先輩とイタリアに旅行したときのこと。その日は先輩とは半日別行動で、夕方、一緒に夕食に行くために宿泊先のホテルのフロントで待ち合わせていた。
約束の時間より早めに着いたので、フロントのソファで本を読んで先輩が来るのを待っていたら、日本人の50代くらいの、年配の女性の団体ツアーがチェックインしてきた。
ツアーの添乗員さんがフロントで手続きしている間、おばさんたちはどやどやと荷物を持ってソファの方にやってきた。
ぺちゃぺちゃしゃべりながら次々にソファに腰を下ろす。
その様子をチラッと見るとおばさんのひとりがわたしに言った。「ごめんねー、こんなおばちゃんが隣に座って〜」
わたしは何を言っているのか訳がわからなかった。
別にフロントのソファなんだから誰が座ってもええやん。「いいえ・・・」
一応、愛想しとこ。わたしは応えた。するとわたしの声を聞いたそのおばさんは驚いたように
「え?え?」とか言って隣の別のおばさんにコソコソ喋っている。そしてこともあろうかこんなことを言った。
「女の人やんねー? ははは・・・女の人に決ってるやんねー。」
それ、確認か?
ひょっとしてあんたらはわたしを男と間違えてたんか?ワザとじゃなかっただけにショックだった。
そりゃあ、髪は短かくてボサボサだったし、化粧は剥げかけていたかもしれん。季節は秋の終りで、ズボンに上着の服装やった。しかしそれはないやろ、それは。
わたしもあなたも日本人〜なのに・・・気まずい空気が流れ、おばさんたちはそそくさと去って行った。
時間に遅れて先輩が現れた。当然、八つ当たりせずにはいられないよ。