吉川忠英

ヒット曲
「陽ざしの中で」「夜更けのトマトジュース」


     

 吉川忠英は,ギター弾きである。シンガー・ソングライターとしては,あまり認知されていないんじゃないだろうか。
 彼の歌を初めて聴いたのは,布施明の歌う「陽ざしの中で」だった。

             坂道を下って 走り寄る君がいた
             明け方に見た夢に 笑顔の君がいた

             季節の変わる気配に 振り返ってみたけれど
             白い陽ざしが まぶしすぎて もう君をさがせない
             もう君をさがせない

 一度聴いたら忘れられない,すばらしい曲だ。これを作曲したのが吉川忠英だった。(しかし,この曲は布施明のCDには,ほとんど収録されていないまぼろしの名曲です。ちなみに,ボクはシングル・レコードを持っています。探さないと見つからないけど)
 「ヤングソング」などで,ヒット曲のギター・アレンジの楽譜を見たら編曲者としてクレジットされていたことがある。石川鷹彦と並んで吉川忠英のギター・アレンジも多かった。

 カゴメのトマトジュースのCMソングだったんじゃないだろうか?「夜更けのトマトジュース」は。この2曲が収録された吉川忠英の,シンガー・ソングライターとしての3rdアルバムが「#29」だ。題名からして29歳の時の作品じゃないだろうか。「らぶれたあ」「おとうさんはある日」などなど名曲ぞろいのアルバムだ。編曲・演奏はカントリー・バンドのラストショウがしている。カントリー・ブルース色の強いアルバムに仕上がっていて,それがまた,いいのだ。作詞はみなみらんぼうなどが当たっている。

 このアルバムには,悲しい思い出がある。せっかく手に入れて,2〜3回聴いただけだったのに,たまたま遊びに来た友だちの連れが借りて行った,ボクは「イヤだ」と言ったのに。そしてとうとう返ってこなかった。友だちの友だちだから,名前もよく知らない奴だった。ちくしょう!

 最近,ネットで調べていたら,吉川忠英のファンの方に出会って,その方のおかげで30年ぶりに聞くことができた。何回か聴いただけだったのに,ほとんどの曲を覚えていた。やっぱり名作だ。


 丸山圭子のアルバム「黄昏めもりぃ」の中に何曲か提供している。特に「ラプソディ・イン・ブルー」では歌声も聴くことができる。太くてしぶくて,なかなかいい声だ。そしてカントリー・ブルースの雰囲気のあるアレンジは,大好きだ。ボクが,アレンジを頼むとしたら,絶対,吉川忠英だ!と思っていた。

 最近,夏川りみのアルバムを開いたら,吉川忠英がライナー・ノーツを書いていた。最近は夏川りみのコンサートのプロデュースもやっているようだ。昔はやまがたすみこのアレンジをしていたこともあり,若い女の子のフォークソング,シンガー・ソングライターには,昔から頼もしい存在だったようだ。

 ギターの弦には,ゲージ(太さ,硬さ)があって,ヘビィ(太い)を使うと弾くのに力がいる。吉川忠英の演奏について,だれかが,
「忠英さんは,ヘビィ・ゲージをライトのように平気な顔で弾くから」
と言っていたのを読んだことがある。ギターの演奏,そして音楽性と,本当にスーパー・スターなのだ。