近所の文房具屋さんに久しぶりに行ったら、そこの馴染みの店員さんが近頃レターセットがめっきり売れなくなったと嘆いていた。確かにそうだ。
わたし自身、インターネットを始めて電子メールをやりとりするようになってから全然手紙を書かなくなった。
友だちのほとんどがパソコンを持っている今、たいがいの連絡は電子メールで済ませてしまう。
相手が何をしていようともどういう状態でも気にする必要のない電子メールは電話よりも便利だし、また手紙よりも断然気楽に書ける。
だからこれまでたまに手紙のやりとりをしていた友だちも電子メールを始めてからはすっかり手紙が廃れてしまった。
だけど電子メールはこわい。
電話と同じように気楽にできて、電話と同じようにほぼリアルタイムに相手に届くけれど、その文字は、文章は、手紙と同じように相手に残る。
手紙はそれを書くときには、いくら感情が乱れていても、文字に綴る途中にはそれを考えなおす時間が与えられる。
手紙を書き終わり、封をし、宛名を書き、切手を貼り、ポストに投函するまでの一連の動作と時間が、感情のままに書き綴った手紙の内容をもう1度考え直すチャンスをくれる。
電子メールにはそれがない。
感情のままに一気に書き綴ったメールは送信ボタン1つで、もう手の届かないものとなってしまう。何をどうしようが、もう取り戻すことはできない。
電話なら消えていく言葉も、メールであるが故に削除されなければいつまでも永久に残る。その激しい感情が、色褪せないままに。
だからメールでケンカしてはいけない、絶対に。
手紙を書こう。
お気に入りの便箋に、お気に入りの万年筆で、お気に入りの人たちに。