特別支援への対応が何故必要か
森川正彦(法則化中学太子サークル)
1.特別支援への対応を学ぶべき理由
学年末に技術室の大掃除をした。未完成のまま残された材料がでてくる。授業中に完成せず「放課後残りなさい」と連絡しても来なかった生徒の作品である。部品の切断面もがたがた、いくつかの部材は紛失しているようである。一年間この生徒にとって「技術の授業」とは何だったのだろうか。その生徒の作品を処分しながら「全員が参加できる授業づくり」について考えた。
授業の中で特別な支援が必要な子どもが増えてきている。発達障がい(ADHD・LD・アスペルガー等)すべてを合わせると1割近い子どもたちが、何らかの教育的配慮を必要としている。
このタイプの子どもに対して「叱責」「説教」は全く効果がなく、むしろ逆効果になる場合が多い。なぜなら、彼らの「脳」がこれらの「行動」をさせているからである。
周囲の大人の対応が悪ければ、子どもの「自尊感情」がどんどん低下していく。その結果、勝手な行動をするパターンが身についてしまう。
@たとえ、自分に利益があることであっても 相手を否定し反抗し、周りに対して挑戦的な行動を取る。
Aわざと相手を困らせる行動を取る。
B周囲に対して暴力的に振る舞う。
これが「二次障がい」の一つである「反抗性挑戦障がい」の症状である。
発達障がいの子どもに対しての対応を、周囲の大人が間違って「二次的な障がい」を生み出している可能性がある。
2.教育の根本的な目標
「教育の根本的な目標を一つだけ述べよ」と言われたら、様々な考えがあるとは思うが、私が一番納得できるのは、以下の文章である。
人間の生きていく気力を育てることである
向山洋一著 『授業の腕をあげる法則』(明治図書)
発達障がいの子どもに対する研修を進める中で、医師や専門家からこのような言葉を何度も聞いた。
学校で「自尊感情(セルフエスティーム)」を 高めて下さい
そこで、発達障がいに対する「理解」と、適切な「対応」を視野に入れた実践を研究の主題としている。
具体的には「自己肯定感(セルフ・エスティーム)」を高めるために
@エラーレスの学習 A教えて、ほめる
ことを意識した実践を行い、いくつかの「指導の原則」を抽出することを研究のねらいとしている。