からは想像が難しいほど特殊なものだ。いわばフィルムに当たるセンサーとそれに付随した電気部品が付いているだけ。12ボルトの電源を用意しなければならないし、パソコンにつないで使わねばならない。おまけにレンズも付いていない。こんなめんどうなカメラを持ってきたのは、16ビットという映像の明暗差をとても広い範囲で一度に記録できるからだ。プロミネンスや彩層はとても明るいが太陽から離れた場所のコロナは暗く1000倍以上の明暗差がある。普通は外気温より20度ほど低い温度に冷やして使うが、今日は乾電池で使っているし、露出時間が短いのであまり冷やさない方がよいだろうと20度に設定した。カメラは買ったときに付いていたASIstudioというアプリで動かすが、5種類の露光を事前にセットしておけることがわかったので、日食に使えると2月ごろから用意してきた。0.001秒、0.01秒、0.1秒、1秒と露光を変えて撮影し、最後に0.001秒で第三接触を撮る。
 これは800ミリ望遠レンズに相当する10p屈折望遠鏡に取り付けているが、もう一台の500mmの6p望遠鏡では810Aが5分ごとに部分食を写している。それぞれ撮影時刻の30秒前になると1秒ごとに音を出し、定時には長い音がして1枚撮っている。11:09:38にそのタイマーの皆既撮影モードをスタートさせた。20分後、皆既の10秒前から多数の撮影を連写することになっている。
 11:14:30には6200MCのシーケンスをスタートさせた。15分後、皆既の少し前からパソコンが、カメラを自動的に動かすことになっている。これで主なカメラの設定は終えた。先ほどから日差しが和らいでいる。空にはどこにも雲がなく、ここまで来れば皆既日食が見えることはまちがいない。ビールを取りに行った。
 11:25:00、部分食の撮影が終わった直後に810AはBKT撮影のモードを設定した。

 iPhoneは動画で自撮り。カメラをこちら向きに変え、上に太陽、下に望遠鏡が入るように画面の向きを決めて3分ほど前にスタートさせた。iPhoneに記録された動画を見返すと次のようなものが見えた。

11:26:42 録画開始(皆既が始まる3分6秒前)
11:26:48 「あと3分」
11:27:00 「皆既日食に乾杯」と言ってビール飲む
11:27:18 ビールをパソコンの机に置く
11:27:20 「もうこちらは何も触らなくてよい」と撮影用望遠鏡の方を確認
11:28:12 iPhone指差し、「録画始めている」と確認
11:28:17 ICレコーダーの録音スイッチを押し、
11:28:32 ICレコーダーを40pにガムテープでくっつける
11:28:48 「金星見える」と指さす
11:28:50 5Dmk2の撮影がタイマーで始まる
11:28:54 FOA60のフィルターを外す。 「プロミネンス見える」と山口さんの声(感動に震えている)
11:29:02 「おーマジかー! ころな〜!」と山口さんの声は泣きそう
11:29:05 FC100のフィルターを外す
11:29:10〜29:20 40pで金星を見てピントを合わせている
11:29:26 「あと30秒」
11:29:38 「10」(副島さんのカウントダウン)
11:29:39 「9」(副島) 急速に暗くなる
11:29:48 「開始」(副島)
11:29:51 ビールを太陽にかかげ、黒い太陽を指さす
11:29:54〜58 40pのファインダーで太陽をねらう
11:30:00 40pを覗き込む 以後ICレコーダーにずっとしゃべっている
11:30:37 40pから目を離し、肉眼で見る
11:30:40 「木星が見える」
11:30:43 再び40pを見る
11:30:48 40pから目を離した
11:30:53 太陽にビールをかかげる
11:31:00 みんな拍手をする
11:31:07 ビールを飲む
11:31:25 810Aの撮影を止める
11:31:43 FC100にフィルター付ける
11:31:54 FOA60にフィルター付ける
11:32:26 5Dmk2の撮影を止める

 皆既になったときは、肉眼で確認した。とても美しい!赤いプロミネンスと彩層に縁どられ黒い太陽からコロナがどの方向にも出ていた。40pで見ると、とても明るく感じた。これまで内部コロナを見たのは10pや25pであったのでその差だろう。第一印象は、こんなに明るく、こんなにきれいなものか。ICレコーダーには次のようにしゃべっていた。

11:29:54 わーすげー、プロミネンスすごい。(ファインダーで見て)
11:30:01 うぉー、ドブで見たらすごい。(40pで見始める)
11:30:07 この突出している右のプロミネンスは明るいなあ。
11:30:11 彩層がいっぱい見えて、、
11:30:16 反対側にループがある。うわすっげー。
11:30:22 プロミネンスの細かい模様がよいなあ。
11:30:26 噴出しているのはちょっとなー、間欠泉のでかいやつみたい。
11:30:31 北の方は彩層が全部見えてきれいやなー
11:30:39 わおーすげー。(肉眼で見て)
11:30:42 近くに木星が見えるな。(肉眼で見て)

 13oの視野に見えたものは、一言では表現できない。この日食ではプロミネンスがいくつも見えてよかった。大きな噴出する間欠泉のようなプロミネンスはピンク色に明るく光り、グロテスクなほどに目立っていた。その左に見えた小さなものの微細構造がよかった。離れてループをなすものも。コロナの筋模様や彩層も見えたが、とにかくプロミネンスが鮮烈だった。
 40pで見たのは37秒間。その後肉眼で一度見たとき、太陽の左上に星(木星)が見えた。再び40pを見たが、数秒で紅に縁どられた黒い太陽の3か所から鋭い光が出てきたので目を離した。

 一斉に拍手が起こり、興奮に満ちた声が飛び交った。成澤さんは泣いていた。山口さんもたぶん。副島さんがシャンペンを開けて皆にふるまう(11:55)。美酒を味わい、しばらくは感動を話し合っていた。
 部分食は1時過ぎまで続いているが、皆既が終わってから810Aの露出を部分食用に変えたので、前半と同様にタイマーが5分ごとに撮っていた。撮影に成功した機材をスナップし、あちこちで皆で集まって記念写真。どの顔も笑っている。

 我々B班は、この日もここに滞在だからとてもゆっくり。Carnarvonまで移動するA班はすぐに片づけて行ってしまった。中央に停めていたキャンピングカーも無くなり、広くなった場所を100%光を取り戻した太陽が照らす。残った車の影にへばりつくようにしてとりあえず乾杯し、副島カレーで昼食を始めた(13:20)。ワディーに着いた16日の夜から副島さんが作っていたもので、彼がここに着いた18日夕刻にガラムマサラがないからとわざわざ買いに行ったほどの心を込めたものだ。何日も煮込んだものでとてもうまかった。
 不思議に、この会場では皆既の時にあまり歓声があがらなかった。日食をビーチで見た人が多かったようだ。彼らは夕方にはここに戻ってきた。その頃にはあちこち雲が出ていた。この日食の時だけ快晴になったようだ。
 今朝から風が強かったため、何もかも砂まみれ。というか、赤い粒子まみれ。持ってきていた箒でそれを払うが、寝袋の中までひどい。午後は何をしていたのか記憶も記録もない。たぶん飲んでいたのだろう。17:12に撮影した写真には、車の近くに撮影用の望遠鏡を置いたままになっていることが写っているし、40pはまだ日食を見た位置に残ったままだ。そのときには隣のデンマークの人らもビーチから戻ってきていた。彼らとはあまり話す機会がなかったが、親しくなったソラマメ顔の大男は我々がDRのサイトに載っていると教えてくれた。
 夕食は残ったもので済ませたはず。おそらく副島カレー。暗くなってから、ごはんを炊いた鍋の焦げがひどく、調理場でこすったがなかなか取れなかった。これは後日、ワディーで真美子さんが3日かけてきれいにしてくれたらしい。
 40pは、組み立てたままでキャンピングカーに載せられることがわかったので主鏡だけを取り外すことにしたが、この夜に観望したかどうかは覚えていない。この夜はキャンピングカーで寝た。