〜かくれんぼ〜
太陽が東の空から昇り始めた頃、つぐみは目を覚ます
毛づくろいをすませ、朝食の木の実を腹におさめた後
明るくなり始めた大地の上を、大きな樫の木目指して飛んでいく
大きな樫の木には一匹の獣が棲み付いていた
「シイ、シイ。太陽がもう顔を出したよ。さあ、さあおきてください、朝ですよ。」
樫の木の周りをぐるりと一周しながら木のうろに眠るシイに呼びかける
「・・・うーん、まだ夜が明けたばかりじゃないか。もう少し寝かせておくれよ。Zzzz・・。」
5回程の呼びかけの後、ようやくシイの意識は浮かびあがってきた
しかし、すぐに再び夢の中に落ちようとしていた
「寝ちゃあだめだよ、今日は私と遊ぶ日でしょう。シイ、シイ、起きて頂戴。起きてくれなきゃこの嘴でつついちゃうよ。」
これを聞くと、過去の経験からか意識を覚醒させた
そして寝るわけにもいかずに慌てて寝床から飛び起きた
「それだけはやめてくれ。お前の嘴は痛くてしかたがない。」
「それなら、さっさと起きてください。」
「わかった、わかった。」
シイはぶつぶつ文句を垂れながらも手早く顔を洗い、毛並みを整えた
「さあシイ、そろそろ出かけましょう。」
それらの身支度がおわるのを見計るとつぐみは羽をばたつかせて言った
「わかった。だが先に朝飯を食べてからだ。」
シイの要求でまず先に小川へと向かいました
そこで何度か失敗しながらもようやく一匹の魚を捕まえてシイは朝食にありつくことが出来ました。
「あー、おいしかった。つぐみ、腹ごなしにあそこの一本杉まで競争しないか。」
「いいよ。だけどこの私にかてるかな?」
「何を!速さならまけないさ。」
つぐみは空を飛び、シイは草原を駆けて丘の上にある一本杉まで一直線に向かっていった
「やったね。僕の勝ちだ。」
勝負は互角。
一瞬はやく一本杉にたどり着いたシイが勝ちを納めた
「さて、これから何して遊ぶんだ?」
「うーん、かくれんぼなんてどうですか?」
「かくれんぼ?まあ、いいさ。やろう。」
「なら早速森の仲間達を誘いに行きましょう。」
「そうだな。二手に分かれて行こうか。」
そして森の一部を使ってのかくれんぼが始まった。
木の上やうろの中、洞穴などを使って見つけたり見つかったりを繰り返した。
そのうちかくれんぼに参加する森の仲間達も増え始め、賑やかになってきた。
もう、何度目か忘れたがかくれんぼの終わった頃、気付けばいつのまにか空が赤くなっていました。
夕焼けが沈んでいくのを見て、森の仲間達は一人二人と帰って行きました。
そして、とうとうシイとつぐみだけになってしまいました。
「シイ、お日様が西の空へとお帰りなさるよ。そろそろ私達も帰るとしましょう。」
「そうだな、お腹も空いたことだしそろそろ戻ろうか。」
夕焼けに染まった草原を、自分達の住処に向かって歩く一羽と一匹の姿。
明日も楽しい一日になりますように
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