最近の保育園では、おじいさんやおばあさんを保育園に呼んで、孫たちと一緒の時間を過ごす、「おじいさんおばあさんの参観日」があるらしい。わたしの弟の年子の娘たち(両親にとっては孫たち)の通っている保育園でも、おじいさんおばあさんの参観日があり、義妹の両親はもういないので、わたしの親たちが出かけていった。
二人して行くこともないと思ったが、車の運転は父しかできないし、孫が二人いるので二人で参加したらしい。
父は、かつて子供であるわたしや弟の参観日に一度も来たことがなかったが、孫の参観日には行くわけか・・・。
釈然としないがまあいいだろう。父が上の姪っ子を担当、母が下の姪っ子を担当して、参観が始まった。
参観といっても、保育園では小学校の参観のように教室の後ろにいて授業参観するわけでなく、孫たちと一緒にいろいろなことをするのである。母の話では、下の姪っ子はお遊戯やっているのを観て、そのあと交通安全学習でグランドで道路や横断歩道に見立てたところを孫と一緒に手を繋いで歩く、というものだった。
「へー。この暑いのによくそんなことやったね。じいさん、ばあさんと小さな子供たちが炎天下を歩いたわけ?熱射病になった人いなかったん?」
「そうやねん。お母さんも驚いたわー。めっちゃ暑かったから。でもね・・・。」
父と上の姪っ子は一緒に切り絵をやったらしい。
「なんかトンボみたいなもんを二人して切り抜いていたわ〜。そのあと、年長組の子供たちも交通安全学習があって、リカ(上の姪)もグランドに出てきたわけ。」
「でもね、リカはおじいさんじゃなくて、保育園の先生と手を繋いで歩いているねん。それで、お父さんどこに行ったのかと思ってきょろきょろ探すと、保育園の入り口の下駄箱の陰の涼しいところに座ってた。」
「え?なんで?ひょっとして暑いから?」(まさかねぇ。)
「リカに、『リカちゃん、おじいさんどうしたん?』って訊いたら、リカが
『おじいちゃんおらへんなっちゃった。』って目にいっぱい涙ためていたわ。保育園の先生が、
『トイレとか、あちこちお探ししたんですけど、居られなくて・・・』って言ってた。
それで先生と手を繋いで歩いたらしい、かわいそうに・・・。
あとでお父さんに聞いたら、
『こんな暑いのに外歩いて後でしんどくなったらあほらしいから、陰におった。』って言ってた。
外に行かないといけないときになって、姿をくらましたんよ、信じられへん。」
と母は呆れていた。わたしは信じられる。
さすがのじいさんである。
あと10年経ったら、リカも父を理解できるだろう。