口の絆(くちのきずな)

うちの息子はとにかくよくしゃべる。にぎやかを通り越してうるさい。しかも、テレビなんかで聞き覚えたにくたらしい言い回しを絶妙のタイミングで言い放つから、怒っているときなどますます腹が立ってきぃーっとなってしまう。

保育園の先生は、そんな息子に手こずりつつも「難しい言葉をちゃんと間違わずに駆使できるのはすごい」と感心して(あきれて?)下さっている。
それにしてもやかましいし憎たらしいし、一体どうしたものかと
「先生、なんでこの子はこんなんなんでしょうね?」と聞いたら、
「そりゃ、お母さんかお父さんが子供の頃こんなんやったんでしょ」という答え。
うー、確かに私は「うるさい」としかられること数え切れなかったが、それは小学校の後半くらいからで、幼稚園のころは優等生だった。先生にそういうと、
「お母さん、それはかっちゃん(息子の呼び名です)の場合発現が早かっただけで、お母さんの血やね。」と妙に納得しながらおっしゃるのだ。

職場でその話をすると、やっぱり「そりゃ、あんたの遺伝子や」と一同口をそろえて言う。いや、そんなことはないと自分では思いたいがお父さんがそうであったとはもっと考えにくい。

ところが事実を遠ざけようとする私に事実を認めざるを得ない出来事があった。
私は職場で「その口は!」「口がこわれてる」とか、同僚のY女史と二人あわせて「この口たち!」時には「この口ども!」など、口で表現されることがよくあるのだが、先日、保育園の先生が息子の園での様子を私に話してくれた後、「ホンマ、この口は!」と息子にむかって言ったのだ。

一瞬自分が言われたのかとぎょっとした。先生、びっくりさせんといてよー!
しかし、やはり、彼の口は私の口を受け継いでいるという証拠を見たような気がした。
春から小学校に上がる彼の前途が多難であることは間違いない。今から小学校の懇談が恐ろしいこの母である。

(1999.1.20)

雑記帳目次に戻るホームページに戻る