子供のころ住んでいた家の近所に児童公園があった。幼稚園にいくかどうかというような年頃のわたしにとってそこは格好の遊び場だった。そこには広い砂場の中に巨大でかつ、立体的な滑り台があり、子供たちはみんな思い思いの格好でその滑り台を滑っていた。
勇気ある向こう見ずな男の子たちは頭を下にしたり、寝そべったまま滑り降りたり、親の知らないところで密かに無謀な体験を重ねていた。
わたしはというと、滑り台をすべることよりも砂場で砂の中に混じっている貝殻を拾い集めることが好きだった。
だからいつも児童公園に出かけては、砂の中に混じっている桜貝や小さな巻貝を探していた。
でも本当のことをいえば・・・
その児童公園の道を隔てた真向かいに小さな駄菓子屋があり、わたしよりずっと年長の子供たちは、親からお金をもらえるほどに大きな子供たちは、児童公園に来るときにはその駄菓子屋でお菓子を買うために10円、20円のお小遣いをズボンのポケットに忍ばせてくる。
そしてお菓子を買う前に滑り台で逆さ滑りの軽業をそれぞれ披露する。
するとどうなる?逆さを向いたズボンのポケットからは硬貨が重力に従って滑り出てきて、砂場の砂に埋もれてしまうってわけ。
砂場の砂の中を少し探せば、お金がザクザク出てくることを知っていたのは何人いただろう?
貝殻を探すフリをして、お金を拾い集めていたわたし。
集めたお金は小さな缶の中に入れて公園の隅に埋めていたけど、結局、掘り起こすことなく引っ越してしまった。
惜しいことをした・・・