殺意を持ったトム・リプレイ
「太陽がいっぱい」はその後のアラン・ドロンのイメージを決めた最も重要な作品ではないだろうか、 ブルジョアの友人のごきげんをとりながら、ついには殺してしまう。そしてその恋人をも我が物に・・・ 若者が貧しい現実から抜け出し、一気に夢を自分のものにしようとする野望を描いたこの作品で、単なる ハンサムな俳優から、暗い翳りと”悪”という匂いを漂わせる、素通りできない魅力あるスターへと 変貌していったのである。



殺人を犯した直後
友人の恋人に嘘をつく






監督:ルネ・クレマン
太陽と海の輝き 鮮烈な青春像 渦巻くサスペンス・・・

ストーリー
舞台はナポリ、貧乏なアメリカ青年トム・リプレイ(アラン・ドロン)は、友人で金持ちのドラ息子 フィリップ(モーリス・ロネ)をアメリカへ連れ戻すようフィリップの父親から大金を貰う条件で 頼まれた。ナポリへやって来たトムは、フィリップが婚約者マルジュ(マリー・ラフォレ)と父親の 財産のおかげで贅沢で気ままな生活を送っているのを見る。
   


あまりに自分と違う境遇のフィリップを目にしたトムは、自分を蔑むフィリップの言動、それに妬みと 憎悪も重なって、いつしか殺意を抱きはじめる・・・ある日3人はヨットで遠出するのだが、些細な事から フィリップとマルジュが喧嘩になりマルジュはヨットから降りる。・・・ヨットにはトムとフィリップの 二人だけ、、、

フィリップを海に捨てたトム

フィリップに殺意を抱いてたトムは、沖でついにフィリップをナイフで刺し殺す。その時突如と海は荒れ出し 、トムは死体の始末にも必死で、強風で海に落ちながらも死体をヨットのシートに包みロープで括り付けて 海に沈めてしまう。・・・。。。街に戻ったトムは完全犯罪にするため、フィリップのサインを真似て 身分証明書も偽造し彼に成りすます。金も服もフィリップのを使い、彼が自殺したように見せかけるため 遺書まで作る。そしてフィリップが自殺したショックで傷心のマルジュの前でトムに戻り彼女をいたわる。 さらに愛まで告白し彼女の心も自分の物に・・・すべて計画通りだ。

死体の始末に必死のトム



マルジュと海で楽しんでる頃、フィリップの父親がヨットの売買契約を済まし、ヨットを陸に引き上げようと していた。勝利の美酒にしばし酔い痴れるトム・・・陸に引き上げられるヨット・・・しかしトムの思惑とは 裏腹に、ヨットのスクリューにからまったフィリップの死体がロープの先から現れる・・・FIN






太陽がいっぱい あのヨットの、トムがフィリップを殺すシーン、今まで波静かな穏やかだった海が、ナイフで刺された フィリップが悲鳴を上げた瞬間から荒れ狂い怒り出す。人間の心理の変化を見事に描写していると思う。

アラン・ドロンはこの映画の話が来た時、実は最初フィリップ役だったとか・・・あの上品な顔立ちでは 金持ちの息子の方がそう言えばピッタリかもしれない。しかしドロンは台本をみてフィリップがストーリー の中であまりに早く死んでしまうので乗り気になれず、トム役に変えてくれるよう交渉したそうである。 そしてそれが受け入れられこの映画が実現したそうだ。これは昔、やはりドロンファンの友人が本で読み 、それを又聞きしたわけで受け売りであるが納得できる話ではある・・・ いい役者も、いい監督に見出されて初めて花が咲くという事だろうか・・・