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「槍鉋(やりがんな)」が支える伝統文化



森川正彦(法則化中学太子サークル)

日本の伝統的な工具に込められた職人の知恵と技を知る。日本の伝統文化を誇りに思うとともに、これらの技術を未来にどうつないでいくかを考える。


(1)製材方法の変遷
 世界最古の木造建築「法隆寺」です。
 この時代、重要な建物はすべて「檜(ひのき)」で作られていました。
 檜にはこのような優れた点がたくさんあります。
  ・加工しやすい
  ・丈夫である
  ・湿気・虫害に強い
  ・木目が通っている
   (割って製材できる→打ち割り法)
 実際に檜の板を割ってみせる。
 樹齢二千年以上の大きな檜もこのように割って柱などに加工していました。
 春日権現験記絵 天暦2年(1309)を提示
 これは平安時代に書かれたものですが、おそらく法隆寺もこのように作られたと考えられています。
 木を割っています。「のみ」が使われています。

発問1 板の表面を大まかに削っています。何という道具が使われていますか。

「ちょうな」です。

発問2 板の表面を削って仕上げています。何という道具が使われていますか。

「やりがんな」です。
今日は法隆寺を作るときに使われた道具を持ってきました。
 「槍鉋(やりがんな)」を提示。

発問3 やりがんな、現在の道具でいえば、何になりますか。

「(台)かんな」である。
 やがて、手近にある檜が不足してきました。
 「松(まつ)」や「欅(けやき)」が使われるようになりました。
 これらは「割りにくい」木でした。製材にはのこぎりや、台鉋が使われるようになりました。
 室町時代には「やりがんな」はその姿を消します。

(2)法隆寺宮大工・西岡常一氏
 法隆寺の宮大工、西岡常一さん。やりがんなを現代に復活させた人です。

発問4 なぜ、西岡さんは古い技術である「やりがんな」にこだわったのでしょう。

理由はこの写真の中にあります。
「法隆寺の柱」の写真を提示。
 やりがんなとかんなの違いを見てみましょう。その削り面の大きな違いがあります。
「かんな」と「やりかんな」を使っているところをビデオに撮らせていただきました。

発問5 このように表面に波形の跡が残るのは「かんな」「やりかんな」どちらでしょう。

ビデオを見ながら考えて下さい。
 ビデオを見る。
 波形の刃の跡が残るのは「やりかんな」であることを確認する。
 法隆寺のの柱、やりかんなを使った微妙なカーブの仕上げが、優しい曲線となっています。
 もう一つ理由があります。
 西岡さんはある実験をしました。
  A:機械で削った檜
  B:やりかんなで削った檜
 これらを雨の当たるところに置いておきました。片方は一週間も経たずにカビが生えました。

発問6 カビが生えたのは、A・Bどちらでしょう。

Aはすぐにカビが生えました。やりかんなは木目に沿って割った木を、繊維をはがすように削ります。檜の細胞を壊さずに削れるので、水が中にしみこまないのです。
 法隆寺が世界最古の木造建築である秘密はやりがんなにもあったのです。
 西岡さんの言葉です。

樹齢二千年の檜が、第二の生き場所をお堂なりお宮に得た場合、同じ年月、あるいはそれ以上に建物を支えて生き続けると信じています。

西岡さんの信念です。「木は二度生きる。」

 私たちは「早くできる」「楽に出来る」「たくさん出来る」ことを「技術の進歩」だと考えてきましたが、一見古いと思われる技術の中にも、学ぶべきことはたくさんあるのかもしれません。

  《参   考》
○法隆寺を支えた木 西岡常一 小原二郎  (NHKブックス)
○古代日本の超技術 志村史夫(講談社)
○道具と手仕事 村松貞次郎(岩波書店)
○宮大工 千年の知恵 松浦昭次 (祥伝社)
○宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み  西岡常一(日本経済新聞社)
○木の文化をさぐる 小原二郎(日本放送出 版協会)
○木のいのち木のこころ 西岡常一(草思社)
○「木の文明」の成立(上)精神と物質をつ なぐもの 川添登(NHKブックス)
○「木の文明」の成立(下)日本人の生活世 界から 川添登(NHKブックス)
○木の教え 塩野米松(草思社)
○木を読む 林以一(小学館)
○不揃いの木を組む 小川三夫(草思社)
○職人が語る「木の技」 安藤邦廣 (建築 資料研究社)
○木工古道具の楽しみ方 松尾具屑 (武田 書店)
○木工のはなし  早川謙之輔 (新潮社)
○ものと人間の文化史51 斧・鑿・鉋   吉川金次(法政大学出版局)
○大工道具から世界が見える  西和夫 (五月書房)
○木に学ぶ 早川謙之輔(新潮社)
○竹中大工道具館 パンフレット
《以下省略》      

        


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