ぷるるるる・・・・・ぷるるるる・・・・・また電話のベルが鳴り始める。
夜の8時すぎから、もうこれで3度目だ。
電話に出てもうんともすんとも言わずに無言のままで、しばらくすると切れる。
今まで雑誌やテレビの中の話と思っていた「ストーカー」の言葉が頭の中でどんどん大きくなっていた。
大概のことには対処できる自信はあるが、わけのわからないものや正体がつかめないものは大の苦手だ。
いや、苦手と言うより怖い。いったい誰なんだろう・・・こんなことをする奴は。
わたしが電話に出ないので、留守番電話に切り替わり、テープ音声が伝言を残すように言っている。
伝言の録音が始まったが、テープは無言のまま空回りしている。電話番号を変えるしかないか・・・それとも警察に言おうか・・・
こんなときの1人暮しは本当に心細い。
誰か!どうすればいいか教えて!!電話が切れた。そしてまた、鳴り始めた。
やめてけろ〜っ!!
しかし留守番電話の録音から聞えてきたのは紛れもない、父の声。
「お父さんやけど〜」わたしはあわてて受話器をつかみ、「もしもし!!」
「あ、○○(わたしの名前)か?お父さんやけど、家の電話が変になってな・・・」
「!?×○☆」わたしの頭に稲妻が光った。
「ひょっとして、わたしのところに何回も電話した!?」
「した、した。でも電話が故障して何も聞えへんねん。だから切った。」
「え〜!?わたし、何回も無言電話かかってきて怖かってんで!」
「もしもしって、言うたぞ。聞えへんかったんか?電話変になって、えらいこっちゃ。電池がなかったんかもしれん。電池、新しいのに変えたり、線、引っこ抜いたりしたらなおった。それで電話できたんや。家からの電話とちゃうかって思わんかったんか?」
どうして家から無言電話がかかってるなんて思うだろう。思うわけないやろ。
「壊れてんのに、何で何回もわたしのところにかけてくるのよ!わたし、ストーカーにつけ狙われているかと思って、この1時間もの間、びくびくしてたんやからね!!(怒)」
そう。
壊れて自分も聞えず、相手に自分の声も聞こえているかどうかわからない電話で、なぜ何度も1人暮しの娘の家に電話するのだ?!わからん!
NTTの電話番号案内とか、時報とか、天気予報とか、(NTTの人には悪いけど)試しにかけてみるべきところはいくらでもある。「携帯電話にかけてくれればいいやん。」
「携帯電話の番号なんてわし、知らん。」
お母さんに聞いたんか〜?!
お母さんは知ってる、ちゃんと言ってある。わたしの怒りの受け答えに父のテンションもどんどん上がっていった。
「もう、電話壊れてそんなこと思いつかなかったんじゃ!お母さんがギャアギャア言うて、わし大変なんやぞ。えらいこちゃねん!」
と、叫ぶ。(電話の背後で母の怪鳥のような声)あぁ〜また始まった・・・やめてくれい〜!
「でも、電池換えたら、電話、なおったんでしょ。それなら、もうええやん。」
「うん、何か知らんけどなおったみたいや。また壊れるかもしれんけどな。」
「今度壊れても、何回もわたしのところにかけてこんといてよ!怖いねんから。」
「わかっとる!ほなら(訳注:それなら)切るで。」
わけのわからんことを叫びつつ、父は電話を切った。
は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ
疲れる・・・