001-1 伊吹山#1 1998.12.12
001
午前2時。
伊吹山登山口。
ぽつりと明るい案内板を前に記念撮影。
メンバーはOKA,OKADA,YUKAWAの3人。
山頂でご来光を見るために、
装備はやや多め。
テントや鍋なんかも持っていく。
OKA以外は登山はずぶの素人。
びしっと決めてるOKAに対して、
2人は持ってる防寒具をすべて見に付けている感じ。
それでもOKAの指導により、
登山靴とヘッドライトは持参。
2時20分出発。
1合目までは落ち葉のなかの山道。
岩が多く登りもきつい。
すぐに体があったまり上着を脱ぐ。
いきなりカイロが邪魔になる。
最初からこんなにきついと後が思いやられる。
森のなかの岩混じりの道を延々登り2時40分、
1合目着。
旅館やレンタルスキーの建物があるが、
人がいそうな気配はない。
ここからリフトが出ているが、
雪はない。
建物の前で休憩。
喉は乾かないが、
かなり疲れた。
トイレに行き、
自動販売機で水分補給。
ここからはゲレンデを歩く。
野原の斜面を登る。
さっきと違って何もない坂道なので、
足掛かりが少なく滑りやすい。
(実はここが一番歩きにくかった)
当然まわりに木は少なく、
後ろを見れば、
伊吹の町の灯りが見えた。
足元に雪がちらほら見え出すと3時20分、
3合目着。
途中で2合目を飛ばしたみたいだ。
得した気分で記念撮影。
冷たい空気が心地よい。
002
3合目を出て山の斜面を左にくるっと回り込んだ途端、
「ぐお〜〜〜〜〜〜っ」
といきなり冷たい風が正面から吹いてきた。
もう一つ上のゲレンデへ出たらしく、
開けているあたりは真っ白。
薄着で歩いていたからいきなりの風と寒さに面喰らった。
「うお〜〜〜〜〜〜っ」
「さむ〜〜〜〜〜〜っ」
OKADAは帽子もかぶってなかったので悲惨だった。
灯りに向かって進み、
やっとのことで3時40分、
伊吹高原ホテル着。
ホテルは閉まっていたが、
風除室はあいていたので休憩。
トイレと水分補給、
バナナチップスを食べる。
寒さで固まった体をほぐす。
上着を着こんで出発。
3合目ちょいですでに銀世界。
先のことを考えると・・・・・ま、いっか。
リフトに沿ってコースを登る。
終点が4合目。
そこから山を右からぐるっと回り込んで登ると、
小屋があり4時20分5合目着。
スキー場の一番上だ。
ザックを降ろして休憩。
さっきのホテルがとっても小さくなっている。
ザックを降ろすと、
背中の汗が急激に冷えて寒い。
『これひょっとしてザックは降ろしたらあかんのとちゃうか?』
OKAを見ると降ろしてない。
やっぱりそのようだ。
003
最後のちゃんとしたトイレを済まし、
4時30分出発。
ここまでは斜面に対して直角に近い登り方をしていたせいか、
あっという間だったが、
勾配も変りジグザグに登り始めると、
ぜんぜん高度をかせげない。
測候所らしきところで休憩。
さらに歩くと標識!!
「やったぁ!絶対これ7合目やで!」
またひとつ飛ばしたはず!
と思ってみると『6合目』・・・
一気にやる気が失せる。
失意のままだらだら歩いては止まり、
歩いては止まる。
いくら歩いても眼下の景色は変らない。
OKADAと私は歩いては止まり、
後ろの景色を見てはため息、
そしてまた歩く・・・の繰り返しだ。
7合目を過ぎる。
「8合目には避難小屋があるから、そこで休憩や。」
OKAがそう言ってはげましてくれたので、
上ばかり見る。
しかし山の斜面以外何もなかった・・・・
ここまでくると雪はすね位まであり、
おまけに降った直後なのでだれも通ってない。
「こんな過酷なんこれまでのベスト3にはいるで・・・」
OKAが呪文のように繰り返す。
しかし顔はうれしそうやったのは見逃さなかった。
彼は唯一の経験者なので先頭を歩いている。
さすがの彼も、
予想外の深雪に足場の確保をてこずっていた。
体力の消耗も半端じゃないだろう。
しかし彼はスーパータフなので
ここは甘んじて彼の足跡をたどることにした。
頭上で物音が聞こえる。
「小屋で誰か飯の支度をしてるんちゃうか?」とOKA。
小屋が真上に見えたところで道が跡絶えた。
小屋の方には道は見えない。
ぐるっと回り込む道もなく、
だ〜〜っと斜面があるだけ。
しょうがないからその斜面を登る。
休憩直前のふらふらな体を持ち上げる。
004
5時25分、
8合目避難小屋着。
人がいると思っていたのは、
壊れたドアがギコギコ動いていた音だった。
(来る途中足跡がなかったのだからよく考えると誰もいないはずやった・・・)
半分壊れかけの小屋に入る。
板がベンチ状に並べてあるのでそこに座る。
落ち着いて回りを見ると、
もともとお堂だったみたいだ。
5時40分、
小屋出発。
8合目の標識は小屋の向こうにあった。
OKAが言うには9合目からは平らな緩斜面で、
この急斜面は次の9合目まで、
後は余裕!
わっはっは・・・らしい。
とにかく斜面の終わりはもうすぐだ!
6時前、
9合目の標識。
すこし登って斜面が急に緩くなり、
山頂の遊歩道にでた。
奥に建物が見える!!
真直ぐ歩くが、
斜面が緩い分雪がたくさん積もっていた。
(おいおい、楽勝のはずやろ・・・)
ひざ下位の雪のなかさらに進む。
005
6時20分、
山頂辺りに到着。
が、
雪のせいで山頂の標識が見つからない!?
あちこち探したが、
体力が消耗するので先にご来光を見るため、
北東の斜面近くに移動。
テントをはって日の出まで待つ。
しかしテントのマットを少ししか持って行かなかったので、
(軽量化のため、しかたないことでございましょう・・涙)
下が冷たい!!!
しかも足元の雪がとけてテントが沈む!!!
小さくなって寒さをしのぎながら、
6時45分、
日の出。
外に出て、
ご来光を仰ぎながら記念撮影。
風が強くなってきたので速攻テントに滑り込む。
なかなか沸かない湯を沸かしカップラーメンを食べる。
生き返るうまさだが、風が半端じゃないくらい強く、
テントがいびつに歪む。
テントごしに何かに殴られてるみたいだった。
7時30分、
あれ狂う風のなか撤収。
寒さで涙が凍って痛い。
目が開けられない。
あんなの始めてやった。
戻り際さっきの山頂を探し、
急いで記念写真。
なんか南極探検隊みたいだ。
006
登山道に戻り、
9合目を過ぎると風はうそのように止んだ。
足早に8合目の小屋に戻る。
8時15分。
ここで落ち着いて缶詰と熱燗で宴を開く。
メニューは、
日本酒
ほていの焼鳥
さんまの蒲焼き
残っていたバナナチップス
さっきの暴風がうそのような穏やかさ。
まずは熱燗で乾杯!
持っていたペットボトルの水も凍る寒さなので、
酒の瓶も程よくひえていた。
当然のこりは冷酒でのみほした。
8時45分、
避難小屋発。
明るくなってからの景色はまるで別世界!!
まさに『一大パノラマ』の眼下。
遠くは琵琶湖彦根まで見える。
下りは予想以上に楽チンだった。
雪がクッションの代わりをするからだ。
ほいほい降りる。
途中いまから登山する人達と出会う。
頂上の様子を教えてあげたりして、
なんか優越感。
上には自分達の足跡しかないもんな。
007
スキー場まで来る。
なんか騒がしい。
そう、
営業しているのだ!
4合目付近、
ハイクアップしているスノーボーダーに出会う。
9時30分、
伊吹高原ホテル着。
ボーダー・スキーヤーがうようよいるなかに南極探検隊まがいは紛れ込む。
間近のボーダーをつかまえて写真を撮ってもらう。
営業してるのならボードを持ってくりゃよかった。
食堂へ突入、
たくさんの荷物で席を占領し、
ぷしゅっとビールと唐揚げとポテトとフランクで乾杯!!
浮きまくりである。
しかも酒のんでるし・・・まいっか。
10時、
スキー場の横を、
歩いて下る。
何か損した気分。
雪がなくなってきて、
足に負担がかかり始める。
さっきみたいにぴょんぴょん跳ねながら下りたら怪我をする。
慎重に下りる。
2合目辺りから風景は秋に逆戻りだ。
下のゲレンデは雪がまったくなく、
緩斜面でパラグライダーをしていた。
ここに雪が積もることがあるのか?
(リフトはちゃんとあった。)
10時40分、
1合目着。
やっとここまで帰ってきた。
昼間でも開いてないレンタルスキーや旅館は何か寂しげだ。
あとはふもとまでのジグザグ山道だけだが、
来たときの事を考えると、
ここの道が一番やっかいや。
10時50分出発。
岩混じりの落ち葉が積もる山道を下る。
ここまで一番疲れていると思っていたOKADAがラストスパート。
見えなくなるまで先に行ってもうた。
落ち葉で見えない岩に足場がうまく確保出来ずに気が付けば、
靴擦れで足がかなり痛くなっとった。
もし、
上で雪がなかったら、
帰りはえらいことになっとったで・・・・
11時15分、
出発地点の駐車場に到着。
さっさと熱〜〜〜い風呂に入って、
爆睡しようぜ。
update 981220
remixed 000531
■map data... 行程図
map 981222
■message from OKA...
OKAからのメッセージ
980104
伊吹山は春〜秋の間9合目付近までドライブウエイが開通し、
山頂にはお気軽観光者がうようよしている。私は過去訪れた時
この光景にげんなりした気分を味あわされたものだ。
なぜ、厳冬の伊吹山へ?答えはそういうところ※1にある。
(超初心者2人には無謀とも言える山行であったが・・)
しかしこの初心者達・・・肉体的ポテンシャルの高さのみならず、
今回用意してきた装備のポテンシャルの高さに驚かされた。
俺だけ途中でシューズから水※2浸みてきて、俺が一番ポテンシャル
低いシューズやんけ!くやしー!キー!!
(次回新規購入をそっと心に誓う私なのだ)
しかし、私よりいい装備をそろえたこの生意気な初心者達の
おかげで、今回私が提示した目的・・・
「心身にむち打ち頂上を極め、ご来光と辺りの厳粛な風景に心が
洗われ、そして山頂にて酒宴を始めようとする我々に容赦なく
降りかかる山の神の怒り(風、寒さ)・・・これを存分に体感する。」
これら全てを達成できたことを感謝したい。
まだまだ、鍛え甲斐のある奴らだ!フッフッフ・・・
−次回予告、3月末or4月初..御岳・剣が峰※3 標高3063m−
※1:こいつは子供の頃「いじめっこ」だったに、ちがいない。
※2:こうならない様に靴はいいのを選びましょう。(でも値段が高い!)
※3:どうも「シリーズ化」を狙っているようだ、この男・・・
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■伊吹山
北陸自動車道米原ICを降りて国道21号線を経由して、
県道551号線を13km。
目前に伊吹山が常に見えているので、
方角は見失いにくい。