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ここは投稿屋「コラボ」で扱っている小説のバックナンバーを
保管する場所です。
小説「どこかでだれかがつぶやいた(1)」
朝起きると9時を過ぎていた。
一人暮らしを始めて4ヶ月、少しだらけてきたかな。
パンをトースターで焼き、食べる。歯を磨き、顔を洗う。
テレビをつけて適当にチャンネルをまわす。
つまらないな。暇だ・・・。
着替えて散歩に出ることにする。
玄関の扉のノブに手をかけたとき、ふと思い出す。
この間呼んだ小説の一文。
『今日という物語の始まり』
キザだね。扉一つ開くのにそんな大げさな・・・。
僕は気に入っているけれどね。あなたはどう思う?
小説「どこかでだれかがつぶやいた(1)」小説「どこかでだれかがつぶやいた(2)」
小説「どこかでだれかがつぶやいた(3)」小説「どこかでだれかがつぶやいた(4)」

外に出ると陽射しが強くまぶしい。
夏だけあってさすがに暑い。
でも暑いのは嫌いじゃない。
だって夏という季節を感じられるから・・・。
なんというかぁ・・・雰囲気ってやつ?
・・・でもずっと外にいるわけにもいかないな。
暑くて暑くて・・・どうしようか?
小説「どこかでだれかがつぶやいた(2)」


涼しい・・・。僕は涼しくて静かな場所が好きだ。
だからこうして客の少ない喫茶店に入ってきたのだ。
だがここは騒がしい。女性店員と客の男(僕より少し年下のようだ)は知り合いらしく、先ほどからずっと話をしている。
女性はとても穏やかな笑顔で話している。優しそうな人だ。
男の方はずっと困ったような顔をしている。
しかしどこか楽しそうにも見える。
奇妙な顔をする人だ。
僕はこういうのを幸せというのだと思う。
人とのコミュニケーションの中に幸せを感じる。
どんなにお金があるよりも、どんなに力があるよりも幸せだと思う。好きな人と一緒にいられるだけで幸せな気分にならない?
もう少しここにいて、二人の幸せを分けてもらおうかな。人との交わりって大切だと思うな。そうだよね?
小説「どこかでだれかがつぶやいた(3)」

喫茶店の扉を押し開けて外に出る。
ムワッとした熱気に目がくらむ。
日が暮れてきたとはいえまだまだ暑い。
僕は辺りを見回した。
「・・・・・・。」
奇妙な人だ・・・。店の前には一人の男性が座っている。
僕が店に来た時にはもういたはずだ。
いったい何をしているのだろうか。
「きれいだね・・・」
男性が突然口を開いた。
「え・・・・?」
「空だよ」
そら・・・・・・。僕は空を見た。
雲のほとんどない空は夕暮れの紅に染まっていた。
「あぁ・・・そうですね・・・。本当に・・・」
本当に・・・・・・。
小説「どこかでだれかがつぶやいた(4)」

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