走れ!ママチャリ号!

子供ができるまで町を走るママチャリを見て、「あれにだけは絶対乗りたくない!」と思っていた。
ママチャリとは、自転車に小さい子供を乗せるためのイスを取り付けたものだ。サドルに対して前乗せ用と後ろ乗せ用があって、前乗せ用は赤ちゃんの腰がすわって来る10ヶ月〜1歳くらいから2〜3歳用で後ろ乗せ用はそれより大きい子供用で6〜7歳くらいまでは座れるだろう。

後ろ乗せ用のは、まだましだ。子供がつかまるようの持ち手がサドルのすぐ後ろにあってオシリがお世辞にも小さいとはいえない私など、つっかえてちょっと気持ちが悪いが、荷物が多いときはくくるヒモがなくても落ちにくいし、かえって便利かも知れない。

問題は、前乗せ用だ。いろいろな種類が出ているけれど、99%運転者はガニ股でこぐことになる。
これは、はっきりいってものすごくカッコ悪い!だから、自分に子供がいなかったときは「いくら子供を乗せるからってあ〜んな恥ずかしいのに、よう乗ってるわ!信じられへん。わたしゃ、絶対いやじゃ〜!」と思っていたのだ。

But!子供ができて私は変わった。小さい子を連れて出かけるのがこれほどしんどい事だとは!うんと小さいときは仕方がないからベビーカーで行くのだけれど、歩道の段差や踏切は非常に通りにくいし、スーパーの買い物かごを持ってベビーカーを押しての買い物は大変だ。第一、歩いての移動だから距離も知れてるし、時間はかかるし、階段しかない建物の2階以上へ行くのはものすごく大変だ。ベビーカーを使っていると車椅子の方の大変さが少しはわかる。障害者にやさしい町作りは小さい子供を持つ親にもやさしいのだ。(市長さん、読んでますか?)小さい子供が2人になると、お出かけはますます大変なことになってくる。ひとりをベビーカーに乗せ、もう一方で歩いている子供の手を引く。むずかりだすと、抱っこしつつベビーカーを押し、さらに手を引くというすごいワザも繰り出される。

まあ、ぐずり出すとベビーカーでも自転車でも進行不可能になって、しばしその場で状況が良くなるのを待つしかないということもある点では一緒だが、多くの点で自転車が子供を運ぶのにすぐれている。だから、子供の腰がしっかりしてきてひとりでお座りできるようになると、待ってましたと自転車に子供イスを付けてベビーカーとおさらばするのだ。(実際には2歳くらいまではベビーカーは必需品で、そう簡単におさらばできるものではないが.........)

かくして、2人の子持ちになった私は、前にも後ろにも子供用のイスを付け、さらに外回りの銀行マンのカブよろしく、かわいい動物の絵のついたピンクの風除け(風防というそうな)まで付けた見事なウルトラスーパーママチャリをガニ股で乗り回すウルトラスーパーママチャリライダーとなった。

この風防ってなかなかすごい威力なのだ。風が直接当たらなくなるだけで、こんなに寒さをしのげるのだってことがよくわかる。ベビーカーでぬくぬくと運ばれていた赤ちゃんが急に自転車に乗せられてきつい風に当たるのはかわいそすぎると思い、恥ずかしくてすごく悩んだけど、結局取り付けたのだ。結果は上々、子供が2歳くらいになるまでは付けた方が風邪もひきにくいんじゃないだろうか。

実は、愛用した風防が壊れてしまって、下の子がもう3歳になったので、この冬はもう付けていないのだが、風防に慣れた身には朝の冷たい風がこたえる。風防は子供だけでなく私も風から守ってくれていたんだナ。(なんとなくしんみり......)

とにかく、ウルトラスーパーママチャリはすごいんだゾ!保育園の荷物は着替えがたくさんあって普段でも多い上に月曜と金曜はお昼寝用のおふとんも運ばなくちゃいけないのだ。かごはすぐいっぱいになるので、子供が持てるものは自分で持たせ、私も当然Gパンにリュックで、肩にかけられものはかけて、いざ、出発!冬は服もふとんもかさばるので、その姿たるや壮絶だ。

ママチャリの弱点は、そんな状態で荷物が落ちたり、子供が帽子を飛ばしたりしたとき。Uターンが非常に難しいし、その場に山盛りの荷物と子供を乗せたままの自転車を止めて取りに戻ることも危険すぎる。だから多くの場合、通りかかりの人の慈悲にすがってしまうのだ。たいていの人は頼まなくても進んで拾ってくれる。ありがたいことです。
一度、帽子が車道の真ん中あたりまで飛んでしまった時、走ってきた阪急バスが反対車線まで大きくはみ出してまでそれを轢かないように避けてくれてすごくうれしかった。あのときの運転手さん、本当にありがとうございました。
帽子はふつうにかぶっていれば脱げるはずないのに子供ってゴムをびよびよ伸ばして遊んだり、急にかぶるのがイヤになって脱いじゃったりするのだ。これが。

それはさておき、問題は、誰も通りかかってくれないとき。仕方がないから、足で地面を蹴ってバックするのだ。ああ、なんて姿だろう!お母さんてホント大変なんだよ。

お父さんがママチャリ(パパチャリ?)に乗る事って少ないのはなぜだ!やっぱりカッコ悪いから?そんなんズルイよな。母親にこれだけ育児(保育園の送り迎えも含む)を依存しておいて「育て方が悪い!」はないやろ!あ、なんか話がずれてしまった....。でも、すっかりオバチャンになったナと嫁さんの姿を嘆く前にもうちょっと自分も子供の世話をしてみよう!世の中のお父さんたち!

それにしても、絶対これだけはイヤだと思っていたのに、慣れるとだんだんどうでも良くなって「だって、便利だもん!」と居直ってしまう私が、電車の座席の到底無理やろと思われる隙間にオシリふりふり「すんませんネェ」と座ってしまうオバハンになる日は近いかも知れない..........。
それでも、子供が小さいうちはどうしてもやめられない!ママチャリ号は今日も行く!

(1998.12.22)

雑記帳目次に戻るホームページに戻る